確固たる本命不在の大混戦で迎えた牡馬クラシック初戦のGI皐月賞(4月17日/中山・芝2000m)は、5番人気のジオグリフ(牡3歳/父ドレフォン)が勝利。2着に3番人気のイクイノックス(牡3歳/父キタサンブラック)、3着に1番人気のドウデュース(牡3歳/父ハーツクライ)が続いた。

 さらに、4着に入ったのも2番人気のダノンベルーガ(牡3歳/父ハーツクライ)。結果的に下馬評の高かった馬たちが上位を独占した。クラシック第2戦のGI日本ダービー(5月29日/東京・芝2400m)に向けても、これらの面々が有力視されている。


牡馬クラシック一冠目の皐月賞はジオグリフが鮮やかな勝利を飾った

 その後、東西で行なわれたダービートライアルでは、GII青葉賞(4月30日/東京・芝2400m)をプラダリア(牡3歳/父ディープインパクト)が勝利。GII京都新聞杯(5月7日/中京・芝2200m)ではアスクワイルドモア(牡3歳/父キズナ)が、リステッド競走のプリンシパルS(5月7日/東京・芝2000m)ではセイウンハーデス(牡3歳/父シルバーステート)が勝って、ダービーへの切符を手にした。

 ただ、これら3頭は既成勢力を脅かすにはややパンチ不足。パソコン競馬ライターの市丸博司氏も「今年も、基本的には皐月賞組が中心となるだろう」と分析する。

 いずれにしても、競馬界最高峰のレースとなる大一番がいよいよ迫ってきた。今回はこれらの結果を受けて、現時点での3歳牡馬の『Sportivaオリジナル番付(※)』を発表したい。
※『Sportivaオリジナル番付』とは、デイリー馬三郎の吉田順一記者、日刊スポーツの木南友輔記者、独特なデータを駆使するパソコン競馬ライターの市丸博司氏、フリーライターの土屋真光氏、Sportiva編集部競馬班の5者それぞれが、ダービーに挑む3歳牡馬の実力・能力を分析しランクづけ。さらに、そのランキングの1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として、総合ポイントを集計したもの。

 1位は、前回と同じくイクイノックス。GII東京スポーツ杯2歳S(11月20日/東京・芝1800m)以来という異例のローテーションで挑んだ皐月賞でも2着と奮闘し、力のあることを示した。これが評価され、ポイントは前回よりも伸ばした。

市丸博司氏(パソコン競馬ライター)
「デビュー2連勝で東スポ杯2歳Sを制覇。そこから約5カ月の間隔をあけて、ぶっつけで臨んだ皐月賞でもあれだけの競馬を見せました。

 ジオグリフの父ドレフォンと同じく、父キタサンブラックのファーストクロップは芝、ダートを問わず、中長距離で強いレースを見せています。今のところ重賞級はこの馬だけですが、中央で2勝した産駒がすでに7頭も出ているのは相当なもの。TF指数(※市丸氏が独自に編み出したデータ指数)ではジオグリフと同点ですが、こちらのほうを上にみたいと思います」

木南友輔氏(日刊スポーツ)
「皐月賞後の放牧から、レース2週前に美浦トレセンに帰厩しました。馬っぷりはやっぱりいいですね。今回は広く、実績のある東京コース。主役を張れる1頭だと思います」

本誌競馬
「長期休養明けで挑んだ皐月賞で2着。次なるダービーは、東スポ杯2歳Sを完勝した東京が舞台でもありますから、さらなる躍進が期待されます」

 2位も、前回同様にダノンベルーガが入った。懸念された右回りの皐月賞で4着と善戦し、圧巻の競馬を見せてきた東京に舞台が替わっての逆襲が見込まれている。

吉田順一氏(デイリー馬三郎)
「前後のバランスなどを踏まえれば、まだ成長の余地を残している現状。キャリア2戦で挑んだ皐月賞は、右回りや距離など初モノづくしでしたが、緩急のついたペースに対応し、馬込みやキックバックにも我慢できたのは立派でした。

 1〜3着馬が終始馬場のいい外目を使っていたことを考慮すれば、内目を通って踏ん張った同馬は"負けて強し"だったと思います。フットワークからすれば、左回りに替わるのは歓迎。パフォーマンスの高まる東京・芝2400mで真価を問いたいです」

