インディゲームは「愛」だ! Google Playインディゲームフェスティバル2021で見つけたゲーム製作の真髄

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●コロナ禍で中止となっていたインディゲームの祭典が復活!
Googleは9月4日、オンラインにて「Google Play インディゲームフェスティバル2021」のファイナルイベントを開催しました。
Andoroid OS向けのインディゲームアプリの中から20作品が入賞作品として選出され、独創性やゲーム性などを競い合う本フェスティバルは、日本国内では2018年より開催されています。

これまでの開催は現地会場に開発者や観覧者を招いての開催でしたが、2020年はコロナ禍によってやむなく中止となりました。
そこで、今年は完全なオンライン開催に切り替えることで実現されました。

開発者とゲームユーザーとの距離が近く、その近さを体感できるイベントとして始まった本フェスティバルでしたが、オンライン開催で何が変わったのでしょうか。
そしてまた、何が変わらずに残されたのでしょうか。

本フェスティバルのファイナルイベントの内容とともに、インディゲームおよび本フェスティバルの在り方や、そこに込められた想いをご紹介します。


予選を勝ち抜いた20作品がジャンルを超えてその魅力をぶつけ合った



●個性的な20作品がノミネート
本フェスティバルで審査されたのは、予選を勝ち抜いた以下の20作品です。(50音順)

・エレクトリアコード
・終わる世界とキミとぼく
・クトゥルフと夢の階段
・クローズドサークルからの脱出
・言葉で育成 妖怪アマビエさん
・サバイバーズ・ギルト
・時空運送
・人狼将棋
・戦国心探し
・二枚残す道場
・にゃんばーカードWARS
・ネズミバスターズ!
・パラサイトデイズ
・ミニミニ農園
・モノハコビのプロ
・弓矢バトルオンライン
・立体将棋:ノッカノッカ
・和階堂真の事件簿 処刑人の楔
・Super Glitter Rush
・5つのネイト

インディゲームとは、一般的に開発者が1人〜数人程度のゲームを指します。
今回ノミネートされた20作品は、いずれもこういった小規模な開発体制で作られたものですが、アイデアの独創性や丁寧なゲームバランスは、大規模なゲームメーカーによるゲームにも引けを取らないものばかりです。

フェスティバルはお笑い芸人のキクチウソツカナイ。さんやカジサックさんが司会進行を務め、Google Playパートナーシップ ゲーム部門 パートナー デベロップメント マネージャーの五十嵐郁氏や株式会社シシララ 代表取締役 ゲームDJの安藤武博氏を始めとした審査員が各ゲームの評価を行いました。

また、採点においては過去の受賞者や通産省関係者も参加し、官民や業界の垣根を超えた審査が行われました。


オンライン開催ならではの通信トラブルなどもあったが、そこは司会進行役のカジサックさんらが上手にまとめ上げていた


フェスティバルはゲームの順位を競うものではなく、飽くまでもゲームの楽しさやインディゲームの魅力を伝える場であることがテーマとして存在します。
そのため、受賞方法も1位や2位といった単純な順位ではなく、トップ10やトップ3、さらには協賛企業による特別賞を選出する仕組みとなります。

今回選出・入賞された20作品は、ファイナルイベントにてゲーム内容を紹介する機会が与えられたほか、Google Play ストア での Indie Games コンテスト特集コレクションおよびGoogle Play ストアのインディーコーナーのコレクションに掲載されています。
さらに、Android Developer /およびGoogle Play Developerの各チャネルでの入賞ゲームのプロモーションも行われました。

トップ10に選出された作品には、Google Playのチームメンバーとの個別のコンサルティングの権利が1回与えられ、開発者にGoogle Pixel 5が1台進呈されました。

トップ3に選出された作品は、Google Playストアのゲームカテゴリーのトップページ上で入賞ゲームを掲載。入賞ゲームの専用のバナーとそのゲームに関する特集ページが掲載されました。

