※この記事は2015年01月31日にBLOGOSで公開されたものです

 100円の商品を中心とした品揃えでお馴染みの「ローソンストア100」。この全店舗の2割強にあたる約260店舗を閉店させて、そのうちの一部をドラッグストア型の店舗などに転換していくようだ。

 日本フランチャイズチェーン協会(JFA)の調べ(*)によれば、2014年12月時点で全国のコンビニエンスストアの店舗数は51,814件。長期推移で見ると右肩上がりで増えている。
 一方で近年は「市場の飽和が近いのではないか」と心配されていることから、コンビニ各社は一部の店舗を高級志向にしたり、医薬品の取り扱いを行うなど、店舗ごとにバリエーションを持たせながらの出店を進めている。
 そうしたバリエーションの1つである、ローソン100の縮小は脱デフレの影響なのか、もしくは他グループのミニスーパー出店に対抗していくための準備なのだろうか。

 本部は様々なことを考えて、お店を改装したり潰したりする。しかし、本部がこうした積極的な店舗戦略をとれるのは、現場で働く非正規雇用のアルバイトの犠牲あってこそである。
 アルバイトはお店が閉店すれば、当然、仕事を失うことになる。今回の大量閉店でも、多くの非正規労働者が仕事を失う。
 長期の改装などでは、休業期間中に6割程度のお金が出る場合もある。主婦のアルバイトであればいいのだろうが、元々低い時給がさらに削られるということで、生活のための主たる収入源として働いている人は、他店にヘルプで入るか、もしくは仕事を変える必要がある。
 そうなると当然、労働環境が一変してしまう。別の店に一時的に移動するにしても、それまで培ってきたその店でのやり方を変えて、他の店舗にあうように仕事の手順を変える必要もある。それもかなりのストレスであろう。コンビニバイトといえばマニュアル仕事であるかのように思われているが、店舗が違えば、店の広さも品揃えもピークの時間帯も全く違ってくる。それらを全部新しくするというのは、かなりのストレスを伴う。
 でも、環境が変わるだけなら、正社員の転勤でもあることだ。しかし、バイトの職場環境が変わることの意味はそれだけではない。もっと大きな「キャリアが切断される」という意味が加わってくる。
 転勤は同じ会社組織にいる限り、これまでのキャリアは継続される。一方でバイトが仕事を変えることは、これまでの仕事を全部無かったことにして、1からスタートを切り直すことを意味する。
 もちろん「非正規である時点で、そうした不利益を受け入れている」と言い訳はできるのだろうが、非正規が受けている待遇が、不利益を積極的に受け入れても問題のない高待遇であるとは、とても思えない。

 企業が出店したり撤退したりと、企業戦略をとるのは当たり前のことだ。しかし、そのフットワークの軽さは非正規雇用の安い賃金や安定しない雇用に支えられている。儲けは企業に、不利益は非正規に分配されるからこそ、企業は大胆な計画を実行できるのだ。
 企業の出退店を見るときには、少しでいいので、賃金格差が生み出される構図にも目を向けてもらいたい。


*1:100円ローソン260店閉店へ 小型スーパーは事業撤退(SankeiBiz)http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150129-00000009-fsi-bus_all *2:コンビニエンスストア 統計データ(一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会)http://www.jfa-fc.or.jp/particle/320.html