土屋真光氏(フリーライター)
「皐月賞は1枠1番発走で、ずっと馬場状態のよくないインを走らされていました。それでも、勝ち馬からコンマ3秒差の4着。広い東京コースに戻って、オークス週の雨の影響が残る馬場を味方にできるようなら、一気に突き抜けてもおかしくないと見ています」

 3位は、ジオグリフ。皐月賞を制して大きくポイントを伸ばしてランクインを果たした。ただ、短距離路線で活躍した父ドレフォンという血統から距離延長については未知数。ダービーで真価が問われそうだ。

木南氏
「レース前の取材の感触がすこぶるよかったため、皐月賞では◎を打ちました。この馬に関しては昨年6月の新馬戦後、とんでもなくノドが鳴っているのを聞いて、それが強く印象に残っていたので、どうしても評価を上げることができませんでしたが、皐月賞を勝ってしまっては、もう何も言えません。

 生産者の視点からすると、あまり公にしたくないのがノド鳴りですが、トレセンでは『ドレフォン産駒はノド鳴りのほうが走るのでは』といった話が出るほど、ジオグリフの皐月賞制覇は強烈でした。ダービー1週前の動きもかなりよかったので、二冠達成を遂げても不思議ではありません」

 4位は、2歳王者のドウデュース。皐月賞でも大外から豪快に強襲して3着に入った。ここでの評価は決して高くないものの、ダービーでも勝ち負けを演じる可能性は大いにある。

吉田氏
「GII弥生賞(3月6日/中山・芝2000m)と皐月賞とでは、それぞれ違う脚質を見せて2着、3着という結果を残しました。GI朝日杯フューチュリティS(12月19日/阪神・芝1600m)を勝った時には、体形的にもマイラーのイメージでしたが、年明けの2戦で距離に対する不安も和らいでいます。

 折り合いの心配もなく、東京・芝2400mも流れひとつで克服は可能でしょう。皐月賞の直線がすべて右手前だったことからすれば、左回りの東京に舞台が替わるのも魅力。ただ、他の有力馬に比べると、ストライクゾーンが少し狭そうな印象があります」

 上位4頭からは大きくポイントを離されたが、5位にはマテンロウオリオン(牡3歳/父ダイワメジャー)、アスクビクターモア(牡3歳/父ディープインパクト)、オニャンコポン(牡3歳/父エイシンフラッシュ)の3頭がランクイン。この中から上位勢を脅かす存在が出てくるのか、注目である。

市丸氏
「TF指数3位のマテンロウオリオン。ただし、この馬は1800m以上のレース経験がありません。過去36年でマイル戦からダービーというローテで3着に入った馬は6頭いますが、すべて1800m以上のレース経験が一度はありました。そうなると、能力的には足りないとは思いませんが、さすがに今回は厳しいかもしれません」

吉田氏
「アスクビクターモアは、皐月賞では枠の並びやデシエルトがスタートでミスしたこともあって、ハナを奪うことに。その結果、馬場の悪い内側を通らされて、最後は上位陣にねじ伏せられる形になってしまいました。ともあれ、ここまでゆったりとしたローテーションで結果を残してきたことは強調材料。ディープインパクト産駒で軽さとキレ、プラス先行力があって、時計が速くなる軽い馬場ならパフォーマンスは上がるのではないでしょうか」

土屋氏
「オニャンコポンの強さを感じたのは、1勝クラスの百日草特別(11月7日/東京・芝2000m)を勝った時。つまり、中山ではパフォーマンスがやや落ちるのですが、年明けのGIII京成杯(1月16日/中山・芝2000m)を快勝し、皐月賞でもジリジリと伸びてコンマ4秒差の6着と善戦しました。そうした成長ぶりを考えると、得意の東京コースに替わって、父同様の爆発力が炸裂してもおかしくありません」

 激戦の3歳牡馬戦線。上位4頭の評価は抜けているものの、実力的にはそこまでの差は感じられず、ダービーでも思わぬ伏兵の台頭は十分に考えられる。はたして、この世代の天下を獲るのはどの馬か。注目のゲートがまもなく開く。