【寄稿】2014年、視聴率を稼いだドラマに見えてきた共通点 - 黒田麻衣子 - BLOGOS編集部
※この記事は2014年12月28日にBLOGOSで公開されたものです
黒田麻衣子(徳島テレビ祭りスタッフ)
街にクリスマスソングが鳴り響き、連ドラが最終回を迎えていくと、「ああ、今年ももう終わりだなぁ」と実感する。2014年も、多くのドラマが制作され、楽しませていただいた。せっかくなので、ここで、今年のドラマを振り返ってみたい。
《高視聴率だったのは》
私は、一視聴者でしかないので、ドラマを数字で語りたくはないが、平均20%を超えたドラマは、朝ドラの『ごちそうさん』『花子とアン』を除くと、『HERO』(7~9月期 フジテレビ)
『ドクターX』(10~12月期 テレビ朝日)
の2本だけであった。やはり、「前評判」がある続編モノが強かった。
平均15%を超えたのは、
『相棒』(10月~放送中 テレビ朝日)
『花咲舞が黙ってない』(4~6月期 日本テレビ)
『きょうは会社休みます』(10~12月期 日本テレビ)
『軍師官兵衛』(大河ドラマ NHK)
の4本。全話通して、10%を超えた作品は、次の11作品であった。
『失恋ショコラティエ』(1~3月期 フジテレビ)
『明日、ママがいない』(1~3月期 日本テレビ)
『科捜研の女』(1~3月期 テレビ朝日)
『緊急取調室』(1~3月期 テレビ朝日)
『医龍4』(1~3月期 フジテレビ)
『S―最後の警官―』(1~3月期 TBS)
『続・最初から二番目の恋』(4~6月期 フジテレビ)
『ルーズヴェルト・ゲーム』(4~6月期 TBS)
『昼顔』(7~9月期 フジテレビ)
『信長協奏曲』(10~12月期 フジテレビ)
『ディア・シスター』(10~12月期 フジテレビ)
こうしてみると、視聴率を稼いでいるドラマには、いくつかの共通点が見えてくる。
まず、主人公のキャラが立っていて、魅力的であることだ。続編モノ・リメイクものは数字が出やすいらしいけれど、それもあくまで、主人公の魅力が光ってこそのことである。事実、続編モノであっても、ここに挙がっていない作品もある。逆に、続編でなくとも、きちんと視聴者の心を掴んだ作品も多くあった。特に、今年は、女性を主人公にしたドラマが、人気を博した気がする。今年は、というより、これもここ数年の傾向かもしれない。
ドラマの設定や主人公を演じる役者さんの年齢などを見ると、制作側は、30~40代の女性を視聴者ターゲットの主軸に考えているのかな、と推察できる。この年代は、10代後半~20代の時期にトレンディードラマを観て育ったからか、やはり、娯楽としてドラマを視聴する習慣が身についてしまっている。かく言う筆者も、その一人である。(ちなみに、筆者は、ここに列挙された作品は、ほぼすべて録画視聴した。)自分世代をターゲットに作られたドラマが多いので、今以て楽しく視聴させていただいている。
若い頃は、『ロングバケーション』に代表されるフジの月曜9時枠、いわゆる月9が最も楽しみだったけれど、今の私たちにはちょっと「若すぎる」ラインナップが多い。今年で言えば、観たいと思い、また実際に視聴したのは『HERO』くらいであった。キムタク強し!である。月9の代わりに、筆者が楽しみにしている枠は、NHKの火曜10時、つまり「ドラマ10」枠である。当たり外れも大きいけれど、今年も、『紙の月』に始まって、『聖女』や『さよなら私』など、珠玉の作品も多かった。演技派の女優さんが、等身大のアラサー・アラフォー女性を演じてくれる「ドラマ10」枠は、今、もっとも私たちの心の奥底をえぐる時間帯と言えよう。いつもはフタをして見ないように努めている感情に、光を当てる。
《続きが観たいのは》
個人的に、続きが観たい!と思ったドラマは『隠蔽捜査』(1~3月期 TBS)と『BORDER』(4~6月期 テレビ朝日)だ。特に『BORDER』は、放送中から「これ、テレビ朝日の制作だし、ぜったいシリーズ化を狙ってるよね」と噂されていただけに、最終回のあのラストは、本当に衝撃だった。私含め、どれだけの女性達が、テレビの前で「ウソだろーっ」と叫んだことか。この際、禁断の「夢オチから始まる、あの続き」でもいいから、続編を作って欲しいと願う。あと、『緊急取調室』(1~3月期 テレビ朝日)も続編を見てみたいドラマだ。「取調室」という題のごとく、密室でのやり取りを軸にしたドラマなのだけれど、往年の名作刑事ドラマのように、チームで事件を解決していく様子がどこか懐かしく、また、事件の謎解きよりも、犯罪者と取調官の心理戦に重点を置いた作りが、視聴者の心を揺さぶった。主人公が女性であったことも、女性層の心をがっちり掴んだ気がする。
