ADHDの診断は受けていないものの注意力不足だと感じる人のためのライフハック
ついつい約束の時間に遅刻してしまう、二度と破らないと誓った締め切りをまた破ってしまうなど、自身の注意力不足を実感したことがある人は少なくないはず。ADHDの正式な診断を受けているかどうかに関わらず、注意力を発揮するのが苦手な人を支援するための戦略を、コロラド大学の心理学者であるロブ・ローゼンタール氏がまとめました。
These strategies and life hacks can help anyone with ADHD, as well as those who struggle with attention problems but don't have a diagnosis
◆整理整頓と優先順位付け
ローゼンタール氏はまず「シンプルな整理整頓システムで重要な活動を記録することで、集中力を向上させることができます」と指摘。記録方法について、「理想的なのは手帳やスマートフォンのアプリなど、1つのツールに集中すること。ただし、スマートフォンで気を散らさないことが前提です。1日のスケジュール、定期的に更新されるToDoリスト、カレンダーへの予定の記入を含むルーチンを開発することは、集中力と管理意識を高めるための基礎となります」と解説しました。
ToDoリストを使う場合、タスクをいくつかに分け、優先順位をつけることが重要です。何を優先すべきかを判断するのは難しいですが、1つの手段として「アイゼンハワー・マトリクス」というものが存在します。これはタスクを「重要かつ緊急」「重要だが緊急ではない」「重要ではないが緊急」「重要でも緊急でもない」という4つに分けて、それぞれを以下のような象限に振り分け、左上→右上→左下→右下の順に処理していくというものです。
ローゼンタール氏いわく、ADHDの人の多くが他人の要求に応えるなどの「緊急だが重要でない」仕事をまず果たそうとするのは、他人の緊急性が自分の必要性よりも重要であるように思えるからだとのこと。また、誰かのために何かをすることは、すぐに自分にとってポジティブな感覚につながり、ストレスの多い仕事から解放されることになることも理由の1つです。
アイゼンハワー・マトリックスは、上記のような「すぐに満足できること」ではなく、「最も重要なこと」から優先順位をつけるものです。
◆環境の整理
計画を立てたあと、続いて計画通りに進めることにもいくつかの戦略があります。重要なのは、生産性を高めるための環境を整えることです。つまり、気が散るものを制限し、誘惑を防ぐ障壁を設けることです。仕事中はソーシャルメディアをブロックするアプリを使用し、スマートフォンやコンピューターを機内モードにするのが理想的です。アラームや視覚的なリマインダーなどの環境的な合図を設定し、時間を管理して、目標とする優先順位を守っていることを確認する必要があるとローゼンタール氏は指摘しています。
締め切りの直前まで仕事に集中せずにいると、土壇場でストレスを感じるだけでなく、他の優先事項や食事、睡眠といった基本的な生活に影響を及ぼします。そこで、ローゼンタール氏は嫌なタスクに集中力を持続させる「ディストラクティビティ・ディレイ」という方法を紹介。まず、集中力を維持できる時間、例えば25分間仕事に集中し、5分間休憩を取るといったサイクルを決め、タイマーをセットしてそれを繰り返すという方法です。
これを行っている時に他の無関係な仕事が降りかかってくることも考えられますが、その時はノートなどにメモし、「後でやればいいや」と考えて目の前の仕事に戻ることが大切。休憩時間に入ったときにメモを見て、すぐに実行する必要があるかを確認し、休憩時間にさっと済ませるか新たなタスクとしてToDoリストに追加すればいいとのこと。
◆周囲からのサポート
仕事を続けるには、自分自身に責任を持たせ、励ますためのサポート体制が不可欠です。友人や家族、セラピスト、グループセラピー、目標を共有しフィードバックを受けるためのオンラインフォーラムなどがこれにあたります。
もう1つの効果的なサポート方法として、ローゼンタール氏は「ボディダブリング」というものを紹介しています。これは、物理的または仮想的に、知り合いや家族の目の前で仕事をすることを意味します。一緒に同じ仕事をするというパターンでもいいですし、自分は仕事に、相手はただ好きな音楽を聞くことにいそしむというパターンでもOKです。こうすることで、より集中力が増し、不安感を和らげることが期待されています。
◆睡眠
ローゼンタール氏いわく、ADHDの人は決まった時間にベッドに入るのが苦手で、なかなか寝付けないことがよくあるとのこと。不規則な睡眠が注意力低下のサイクルを永続させる可能性があることは、多くの証拠が示しているそうです。
ローゼンタール氏は「就寝時刻を守り、毎日同じ時刻に起床することは、良い睡眠戦略の一部です。また、睡眠後2〜3時間以内のタバコ、カフェイン、大食、アルコールは避けるようにしましょう。また、就寝時刻前の8時間に昼寝をしないようにしましょう」と述べ、睡眠サイクルの重要性を強調しました。
また、寝る前にリラックスする方法を身につける事も大事だとのこと。「眠りにつくのに時間がかかるのは普通ですが、45分たっても眠れない場合はベッドから出て、再び眠くなるまでリラックスできる活動をしましょう」とローゼンタール氏。時計を見るのは入眠に役に立たないとのこと。
最後に、ローゼンタール氏は「これらの戦略を取り入れる際には、自分に最も身近なものから始めてください。ADHDの人は目新しさを追い求め、日常生活に嫌悪感を抱くことが多いのですが、日常生活を送ることは価値があることです。あなたは、物事をギリギリで終わらせようとする代わりに、時間に余裕を持ち、自分がやったことに誇りを持てることに気づくかもしれません」と述べました。