【民主党代表選】3候補が海外メディアからの質問に回答 - BLOGOS編集部
※この記事は2015年01月15日にBLOGOSで公開されたものです
15日、日本外国特派員協会で民主党代表選挙の候補者による会見が行われ、長妻昭、細野豪志、岡田克也の各候補が海外メディアからの質問に回答した。 写真一覧
細野:福島の原発事故については、私が政治家の中でも一番深く関わってきましたので、そういった質問に答える責任があると思っている。
原子力規制委員会ができるまでは、セキュリティの問題は原子力保安院の仕事では無かったが、私が法案を作った時に統一した。作業員の状況についても、現在は原子力規制委員会が担当することになっている。私がそこに警察の担当者を入れたのはテロ対策もしっかりやるようにすべきだと考えたからだ。
作業員のバックグラウンド調査については、私が承知している限りでは、全くやらないということではないと思う。ただ日本では、官僚も含め、バックグラウンド調査はセンシティブな問題として扱われてきており、民間の人に対しては非常に難しいというのが事実。そうした壁について、政治的にどう解決できるか、しっかり取り組むべき課題だと思う。
長妻さんも主張しているが、原子力発電所の安全対策というのは、決して災害や津波だけでなく、核セキュリティの問題もあるので、あらためてチェックしてみたいと思う。しかし、これを原子力規制委員会だけの責任にするのはやや酷な所があるので、立法機関も含めて対応すべきだと考えている。
ー長妻さんに質問したい。右翼がかなり激しいことを言ったりしている。映画「アンブロークン」が上映できないこと、朝日新聞の元記者・植村隆氏に脅迫があったり、在日韓国人・朝鮮人へのヘイトスピーチもある。こういった動きにどう対処されるのか。
長妻:代表選ではそれぞれが基本政策を出したが、私はそこに「あらゆる差別のない社会の実現を目指し、ヘイトスピーチ対策法を制定する」と書いた。
私自身、日本の国がかなり右よりに進んでいると感じている。国会議員になって15年経つが、今ほど危機感を持っている時はない。特に、自分たちと異なる言論に対する「売国奴」とか「国賊」といった言葉がインターネット上に氾濫している。戦前は非国民という言葉がわが国にあった。それと似たような状況ではないかと強く懸念している。
大学講師に対する慰安婦絡みの脅迫、あるいはヘイトスピーチに代表されるような度を越した差別、そして国会を見ると、きちっとした議論なく、閣議決定だけで憲法解釈を決めてしまっている。
我が日本は、"空気"が重要だ。"空気"が作り上げられてしまうと、一気にぐっと極端な方に進む。坂を転げ落ちるように進む。そういうことが70年前にもあったわけで、今、そのきな臭い動きを強く感じている。
わが国で戦争を戦った国民は、少年兵だった方でも85歳くらいになり、どんどんお亡くなりになられておられる。もし10年前にこういう動きがあったら、全国各地から「おかしい」という声が上がったと思うが、今はすっと通ってしまう。わが国から戦争の記憶が無くなってきているからだ。
70年というのは、"体験"から"歴史"に変わる節目だと思う。その時にきちっと総括する、戦争の教訓を噛みしめる談話を、政府が談話を出す前、例えば8月15日の一ヶ月前、7月15日に民主党として出して、政府の談話をきちっとしたものに作り上げる。わが国がどういう国柄で行くのか、ここが一つ、勝負の年になると思う。代表になったら取り組んでいきたい。
ー民主党は国民の信頼を失ってしまったとおっしゃった。その信頼を取り戻し、政権交代するためにために、どのくらい時間がかかると思うか。
長妻:そう時間をかけることはできないと思っている。1年半後の参議院議員選挙の時に、衆議院の選挙も同時になされることがあると思っている。その意味では、4月に統一地方選挙があるが、1年半後のダブル選挙があるだろうことも睨んで、急速に信頼を回復する取り組みをどんどんしなければならない。短い時間で信頼できるかどうかが勝負になる。
