放送作家の道具について - 西原健太郎
※この記事は2018年05月04日にBLOGOSで公開されたものです
大型連休の季節、いかがお過ごしでしょうか?私はというと、弊社の新スタジオの運営が少しずつ軌道に乗ってきて、やっと自分の準備作業が始められる…という感じになってきました。来月は、自分が手がけているとある事業の為、海を渡ってきます。その模様はこのコラムで少しでもお伝えできればと思っています。さて、準備といえば、映像素材の準備などを現在行っているのですが、その時に思うのが、仕事道具って大事だなという事。弊社スタジオで使う備品も、長く使う事を想定して、材質や機能にこだわりたいと思っています。どんな職業でも、道具にはこだわりがあると思いますが、今回は『放送作家の道具』について、書いてみます。
放送現場で重宝される「作家ペン」
放送作家の道具として、まず最初に挙げられるのが『ペン』です。放送作家が原稿を書く時にはパソコンを用いることが一般的ですが、その昔、放送作家はペンを使って原稿を書いていました。今でも大御所の放送作家の中にはペンで台本を書いている人がいます。また、ペンは原稿を書く以外にも、ラジオだと台本に書き込みをしたり、パーソナリティに『カンペ』と呼ばれる指示書きをするときにも使います。作家が使うペンは『作家ペン』と呼ばれ、一般的に作家ペンと呼ばれるペンは、ぺんてる社製造の『サインペン』のことを指します。このサインペン、現場で本当によく使われているのですが、それには理由があります。まずコストが安い。物価高の現代においても、1本100円以下で入手することができます。
そして書き心地。特によく使われるのが赤色のペンなのですが、カンペを書いたり、メールにペンでチェックを入れる時、線が細すぎる咄嗟に読めず、太すぎると使い勝手が悪いです。そんな中、ぺんてるのサインペンは、ちょうど良い太さで文字を書くことができるので重宝しています。
ただ、このペンは消耗品で、現場ですぐ無くしてしまうという欠点があります。周りにも同じペンが溢れているので、自分のペンが分からなくなってしまうこともしばしば…。定期的に買い足しているという放送作家も多いです。
続いて、放送作家の道具として紹介するのは、先ほども出ました『パソコン』。現代の放送作家は、ペンではなくパソコンを使って原稿を書きます。でも、ここでいう『パソコン』とは、ノートPCの事を指します。デスクトップのPCでも原稿は書けるのですが、ラジオの現場だと「〇〇君、番宣CM書いて」みたいな事を当日急に言われることがあるので、その時にさっと取り出して書ける、ノートPCの方が使い勝手は良いでしょう。
PCのスペックはそんなに高いものは要求されません。昔は持ち運びできる軽いノートPCだと20万以上したのですが、最近は5万円くらいあれば、適度なスペックのノートPCを購入できます。
ちなみに私は、先月のコラムでも書きましたが、『編集もできる放送作家』という肩書きで仕事をしているので、ノートPCにもある程度のスペックを求めます。簡単な編集作業をノートPC上でやりつつ、軽さも妥協したくない…ということで、数年前に当時最新だったMacbookをメモリなど全盛りで購入しました。
正直高い買い物でしたが、妥協しなかったおかげで今でも十分通用するスペックを有しています。前にこのコラムでも書きましたが、放送作家の仕事は、自分でスケジュールを管理し、どれだけ効率よく仕事をしていくかが大事な職業です。仕事の効率・時間をお金で買っているという印象になってしまいますが、仕事道具の質には妥協しないほうが、結果として良い仕事ができているような気がします。
あと、放送作家ならではの仕事道具といえば…SNSのアカウントや、メールアドレス、ネット通販サイトのアカウントなどの『ネットID』です。情報が命の放送作家は、とにかくたくさんのネットIDを持っています。例えばメールアドレスだと、私は10個以上は持っています。仕事用のメインアドレスはもちろん、情報収集用のメールアドレス、番組投稿用のメールアドレス(これは説明すると長くなるので、また別の機会に詳しく書きます)、SNSサイト登録用のアドレス…などがあります。
また、流行のSNSサイトはとりあえず登録しますし、新しいネットサービスが始まれば、とりあえず会員になってみます。いざという時にどんなサービスでも利用できるようにする事で、私は情報収集能力を高めています。
その他、私が仕事道具として普段持ち歩いているものを、写真でまとめてみました。
放送作家のリアル仕事道具
ブース内で作家として席に座る時、ディレクターからの指示はイヤホンに返ってきます。その時必要なのがこのセット。スタッフの指示を聞きつつ、パーソナリティの喋りにも耳を傾けないといけないので、片耳である必要があります。さらに、作家はラジオ収録中、ブース内で動き回ることが多いので、ケーブルは長い方が使い勝手が良いです。動きすぎてケーブルが切れることもあります。そしてイヤホンの入力プラグは、様々なスタジオの仕様に合わせるために、標準タイプとミニタイプのものを変換できるアダプターを付けています。(スタジオに刺したままにして、よく無くします)。
放送作家に限らず、多色を扱えるボールペンを持っている人は多いと思います。 メディア業界もボールペンが溢れかえっているのですが、前述のサインペン同様、ボールペンもよく無くします。そこで私はボールペンを無くさないように、あえてちょっと良いものを使っています。色々探し回った結果見つけたのがこのボールペン。ペンを傾けると色が変わるというちょっと変わった機構が気に入っています。
メディア業界人にとって、その名を知らない人はいないと言っても過言ではない、業務用ストップウォッチ。通常のストップウォッチとしての機能だけでなく、カウントダウンタイマー機能や、時・分・秒キーとテンキーを使っての60進法計算機能がついています。しかも使用時に音が出ないということもポイント!新人放送作家憧れの一品です。
他にも様々な道具がありますが、良い道具は仕事の効率と質を上げます。でも放送作家にとって一番大事な道具は、己自身の頭脳であることを忘れてはいけません。