テレビ朝日の制作するドラマは、出演者にも演技派を揃えてくるイメージが強く、ドラマを見尽くしてきた私世代が安心してドラマ世界に没頭できる、安定のクオリティのものが多いから、毎回、楽しみにしている。「今が旬」な役者さんもステキだけれど、「オバサン」な年齢に近づいてくると、味のある脇役さんに目が行くようになる。その辺のキャスティング力も、もしかすると視聴率に関係してくるのかなぁ、なんて、一般視聴者は考えてしまうのである。
《恋愛ドラマ》
ドラマのラインナップとしては、相変わらず刑事モノ、医療モノのてっぱん作品が多いのだけれど、今年は私たち女性の心をワクワクさせる「恋愛モノ」が少し増えたな、と思って観ていた。トレンディードラマの頃と違ったのは、主人公の設定年齢が視聴者の私たちに合わせてちょっと上がったことと、ドロドロ系が減ったことだ。ドロドロ系を思わせる『昼顔』ですら、不倫を題材にしている割にはカラッと感があった。『失恋ショコラティエ』も、不倫であったり三角関係であったりと、かなりヘビーな状況設定であったのに、ドロドロした感じはなかった。明るいタッチの描き方が、今の視聴者には合っているのかもしれない。
そう考えると、『続・最後から二番目の恋』も『きょうは会社休みます』も、湿った雰囲気はなかったし、『ディア・シスター』もそうだった。メイン出演者の中に、不治の病を抱える人がいるなど、湿った要素はそれなりにあったハズなのに、いつも「青空とそよ風」なイメージが漂っていた。だから、ドラマを観て、楽しい気分になれた。適度に笑えたし、適度にきゅんきゅんできた。
視聴後に、なんとなーくハッピーな気持ちにさせてくれるドラマは、やっぱりチャンネルを合わしてしまう。魅力的な主人公に会いたくて、「来週」を待ちわびてしまう。若い頃は、それがやっぱり「今ドキのイケメン男子」であったけれど、今は「イケてるメンズ」じゃなくて、むしろ女性を観ているな、と、これを書きながら思った。『緊急取調室』の天海祐希さん、『ドクターX』の米倉涼子さん、そして『続・最後から二番目の恋』の小泉今日子さんは、働くアラフォーの星だ。自分たちの思いを代弁してくれるようなセリフの数々に、溜飲を下げる思いをしたり、手を叩いて同意したり、同情してちょっとウルッとしたり。アネゴ肌のお三人には、多くの女性たちが思っている。「姉さん、ついていきます!」と(笑)。
でも、私的今年のイチオシは、なんと言っても石原さとみちゃんだ。『失恋ショコラティエ』では、結婚しているのに男性を翻弄する役で、番宣を観たときには、「どんだけイヤな女だ」と思ったものだが、実際のドラマ内では、「イヤな女」感よりも「小悪魔なかわいらしさ」が勝った。さとみちゃんの魅力がバクハツしたのは、『ディア・シスター』であった。自分が年を食ったからなのか?初めてドラマの女性に「きゅんきゅん」した。かわいさ全開のさとみちゃんを観たくて、チャンネルを合わせ続けた木曜22時だった。
ちなみに、個人的な今年のイチオシ男子は、窪田正孝クン。昨年、『あまちゃん』をきっかけに大ブレイクした福士蒼汰くんに続き、今年は『花子とアン』で朝市を演じた窪田正孝くんの存在が光る一年だった。朝市に続いて、『Nのために』(10~12月期 TBS)の成瀬くんは、10代の女の子から、アラフォー女性まで、幅広い層の女ゴコロを鷲掴みにした。『ST赤と白の捜査ファイル』(7~9月 日本テレビ)での抑えた演技もステキだった。今までは、刑事ドラマの犯人役のイメージが強かったけれど、ここでのカゲのある若者を演じてきた経験が今、生きているのだろう。イケメンな上に、演技の幅が広い。来年の活躍が楽しみである。
《女性の心をつかむドラマ》
こうして分析してみると、私たち女性は、ドラマの登場人物に共感する傾向があるんだな、と思う。それは、必ずしも主人公である必要はないけれど、キャスティングに魅力が無ければチャンネルを合わせないし、誰にも共感できないドラマは、観る気も起こらない。さて、来年はどんな「心揺さぶるドラマ」が出てくるだろう。できることなら、見終わった後には翌日への気力が湧いてくるような、ハッピーな気持ちになれるドラマであってほしい。ドロドロしすぎず、カラッと感を残した作品を、お願いしまーす。