細野:私も、この民主主義の状況を考えればこれは待ったなしだと思う。4月の統一地方選挙は、地方から信頼回復する、再生という意味では我々として最初のチャレンジ。問題はしっかりリセットできるかだ。明確に変わったところを示せるかどうかだと思う。その意味で、この代表選挙はこれ以上ない機会だと思う。明確にしっかり過去と決別し再出発をすべきだと言っているのが私なので、そのことによってここで第一歩を踏み出したいと思っている。
岡田:時間はあまりない。次の代表の最大の仕事は、政権交代できるかどうかは別として、政権交代可能な状態まで持っていくということだと思う。
問題はどう変わるかという話だが、そこで2つ申し上げたい。ひとつは民主党の政治家が覚悟を持つこと。覚悟とは、与党になる政権を担うということは、最終的に決めなきゃいけないということだ。49対51でもあっても決めなければならない。野党なら決めなくても言葉で多くの人に賛成されるような言葉遣いで誤魔化せるが、与党にはそれはできない。その覚悟が足らなかったと思う。
やはり支持者の方を見てしまって、野田総理が決めても、いや、自分は反対だという声がいつまでも続く。これでは国民に信頼されない。きちんと決めるという覚悟がまず必要だ。
もう一つは、どんどん前に出ること。この2年間、すこし後ろ向きになりすぎた。攻撃は最大の防御だというが、政策もどんどん打ち出し、論戦し、存在感を示すことで信頼感が戻ってくると思っている。 ー皆さん格差の話やアベノミクス批判をされた。では具体的に経済政策としてどういったものを出そうとしているのか。
岡田:まず、3本目の矢である成長戦略、規制改革はしっかりやるべきだ。ここは安倍さんと共通している。ただし、成長の果実をどう分配するかが重要で、たとえば格差の是正のために、所得税や相続税の税率を上げるとか、子ども子育てに重点配分するとか、年金の最低保障機能を強化するとか、安定して働けるよう、正規雇用を増やすと打ち出すとか、そういったことを政策として申し上げた。
細野:私はアベノミクスは東京の大企業、富裕層には良いと思うが、地方、中小企業にとっては非常に厳しいと思う。法人税の減税が6000、7000億円あるんであれば、企業が負っている一人あたりの社会保障負担をさげるというのは、地方や中小企業にプラスになる政策だ。
規制緩和も、霞ヶ関が「特区」という形で例外的認めている。これは中央主導だ。それを自治体が規制改革が自らできるよう分権をすることで地域経済を元気にしていく。
今、株が上がっているから、富裕層が増えているが、国民の年金の積立を使ってかなり強引に株価を上げている。そのことによって、将来の年金が危機にさらされている。このやり方は取るべきではない。
むしろ年収で言えば200万円、300万円で、所得が上がらず厳しい生活をしているひとたちが正社員になりやすいような法律を作る。ヨーロッパでも当然の制度になっている同一労働同一賃金を導入して、働いている人の所得が上がるような政策によって経済を元気にする。
成長は必要だが、やり方が安倍政権とは違うので、我々の考えをしっかり提案していく。
長妻:最大の問題点のひとつは個人消費。GDPの半分以上を占める個人消費がなかなか上向かない、やはり家計が非常に傷めつけられている。民主党政権時代は、どちらかというと企業から家計にお金がシフトしていた。それが今は家計から企業にシフトするという傾向が強まっている。事実、16ヶ月連続で賃金がマイナスになっている。
私が申し上げたいのは、格差が拡大して人の能力が発揮できない、潰されている。能力を発揮できるような土壌を作るための、人への投資が欠けていると考えている。所得再分配政策、累進課税、お金持ちの資産にもっと課税をしていく。
今や日本はアメリカよりも所得再分配機能が弱い国になっている。格差を示す指標である相対的貧困率の削減の数値目標を国として出すべきだ。
そして消費税を上げるにあたっては、給付付き税額控除というような制度も入れて、格差を是正していく必要がある。
なによりも重要なことは、人の能力を高めることだ。誰かが100歩進んだとして、あとの人が1歩も進めない社会。こういう社会は良くない。何人かが100歩進んでも、他の方も1歩、2歩、3歩と歩みを前に進めていくそういう社会の方が、全体の成長の基盤も作ることができる。
