間食がストレス軽減!脳の専門家が「健脳おやつ」をすすめる訳
「私のクリニックに来る患者さんからも“最近、物忘れが多くて心配” “認知症は大丈夫かしら”と不安がる声をよく聞きます」
そう話すのは、Dr.周東としてテレビでもおなじみの南越谷健身会クリニック院長・周東寛先生。厚生労働省によれば、’25年には国内の認知症患者の数が700万人に達するという。
数時間前の出来事をすぐ忘れてしまう、同じことを何度も言う、しまい忘れや置き忘れが増えていつも探し物をしている、などがその初期症状とされるが、はじめは年のせいかなと思って見すごしてしまいがち。しだいに仕事や家事など、日常生活に支障が出てきて、もしかしてと気づくことが多いのが認知症の特徴だ。
「こうした脳の衰えや認知症の予防に欠かせないのが、脳にいい食生活です。とくにいつもストレスがかかっている脳を休める機会として、脳にいいおやつはとても有効ですよ」(周東先生)
■“たかがおやつ、されどおやつ”が脳にいいこれだけの理由
「私はつねに、脳にいい間食用の食材を数種類用意して、仕事の合間などに食べています」
こう話すのは、加藤プラチナクリニック院長で脳内科医の加藤俊徳先生。加藤先生のイチオシはいまの季節が旬のきんかんだという。
「丸くて小粒な果実は民間薬として咳やのどの痛みに効果があるとされていますが、皮ごと食べると甘味があり、ジューシーでおいしい。一口かじると、かんきつ系のいい香りがして、しかも適度に嚙み応えがあります。甘味、香り、嚙み応え、これが脳にいいおやつの三大要素なんですよ」
【1】脳が喜ぶ食材こそ最高のおやつ
「おやつには、仕事や家事で疲れた脳を癒すことにより、脳を活性化させる効果があります。そのためには、まず自分が好きなもの、そしておいしいものでなくてはなりません。ですから、いくら脳にいいといわれるものでも、自分の好みに合わないものはおすすめできません」(加藤先生)
脳科学者の塩田久嗣先生も「健脳おやつ」に“おいしい”という要素は欠かせないと話す。
「脳がおいしいと感じると、ドーパミンという脳内ホルモンが出るんです。このホルモンが脳を活性化させて、認知症の予防につながります。それに、おいしいと思わないと、長続きしないでしょう。ですから、『健脳おやつ』は習慣化して、毎日続けることがポイントになってくるんです」
次に加藤先生が挙げる要素は香りだ。
【2】おやつの香りで脳を活性化
「食品や化粧品の香料を調合する調香師の人は、高齢になっても認知症になりにくいといわれています。それは香りが脳を刺激することと関係していると考えられます。逆に認知症になった人は、香りを認識する力が衰えていることがわかっています。おやつを選ぶ際には香りを意識して選び、食べるときには、その香りまで『味わう』習慣を身につけると、脳がより一層活性化してくれますよ」(加藤先生)
また神経内科医の米山公啓先生によれば、
「香りというのはダイレクトに脳を刺激します。たとえばローズマリーのアロマを漂わせた部屋と、なにも匂いのしない部屋で記憶力テストを行ったところ、アロマの漂う部屋にいたグループのほうが、長期的な記憶力が6割ほどアップしたという英国の大学の研究があるほど。おやつタイムにはコーヒーなど、香りのよい飲み物を一緒に取るのが効果的です」
そしてもうひとつ欠かせないのが嚙むという行為だ。
【3】おやつを嚙むときにひと工夫
「咀嚼するときに人は顔の咬筋を動かします。これが脳を刺激して、脳を活性化させるんです。さらにいつも同じ歯で嚙むのではなく、左右の奥歯や前歯で意識的に嚙む歯を変えると、脳の頭頂葉が刺激され、空間認知能力がアップすることも知られています」(加藤先生)
これに加えて、脳科学者の篠原菊紀先生は、
「じつはおいしいおやつは、実際に食べなくても、想像しただけで脳に刺激を与え、脳内ホルモンのドーパミンが分泌されます。すると脳が活性化しやる気が増し、脳の海馬に働きかけて記憶力もアップすることが知られています」
たかがおやつと思いきや、じつはすごい「健脳パワー」を秘めているのだ。