「いい戦略は存在しない。なぜなら…」注目の経営者8人に聞いた“すぐれた戦略の定義”
ビジネスパーソンの知見が集まる「新R25ワイドショー」。編集部が毎日更新するこだわりの“テーマ”に回答したり、集まった回答を見て学びを深めることができます。
今回は、集まった回答のなかから、編集部が「名回答」を厳選しお届けします。
今回のテーマは「いい戦略の定義」。
チームリーダーなどを任せられるR25世代も、「戦略」作りには苦戦することが多いはず。そもそも、「いい戦略」とは一体何なんでしょうか...?
じげんCEO・平尾丈「優れた戦略は外部から模倣される」
平尾さん:
「いい戦略」など存在しない。これが20年近く起業家としてその答えを探し続けた者の現時点での仮の答えである。優れた戦略は外部から模倣され、内部で目標とリンクした瞬間に成長を止める。
戦略とはそれが戦略となり得た瞬間にコモディティになるものであり、競争環境と共に絶えず変わり続けなくてはならないものである。
のっけから「存在しない」と言われてしまうとは想定外すぎましたが…
コモディティ化、すなわち「一般化」。有効な戦略が生まれた瞬間、競合にマネをされてしまい、すぐに有効ではなくなる…。
ビジネスの世界の厳しさをひしひしと感じさせる回答です。
北の達人CEO・木下勝寿「不確実な部分を避けて、他で補う」
木下さん:
戦いが略せていること。戦略は本来「戦いを略すること」なので、いかに「不確実な部分を略せるか」が、重要なのだが、つい「不確実な部分を確実にする方法」を考えてしまう。
しかし、大体うまく行っている会社は「不確実な部分を確実にする方法」ではなく、「不確実な部分を避けて、他で補う方法」でやっていることが多い。
なので、うまく行ってる他社の社長に「うちは、こういうところがなかなかうまくいかないんですが、御社はどうやってるのですか?」と聞くと、「そんな難しくて不確実なことに時間もお金も割いていない」と言うことが多い。
木下さん:
逆にうまく行っていない会社をみると「難しくて不確実なところ」に多くのお金と時間を割いていたりする。
難しくて不確実なことにチャレンジしていると、やりがいを感じてしまうので、ついその方法を選択しがちだが、そもそも「戦いを略する」という本質から外れていることも多い。
「戦略とは戦いを略すること」。この本質を忘れずに、目の前のやりがいに対して日々、自問自答している。
「戦いを略すこと」というのは聞くことのある表現ですが、「難しくて不確実なことにチャレンジしているとやりがいを感じてしまいがち」というのは、まさに会社あるあるかも…
あなたも、日々「難しくて不確実なこと」に取り組んで、なんとなくやりがいを感じていませんか?(自戒)
Moonshot CEO・すがけん「目的を見直し、実現可能なものを」
すがけんさん:
僕が戦略を立てるときは
・目的を見直す(大抵間違えてます)
・実行可能なものにする(夢ばかり語らない)
が一番見直すとこですかね。
すがけんさん:
なので企業の戦略を見直すときは大抵、「どうしてそれやろうと思うんですか?」とか「それ意味あります?」と目的をクリアにすることに力を入れ、戦略を立てたら「本当にこれ実行したら目的達成できますか?」「実行に無理はありませんか?」と実行のチェックをします。
「目的はたいてい間違えてる」「夢ばかり語らない」。
すがけんさんの戦略論はとても現実的なもの。計画フェーズにいる人は、今一度上記のふたつを自問自答してみるのもいいかも。
WEIN CEO・溝口勇児「7つの変数を見よ」
溝口さん:
・実現までの時間軸が短く
・投下資本効率がよく
・優秀人材への依存性が少なく
・広がりや軌道修正の余地があり
・ステークホルダーのwin-winや
・倫理性が担保されていて
・ダウンサイドでも何かしらが組織にストックされる
上記の変数の合計値が高い戦略が理想ですかね。現実はなかなか理想通りにはいきませんが。
