マイクロソフトが、アクセシビリティを向上させるハードウェアのラインナップを拡充している。障害者のインクルージョンとアクセシビリティに特化した毎年恒例のイベント「Microsoft Ability Summit」を開催し、身体の不自由なユーザー向けに開発した複数の新しいPC用ハードウェアを発表したのだ。

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今年後半に発売されるワイヤレス対応の周辺機器はモジュール式マウス「Adaptive Mouse」のほか、プログラム可能でキーボードの代わりになるボタン「Adaptive Button」、そしてWindows PCへの接続を処理するハブで構成されている。これらのデバイスの設定を変えることで、ユーザーはさまざまな入力操作やショートカット、一連の動作などを実行できる。

プログラム可能でキーボードの代わりになるボタン「Adaptive Button」。

Photograph: Microsoft

これら新しい入力デバイスは、既存の周辺機器と組み合わせても利用できる。3Dプリントされたカスタム部品を使ってカスタマイズすることも可能だ。価格の詳細は現時点では未定となっている。

立体的なラベルからカスタマイズ可能なボタンまで

障害者の使いやすさを向上させる独自の周辺機器は、マイクロソフトにとって新しい領域ではない。2018年には障害のあるゲーマー向けの「Xbox アダプティブ コントローラー」を発売している。このゲームコントローラーはボタンのレイアウトがシンプルで、追加の支援機器を接続できるさまざまなポートを備えている。さらにパッケージは、開封が容易にできるようにデザインされている。

そして、21年には「Surface アダプティブ キット」を発表した。このキットには、ボタンなどに貼れる16個の立体的なラベル「バンプ ラベル」、視力の弱いユーザーのために文字が立体的になったキーカバー「キーキャップ ラベル」、Surface本体にストラップを取り付けて簡単に開けるようにする「オープナー」、ポートとケーブルの組み合わせを識別しやすくするラベル「ポート ラベル」が含まれる。

Adaptive Buttonはカスタマイズが可能で、3Dプリントしたモジュールを使うこともできる。

Photograph: Microsoft

新たに発表されたデバイスのラインナップは、特に従来のキーボードとマウスを置き換える狙いがある。これらは障害をもつユーザーが素早く正確に操作するには限界があったからだ。

ユーザーはAdaptive Buttonに動作や操作を割り当て、最大8つのスイッチで単純な入力から一連の動作の実行まで、さまざまなことを実行できるようになる。例えば、数回の簡単な物理的な動作で新しいタブを作成したり、テキストをコピー&ペーストしたり、メールを送信したりできる。

この2インチ(約5センチ)四方のAdaptive Buttonはカスタマイズが可能だ。マイクロソフトは、十字キーやジョイスティック、さらにはデュアルボタンに変えるボタンキャップなどのオプションを用意しているが、ユーザーが独自に3Dプリントして使うこともできる。

Adaptive Mouseはモジュール式となっている。ボタンとスクロールホイールの役目をもつ小さな四角いモジュールを、マウス本体にはめ込んで使う。右利きか左利きかに応じて、親指で操作するスイッチの位置を入れ替えることも可能だ。

Adaptive Mouseは四角いモジュールをはめ込んで使う。

Photograph: Microsoft

マウスとボタンはどちらもワイヤレスでAdaptive Hubに接続し、Adaptive HubはPCかスマートフォンにワイヤレスでつながる。どの周辺機器も充電式のバッテリーが内蔵されている。

ソフトウェアのアクセシビリティも向上

今回のMicrosoft Ability Summitでは、すでに発表されていたソフトウェアのアクセシビリティ機能も紹介された。これらの「Windows 11」向けの機能強化には、ADHD(注意欠如・多動症)をもつ人たちの注意散漫を防ぐ助けとなる「フォーカス」と呼ばれる新機能、聴覚障害者や難聴者のためにオーディオコンテンツ(対面での会話を含む)をデバイス上で自動的にテキスト変換できる「ライブキャプション」、キーボードやマウスではなく口頭でコマンド(ネット閲覧やアプリの切り替え、メールの作成など)に使える音声アクセス機能が含まれている。

これらの機能は、マイクロソフトがウェブブラウザー「Edge」におけるさらなるアクセシビリティ強化を実施した直後の発表となった。目の不自由な人や視力の弱い人は、画像の代替テキストが欠落している場合に、自動生成された画像の説明を確認できるようになる。また、エディター機能(もともとPowerPointとWordで利用可能)がEdgeでも使えるようになり、スペルチェック、テキスト予測、その他の文章構成支援機能を利用できるようになった。

(WIRED US/Edit by Daisuke Takimoto)

※『WIRED』によるマイクロソフトの関連記事はこちら。


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