「晴海客船ターミナル」なぜ閉鎖? 30年の歴史に幕 “東京の海の玄関口”のはずが
東京晴海の客船ターミナルの閉鎖が決まりました。現在のターミナル施設ができて30年。数々のイベント、式典などの舞台になりましたが、“東京の海の玄関口”としての役割は薄れてきていました。
銀座のお隣「晴海客船ターミナル」30年の歴史に幕
晴海客船ターミナルが2022年2月20日の営業をもって閉館します。約30年にわたって東京港のランドマークとして親しまれてきた三角形の屋根が特徴的なターミナル施設は、同年7月ごろから解体工事に入り姿を消す見込み。跡地には中・小型のクルーズ客船に対応した客船受け入れ施設を新たに整備し、お台場の東京国際クルーズターミナルと合わせ、客船バース(係留施設)の2バース体制を確保します。
解体が決まった三角屋根が特徴の晴海客船ターミナル(深水千翔撮影)。
東京都港湾局が2021年12月27日、晴海客船ターミナルの閉館予定日を発表しました。同ターミナルの敷地は2022年2月20日の営業終了後、解体に向けた準備のため閉鎖されます。
現在の晴海客船ターミナルは1991(平成3)年5月に東京港開港50周年を記念して開業。設計者はSHIBUYA109などを手掛けた竹山 実さんです。東京港に寄港するクルーズ客船だけでなく、海上自衛隊の練習艦隊や南極観測へ向かう砕氷艦「しらせ」、日本を親善訪問した外国艦艇なども利用したほか、海上保安庁の観閲式では乗下船場所となりました。
レインボーブリッジや東京タワーといった東京の景色を臨む臨港広場、船の出入港を捉えることができる送迎デッキ、正面の大階段など多彩なロケーションを備えていたことから、特撮作品やドラマなどのロケ地としても知られています。また、珍しい船の一般公開が行われる「東京みなと祭」や音楽ライブ、コスプレ撮影会といったイベントも開催され、長らく東京のベイエリアを代表するシンボルの一つとして親しまれました。
なぜターミナル閉館?当面はクルーズ船受け入れ態勢を維持
一方で近年は、クルーズ客船が大型化にともない、海の玄関口としての役割には限界が見えていました。というのも、エアドラフト(水面から船舶の最高点までの距離)の高い船がレインボーブリッジをくぐれず、晴海まで入り込めないケースが増えていたほか、ターミナルの電気設備や水道配管などの老朽化も進んでいました。
こうした状況を踏まえ、東京都はレインボーブリッジの外側に当たるお台場・青海に、世界最大の客船に対応した東京国際クルーズターミナルを整備、2020年9月に営業を開始しました。東京国際クルーズターミナルは現時点では1バースのみしかないため、同ターミナルの第2バース完成までは、晴海埠頭の岸壁も活用して2バース体制とすることで、客船の2隻同時入港を可能にします。
ターミナルからは東京タワーを見ることができた(深水千翔撮影)。
晴海客船ターミナルは解体した後、レインボーブリッジをくぐれる中・小型クルーズ客船や大型クルーザーを受け入れるため、CIQ(税関、出入国管理、検疫所)機能を備えた建物を新設するものの、既存のターミナルに比べてコスト面を抑えたコンパクトなものになります。
東京都港湾局は晴海客船ターミナルの閉館に合わせ、2022年2月1日から20日までパネル展示などで、同ターミナルの歴史を振り返る企画を行うとしています。