がんと偽り寄付金を募った女(画像は『The Mirror 2021年9月22日付「Woman who faked terminal cancer and spent £16,000 in donations spared jail」』のスクリーンショット)

写真拡大

自らを末期がん患者と偽り、16000ポンド(約240万円)以上の寄付金を使い込んで詐欺の罪に問われていた女が懲役刑を免れた。彼女は長年にわたって精神的な問題を抱えており、嘘を重ねるうちに物事がコントロールできなくなったと判断された。『BBC』『Metro』などが伝えている。

英ダービーシャー州リプリーに住むメーガン・スコッチャー(Megan Scotcher、28)は自ら末期がんと偽り、2020年6月から12月にかけて16000ポンド(約240万円)の慈善寄付金を受け取った。

ノッティンガム刑事法院によると、数年間にわたって精神的な問題に苦しみ自殺を考えていたメーガンは「末期がんだと嘘をついたのは自分の死を家族に覚悟させるためだったが、嘘を重ねるうちに追い詰められた」と法廷で語ったという。

検察官であるガーディアル・シン氏(Gurdial Singh)は、事件の経緯をこう明かしている。

「メーガンは10代の頃にがんと診断されていたがすでに寛解しています。しかし昨年、彼女は家族にがんが再発し末期であると嘘をつきました。」

「彼女の元パートナーはこの嘘を知らずにクラウドファンディングサイト『GoFundMe』にページを開設し、寄付金を募りました。『Derby Telegraph』や『The Sun』などでも彼女の窮状が報道され、見ず知らずの彼女と子供たちのために1000キロ以上のサイクリングをして募金活動をした人もいました。彼女の2人の息子と同級生の子を持つ母親も2315ポンド(約350000円)を集めました。」

「昨年10月、メーガンは母親に『脳に腫瘤があり1月までしか生きられない』と告げましたが、母親はメーガンの通院時に『Covid-19の関係で中に入れない』と病院の外で待たされたことを不審に思ったそうです。そしてがん専門医に連絡を取ろうとしましたが、(該当する)医師は存在しませんでした。」

シン氏によると、わずか2か月前に娘を出産して3児の母となったメーガンはその後、自ら命を絶とうとしたという。

また彼女に前科はなく、6月3日に同刑事法院でビデオリンクを使って行われた審問では、余命数か月と偽ってオンラインで金銭を詐取していた罪を認めており、警察に「元パートナーとの間に借金をしている」と明かしたそうだ。

スティーブン・クープランド判事(Steven Coupland)はメーガンに懲役10か月、執行猶予1年の判決を言い渡し、次のように述べた。

「あなたは末期がんであると嘘をつき、慈善事業の寄付金を盗みました。家族や友人にひどい嘘をついたのです。」

「私はあなたについて多くの記事を読みました。『若い女性が末期がんだと嘘をつき、慈善団体の寄付金を盗んだ』―新聞のこの見出しが真実であれば、あなたは刑務所に行くことになるでしょう。しかし私はこの見出しだけでは知り得ない事情を持ち、それを考慮できる立場にいます。審問中、検察官はあなたについて『被告は何年も精神疾患に苦しんでおり、10代の頃には本当にがんと診断されたことがある』『被告の元パートナーが本人に相談せずにオンラインの募金ページを立ち上げていた』と述べました。」

「あなたが自殺を計画し、自分のためではなく他の人のため(家族と最期の思い出を作るため)にこの嘘をついたことを示す十分な証拠があることを認めます。それが正しくなかったとしても、あなたが最初から自らのために金銭的な利益を得ようと計画していたわけではないことも認めます。あなたは追い詰められ、雪だるま式に事態が悪化したのです。」

「あなたがしたことは深刻で、家族や友人そして惜しげもなく寄付してくれた人たちを非常に失望させました。彼らはあなたに利用されたと感じているでしょう。保護観察所はあなたが再犯のリスクが低いと評価しており、私もそれに同意しています。」