(写真:共同通信)

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「ソトロビマブは重症化リスクの高い軽症から中等症の患者1千57人が参加した海外の臨床試験では、患者の入院や死亡リスクを8割近く下げる効果が確認されました。軽症患者向けに厚労省が7月に初承認した抗体カクテル療法薬に続き、早ければ9月中にも特例承認される見通しです」(医療ジャーナリスト)

この治療薬は英国の製薬会社グラクソ・スミスクラインが開発した点滴薬だ。米国では5月に緊急使用が許可され、オーストラリアでも8月に正式に承認されている。

「オーストラリア国立大の准教授によれば、投与した患者15人全員の症状が改善。デルタ株などの変異株にも効果があり『誰も入院せず、重症化を防ぐことができる次世代治療薬』と報告しています。あわせて多くの専門家も《どんな変異株もやっつける凄腕スナイパー》《重症化と予防医療崩壊の救世主》などと絶賛しています」(前出・医療ジャーナリスト)

この新薬について、『元WHO専門委員の感染症予防BOOK』(三笠書房)の著者で医学博士の左門新氏はこう語る。

「従来の抗体カクテルは2種類の別々の変異株に効くように、2種類の薬を文字どおりカクテルしています。一方、今回のソトロビマブは変異を起こすスパイク部分ではなく、その大本に対する抗体を作ったので、変異に左右されません。ほかのどの変異株に対しても実験上は効果があったので、人間にも同等の効果が期待できます。つまり、全ての変異株に対して効果が期待できるという点で非常に画期的なのです」

点滴薬だが、病院でしか受けられないのだろうか。

「抗体カクテルの点滴も一般家庭で使うことができたように、厚労省が認めれば、ソトロビマブも家庭で投与できる可能性はあります。ただし、点滴は医師の診断後に看護師などの医療関係者が行わなければいけないので自宅の場合は医療関係者の訪問は必須。1時間程度はかかると思います」

副作用もほとんどなく、今後多くの利点が期待されるという。

「一歩前進した治療薬で、この技術を使えばmRNAワクチンにも応用できます。インフルエンザは多様な変異株に対応するため毎年、何種類も打ったりしますが、変異株に左右されないこの技術には大きな可能性が秘められています」

ただ、現状問題なのは費用面だ。国が買い上げ配布している1本10万円といわれる抗体カクテル以上の価格だという。

「製造コストはそんなに高くないはずなので、今後広く使われていけば下がる可能性があると思います。“あらゆる変異株に効果的な治療薬”という選択肢が増えたことは、非常に希望が持てることだと思います」

画期的な治療薬の登場で、強力な変異株に怯えていた日々を、やっと過去のものにできるかも――。