ブレーキは熱くなってから効く!?【ライドナレッジ042】(ピックアップ)

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ディスクブレーキが大径なのは素早い温度上昇も狙う

スーパースポーツのように、高性能なマシンほどフロントのディスクブレーキ径(ローター径ともいう)は大径に設定してある。大きいほうが効く……大まかにはそれで間違いないのだが、その中にはブレーキを入力してから効きはじめるまでのレスポンス向上も含まれている。
なぜならローター径が大きいほど、ブレーキパッドがディスクを挟んだときの速度が高く、それだけ摩擦熱で素早く温度上昇するからだ。
エッ、ブレーキは熱くなると効かなくなるから冷やすほうに注力して、熱くなるからイイというのは聞いたことがない、そう思われたかも知れない。
実はディスクブレーキが冷たいうちは、摩擦熱も発生していない、つまり制動力として効いていないのだ。確かにあまりに高熱になると、操作に使っているブレーキオイルが沸点に達して、沸かしたお湯のように気泡が出て油圧入力を伝えられなくなるのをはじめ、パッドが炭化したりローターが反り返ったり、様々ブレーキが効かなくなる。
しかしある程度まで速やかに温度上昇しないと、素早いレスポンスが得られないのだ。
またリヤブレーキのローター径が小さいのは、ストッピングパワーをそれほど期待していないこともあるが、小径であれば温度上昇も急ではなくなり、いきなり効いてABSのロック防止に陥らないようにという前提も含まれている。

ご覧になればおわかりのように、ディスクブレーキは外周に近いほど速度が高くなるため、ブレーキパッドとの摩擦熱もすぐ上昇する関係にある。過去にはEBR 1190RXで採用されていた、ブレーキローターをホイールのリム側にマウントし、ブレーキキャリパーは内側から挟んでいた形式もあったほどで、そのかわりローターがパッドと接する面は幅をとらずに軽量化するという構成だった。

それでわかってくるのが、アドベンチャー系など不整地も前提にしたモデルのブレーキ径の違い。フロントは不整地で急に効くのは都合が悪いのでスーパースポーツほどの大径とせず、逆にリヤブレーキは不整路面に対応してABSをキャンセルし、むしろロックさせて後輪がスライドするのを制動や方向転換に利用するライディングのため、ローター径はレスポンスの良い意外なほど大径に設定されていたりするのだ。

このディスクブレーキの発熱とローターの関係は、以下のナレッジでも解説しているのでぜひチェックされたい。

いつも同じ遊びでブレーキをかけられるのは? ディスクのフローティングピンの重要な役割【ライドナレッジ032】

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