子育てを放棄され、夜遅くまで徘徊したり、人の家に上がり込んで冷蔵庫を漁ったりする「放置子」問題。ESSE読者304人にアンケートを実施し、身近にいる放置子のエピソードやトラブルの実例、自分が放置子だったという人のお話を詳しくご紹介します。

 

放置子に関わったことでトラブルになった体験談

なんらかの事情で自分の家にいられなかったり、しつけがされていない放置子。本人もある意味被害者ではあるのですが、周囲の人に“だらしない家の子”ととらえられていることも。

 

「ご近所さんの間で野放しされていると言われている子がいます。小学生の間は登校班に遅れても連絡しなかったり、だらしない家の子として目立っていました。その子が友達のゲーム機を外に持ち出して別の友達に預けたら紛失したというトラブルも。預かった子サイドが弁償を迫られたと聞きました」(神奈川県・Mさん・47歳)

 

「一時、家に来るようになった子が子どものオモチャをポケットに入れて帰ろうとしました。気づいて叱ったらそれ以降来なくなりました」(埼玉県・Mさん・34歳)

 

放置子が勝手に家に入ってきて、もし家の中のものがなくなったりした場合、やっぱり怪しんでしまいますよね。子どもの自転車を勝手に乗って行かれてしまったというケースも。

相手が子どもで、しかもご近所だったりすると、盗難として被害届も出しづらい悩みも。初めから関わらなければよかったと後悔している人もいました。

 

●ショッピングセンターやショールームで見かけた放置子

 

「イオンの赤ちゃんコーナー(クッションシートを敷いて遊べるスペース)に小学生くらいの男の子2人と幼稚園くらいの女の子が何時間もずっと遊んでいました。兄妹だと思うのですが、髪はボサボサで服も汚れていて、『おしっこ』と兄に言っても面倒を見てもらえない様子。親に放置されているんだろうなぁとかわいそうに思いました」(神奈川県・Aさん・44歳)

 

「ショールーム的な所で働いていたとき、優しくしてくれそうな若い女性スタッフだけを見繕って一日じゅうまとわりついて来る放置子がいました。日頃から放置されているようで、小学校入学手前の子なのに抱っこなどをせがんできました」(青森県・Yさん・27歳)

 

「10年ほど前ですが、ファストフード店で夜パートしていたとき、23時頃に4〜5歳の子が一人で『お腹すいた』とやってくることが月1回ぐらいの頻度でありました。ほかの店舗にも来ていた様で、警察を呼んで対応してもらうしかなく…。児童相談所と連携が取れていないのか、どうにかしてあげたいとパートさんの間で苛立ちを感じていたことを覚えています」(神奈川県・Yさん・36歳)

 

小さいがゆえよく知ったお店に救いを求めたのでしょうか。ぜひ早急に行政に対応してほしいケースでした。

 

●コロナ禍で放置子になってしまった子ども

「親は在宅勤務のため、勤務が終わるまで家に帰ってこないでと言われている小学1年生。ほかのお母さんに構ってほしいようで、ほぼ毎日公園で捕まっているママ友がいます」(神奈川県・Sさん・30歳)

 

「コロナで自粛中、親が仕事だからといって小学生や幼児だけで朝から晩まで留守番している家庭がありました。何事もなかったとはいえ、近所なので災害時や泥棒など心配でした」(岐阜県・Rさん・37歳)

 

●放置子被害の解決策とは…

 

「近所の子が朝から晩までうちに入り浸っていました。親御さんは会ったことないのですが、困ったので担任に相談して解決しました」(京都府・Kさん・33歳)

 

学校や警察などを介入させてうまくいったというケースもある一方で、事件や事故が起きないとなかなか行政は動いてくれず今も困っている人がいました。

では、実際、放置されている子ども側はどのような気持ちで日々を過ごしているのでしょうか?

放置子だった私。「死ぬ気で生きようとした…」

ここからは親に放置されて育った子どもだったという方のお話をご紹介します。
「幼い頃から、放置されるのは当たり前でした」と語るのは京都府の主婦・友美さん(仮名・30代)。幼少期の服や靴、生活用品は、6歳上のいとこのお下がりだったといいます。

 

「いとこは三姉妹。長女〜三女が着倒している古着で『もう捨てようかと思うけど、いる?』と、ボロボロになった衣服が、私に回ってきました。だから、身なりはいつもボロボロ。汚い服に靴は当たり前。与えられるだけありがたかったです。
髪の毛も洗ってもらうことがないのでシラミがわいていました。もちろん歯ブラシもありません。なので、虫歯だらけで歯は真っ黒でした」

小学生に上がっても親に放置され、勉強も教えてもらえず、塾にも行けなかったという友美さん。

「勉強ができないことが悔しかったので、友達のお母さんに頭を下げ『家の手伝いをするので勉強教えてください』と頼みました。犬を飼っているお宅では『犬の散歩に行くので勉強教えてください』とお願いし、友達の家を転々としながら、勉強を教えてもらっていました。
私の場合、友達のお母さんが、私の母に忠告(注意)していたのですが、そのたびに、私に罵声が飛んできました。それが怖かったので、友達の家に入り浸ったりすることはありませんでした」

持ち前のハングリー精神で、勉強を必死に取り組んだという友美さん。今は、自分のお子さんには同じ経験はさせたくないと、しっかり勉強を教えて、私立の小学校に合格させることができたといいます。
「幼いときに死ぬ気で生きようとした経験が活かされています」と友美さん。

 

放置子はしつけや常識以前に、生きることに必死なのだと思うと胸が痛みますね。そして、みんながみんな、同じように強くまっすぐに生きられるわけではありません。

放置子のおかれた状況は想像すると、とても悲しくなるし、知らぬ存ぜぬで、見ないフリをして突き放しておける話ではないなと考えさせられました。

 

●放置されて育った子どもたちの心のケア

 

「私は若いころ児童養護施設で働いていたので、ネグレクトの子はたくさん見てきました。そのような子の心のケアはとても大変な仕事でした」(神奈川県・Mさん・42歳)

 

「親、とくに母親が病気だったり仕事が忙しすぎたりすると、子育て自体ができないのだと思います。周りや行政の対応が必要です」(大阪府・Sさん・46歳)

 

放置子が置かれている過酷な環境とどう向き合っていくか、そして子どもを放置してしまう親側が抱える精神面や経済的な問題、非道徳的な考えをどうとらえるか、社会全体で真剣に考えていかねばならないフェーズに入っているのではないでしょうか。