日本は労働生産性が世界20位になってしまった。均等待遇原則、同一労働同一賃金もなく、経営者側に使い勝手のいい労働者を生み出したことで、かえって生産性が下がってしまうということが起こった。ドイツは来年国の借金がゼロになる。労働生産性が上がっていることも、それを達成できた理由だと思う。
人への投資、あるいはベンチャー企業を倍増する。そういう計画を立てて、能力の発揮を阻む壁をひとつひとつ取り除くことで、結果として経済は成長する、パイは大きくなると考えている。
ー日中関係が望ましくない状態にある。細野さんは「現実平和主義」と言うが、それはどのようなことを指すのか。岡田さんの言う「開かれた国益」とはどういうことを指すのか。
岡田:国益というのは狭く考えるべきではないと思う。わかりやすく言うと、持論だが日本はアジアの中にある。これは日本にとって非常にラッキーな可能性がある。可能性のあるアジアという地域で、平和と豊かさを作っていくことに貢献していく、その中で日本の平和と豊かさも実現していくというのが基本的な考え方だ。
日中関係は首脳会談もようやく出来たような状況で大変残念なことだと思う。しかし日中の関係は深いものがあるし、中国の人達が旅行者として来てくれており、ファンになって2回、3回と来られる方も多い。政治レベルでは色々な緊張があっても、国民レベルでは必ずしもそうではない。私は日中間で首脳会談の回を重ねる。問題解決しなくても会うことに意味がある。その中で信頼関係を回復し、ひとつひとつ困難な道を乗り越えていくことが重要だと思う。
細野:私が「平和主義」と言っているのは、戦後70年の歩みを肯定的に捉え、継続していくという旨だ。具体的には戦争しない、日米同盟を大事にし、アジアとの共生を果たし、国際貢献にできるだけ努力する、という、戦後日本の歩みの継承者が我々なんだということを明確に言うべきだと思う。
「現実的」と付けているのは、その中で、例えば尖閣を守っていくということは、国民にとってもやっていかなければならいことだ。そういうことには現実的にやれるような法の整備、態勢づくりを行う。そういう主旨で使っている。
日中関係については、10年近くテーマにしてきて、中国には年に1回、多い年は2回と3回訪問しているので、友人もいる。これまでのアプローチを変えて新しいテーマをクローズアップする時期に来ていると思う。
具体的に一番有望なのは、エネルギー、環境分野だと思う。中国にもメリットがあるし、貢献をすることでわが国にもメリットがある。新しい協力の仕組みを前に進めるべきだ。
また、岡田さんも言われたが、人の交流と文化の交流の深化はベースの部分で重要で、まだまだやれることがたくさんある。これを前進させることで、これまでのアプローチと違うところにフォーカスして、扉をどんどん開いていく。
長妻:共産党幹部の方とお会いしてお話すると、「子どもが名探偵コナンの大ファンだ」とか、日本のアニメファン好きだという方が多くおられる。
やはり民間の交流をもっともっと活発にしなければいけない。例えばドイツとフランス、何度か戦争したが、若者交流計画で700万人の若者を交流させるということを成し遂げた。あるいは国境軍も、共同の軍隊で国境を守るという取り組みがあると聞いている。
わが国も1000万人とは言わないが、それに近いくらいの若者がホームステイするなど、交流するような事業を全力で後押しする、政治がガタガタしても、人々の信頼の揺らがない、ということを徹底してつくり上げるということが必要だと思います。
ー3人とも、多様な価値観や、これからの社会について話をしたが、全員が男性だ(会場から笑い)。新しい価値観、制度のなかで、女性に対してどういった役割、どういった居場所を期待するのか。安倍政権の政策が吹き飛んでしまうような、「民主党支持だね!」と言わせるような政策はあるのか。
岡田:私は10年前の代表の時、女性政策で先進的なものをまとめました。その後、代表選で負けて退いてしまったので、あまり動いていないのは残念だ。
私は日本社会そのものを変える、民主党を変える起爆力は女性だと思っている。そのために、例えば党の幹部に、実質的な仕事ができるポジションに女性を増やしていかなければならない。国会議員の女性が少ない。私は代表になったら、国会議員の候補者として女性の公募をしたいと思う。地方議員として育ってきている女性にも国政にチャレンジしてもらいたいと思っている。