溝口さんがチェックする項目はさらに増え、上記の7つ。
特筆すべきは「ダウンサイドでも何かしらが組織にストックされる」。つまり、計画が失敗したときでも“タダでは起きない”。
この視点があれば、振り返ったときに何も残らなかった…という悲劇は避けられそうです。
THE GUILD 代表・深津貴之「予測可能な事象を最大化する」
深津さん:
非線形・カオスな事象を最小化し、線形・予測可能な事象を最大化し、それに伴い利得を最大化するように資源分配を行うこと…かなと。
欲を言うと再現性や再利用性、反脆弱性が高いと望ましい。
勝敗そのものは条件しだいなので、戦略の必須事項ではないイメージ。
…読者の皆さんのために、言葉の意味も記載しつつコメントします(笑)。
“非線形”(=力と変形、応力とひずみの関係が比例にない状態)、つまりここでは「予測が難しいもの」を最小にし、逆に予測し得る“線形”(=力と変形、応力とひずみの関係が比例する状態)を最大化する…。
そして反脆弱性とは、衝撃を受けて崩れてしまう「脆いもの」の反対で、衝撃を受けたことで強くなれる、すなわち変化への強さ。これが高い戦略がベターであるとおっしゃっているのですね…(難)。
ここまで考えても「勝敗は条件しだい」というから、改めてビジネスにおける戦略の難しさが身にしみます…。
ナレッジワーク CEO・麻野耕司「自社のリソースがいかせる戦場を選ぶ」
麻野さん:
顧客にニーズがあって、競合がアプローチできておらず、自社のリソースがいかせる戦場(ポジショニング)を選べていること。
先日インタビューをしたときは「創業して1年半、プロダクトステルス(非公開での開発)を続けていて、まだ『何をやってる』って出してない」「喋れること少ないんですけど」という麻野さん…
きっと、ニーズがたくさんあって、競合がアプローチできず、かつリソースをいかせるポジションを選んだ戦略が、これから世間をあっと言わせてくれるはずです! 楽しみに待ちつつ、下記の記事もぜひご一読を〜!
コルク 代表・佐渡島 庸平「戦略の存在に、立てた人以外誰も気づかない」
佐渡島さん:
戦略の存在に、立てた人以外誰も気づかない。
冒頭で紹介した平尾さんの「いい戦略は存在しない」と同様に、どこか哲学の香りがする佐渡島さんの回答…
下記のインタビューでは、現在のおもなお仕事について「『どういうふうにすると、複数人でひとつの物語をつくるときにコミュニケーションがうまくいくのか?』とか、『どうしたら締め切りを守れるのか?』とか…“創作にまつわる仕組みづくり”をしています」とお話しされています。
それを踏まえると、おそらく「みんなが意識するまでもなく、チームが自然に動く仕組み」であること。さらに、「事業にまつわる深いコンテクストを理解したうえで、表面的ではない(まわりが気づかない)部分にチャンスを見つけられている」のがより良い戦略だということなのですね…!
しかし、一文でこれだけの戦略論を言い表すという…、佐渡島さんの恐ろしさをあらためて感じる回答でした…
LayerX CEO・福島良典「頑張れば頑張るほど伸びる状態」
福島さん:
頑張れば頑張るほど伸びてかつ、頑張った先に詰んだ状況にならない状態。
大学院在学中にあの「Gunosy」をつくり、2015年に上場。現在はLayerX社にて、データサイエンスを駆使したプロダクトを生み出しつづけている福島さんの、ある種シンプルに見える戦略論。
「頑張っても空回りしてしまう」のでは、メンバーが疲弊してしまう。そして、頑張った結果として「これからどうするんだっけ?」とモヤモヤする期末を迎えるのも、あるあるなこと…。
この二つをリアルに想像することが、スタートアップ界を席巻するビジネスパーソンの、戦略の極意だと言えそうです。
一口に「いい戦略」といってもさまざまな見解がありますが、「戦略」の解釈を間違えず、日々の仕事に生かしていきたいですね。
皆さんもぜひ回答してみてください!