各政党の中で、女性の力を最も重視しているのが民主党だというのが誰の目にも明らかになる、という風に変えていかなければならないと思っている。
細野:日本の場合、政策的には女性の子育てに対するサポートが不十分だったので、これを変えていかなければいけないと思っている。
私は同一労働同一労働は、女性にとってプラスになるんじゃないかと思う。地元の事務所でトップに据えているのは二人共女性だが、彼女たちは子育て中は今ほどの労働時間は確保できなかったけれども、労働時間をセーブしながら子育てしながらキャリアを積んで、トップになった。それにはもちろん家族のサポートが必要で、男性の育児休暇も取るべきだし、社会が後押しする仕組みをもう一回作ることで女性が活躍できる環境を、政治の世界でも後押ししていく必要がある。
私がこれを言っているのは、安倍総理のように決して経済成長の手段として女性を使いたいからではなく、女性がれぞれの人生を、多様に追求できるようにするためにやるべきだと思うからで、そもそも民主党は出発点が全然違うということを申し上げたいと思う。
そういう政策やる上でも女性議員の数を増やすことが重要なので、クオータ制を導入することで国会に出やすくすることも重要だと思う。生活に密着した部分で言えば、地方議員に女性を増やす。選挙に出やすいように財政もバックアップをするということも重要だ。
長妻:自民党の女性政策は、どちらかというとGDPを引き上げるために女性を活用しようという発想が強い。私はそうではなく、社会全体にプラスになることだという発想が重要だと思う。
そういう意味では、国家予算の配分がゆがんでいる。先進国でGDPに占める公共事業の比率が大きいが、子育て予算・教育予算は最低レベルだ。国会議員の女性比率が最も低い国のひとつが日本だ。
国会議員のみならず、地方議員の女性比率も、クオータ制を入れて、数値目標を決めて、民主党は女性候補を擁立する、育成するという一貫したプログラムを創ることで、地方行政や国会において女性の立場でどんどん発言して、予算配分や政策の優先順位を決めていただく。これは女性の為ではなく、全体のためにやることで、それが社会全体の活力を引き出す道だと考えている。
そういう意味では、私の基本政策にも党の役員や候補者のクオータ制に取り組むと明記している。
ーこの前の選挙では、野党がバラバラだった。次はどういう風にまとめるのか。また、小沢一郎氏とは協力するのか(会場から笑い、候補者も苦笑い)。
岡田:国会などでは野党協力していかなければならない。選挙も、選挙区の調整もやった、全部ではないが、同じ選挙区で野党が複数立たないよう、ある程度やらないと、共倒れしてしまう。そういうことは防いでいく。小沢先生、生活の党とも、私が担当だったので、今回の選挙も候補者の調整とか協力はさせていただいたし、今後も必要な範囲でやっていきたい。
細野:私は、バラバラの野党が共通の価値も共有していないのに協力しても迫力がないと思う。去年の総選挙では、野党はそこの迫力が欠けていた。民主党が再生して、きちっと価値を掲げるということが最優先なんだと思う。その上で、この民主党と一緒にやりたいよという人については結集していくことは問題ないので、そこで民主党が強くなって自民党の対立軸となる。これが目指すべき姿だと思う。
小沢さんについては岡田さんと同様だ。
長妻:国会での協力は、生活の党も含めどの野党とも密にしないと行けないと思う。
ただ、じゃあ一足飛びに野党がひとつ党になるというのは、民主党の中で詰め切れていない政策がある中で、他の党と一緒になっても旗が明確にならない。それは拙速。民主の目指す社会を明確に掲げることで求心力を高めて、他の野党から人を受け入れるような形にする必要がある。
選挙区においても、特殊な選挙区では調整も必要だが、原則として民主党は全ての選挙区に候補者を立てていく、民主党が二大政党制の一角を占めるという覚悟を示す必要があると思う。
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