さらに特別賞として、
・Indie Games Accelerator賞
・学生部門賞
・TOHO Games賞
・集英社クリエイターズCAMP賞
・UUUM賞

これらが用意され、それぞれGoogle Playでの活動を支援するプログラムや最大1000万円の開発支援、各企業が持つ作品のゲーム化ライセンスなどが与えられました。
また、学生部門賞では入賞した20作品以外からも選考が行われました。


ネームバリューやブランド力を持たないインディゲームとその開発者だけに、有名IPを抱える企業による支援は本当に心強い



●インディゲームに込められた「ゲーム愛」とフェスティバルの意義
受賞内容とその作品は以下の通りです。

トップ10
・終わる世界とキミとぼく
・サバイバーズ・ギルト
・時空運送

・戦国心探し
・にゃんばーカードWARS
・ネズミバスターズ!
・パラサイトデイズ
・弓矢バトルオンライン
・和階堂真の事件簿 処刑人の楔
・Super Glitter Rush

特別賞
・Indie Games Accelerator賞……ねずみバスターズ!
・学生部門賞……ワンマン列車物語2 ローカル電車運転
・TOHO Games賞……にゃんばーカードWARS
・集英社クリエイターズCAMP賞……和階堂真の事件簿 処刑人の楔
・UUUM賞……人狼将棋

トップ3
・サバイバーズ・ギルト
・時空運送
・ネズミバスターズ!


トップ3の評価は審査員全員が納得するほど非常に高いものだった



今年の入賞作品も非常にクオリティが高く、

五十嵐郁氏
「ゲームに込められた想いや感情などが画面越しに伝わってくるようだった」

成沢理恵氏
「インディゲームは愛の塊。愛という項目があったなら、みなさん100点満点」
「好きという気持ちは本当に相手の心を動かせる」

このように公評されたように、いずれの作品も製作者のアイデアやゲームに対する愛が溢れていました。

例えば「戦国心探し」は製作者の歴史愛に圧倒される作品であり、「サバイバーズ・ギルト」は災害という重いテーマを扱いながらも平和や人の愛情などを深く描いた心に残る作品に仕上がっています。
学生部門賞を受賞した「ワンマン列車物語2 ローカル電車運転」なども、作品テーマへの愛が溢れた作品の代表例です。

アイデアという点で一際輝いていたのは「時空運送」です。製作者はまだ大学生だという「るっちょ」氏ですが、審査員の安藤武博氏から、

安藤武博氏
「昔、ゲーム会社で先輩から『ゲームに色々盛り込みすぎるな』、『削ぎ落として削ぎ落として作れ』とずっと教わってきた。この作品は最小限のギミックしかなく、しかもギミックが増えること無くレベルデザインが上がっていく。これを学生時代にやってしまっている。」
「この時点で完成しているのは特殊な才能」

ここまで絶賛されるほどにアイデアとゲーム性が研ぎ澄まされており、トップ3に選出されたのも当然といった様子でした。


時空運送の開発者、るっちょ氏。シンプル且つ難解なパズルゲームを1人で創り上げた



時空運送のプレゼンテーション動画。ルールはシンプルなのに難解すぎて理解が追いつかない


そのほかの作品も「シンプルでありながら深いゲーム性」という点で共通しており、そのゲーム性の根幹を成すものがゲームに対する愛や強い執着心であることに気が付きます。

インディゲームはその開発環境から、どうしても人的リソースや資金面での制約が大きく存在します。
とくにAndroid OS(Androidスマートフォン)向けアプリでは基本無料のゲームが主体となりますが、ゲームメーカーとしてある程度の規模がなければ、いわゆる「課金ガチャ」と呼ばれるようなゲーム内課金の要素を取り入れることも難しく、主にゲーム内広告を収入源とするしかないのが実情です。

それだけに、ゲームをできる限りコンパクトに製作しつつも、伝えたいメッセージやアイデアを分かりやすく端的に詰め込む技術が要求されるのです。


プレゼンでのアピール内容なども審査された



私たちは普段、スマートフォンのゲームを暇潰しや娯楽として楽しみますが、そういった「楽しさ」の本質や根幹には、「誰かを楽しませたい」という製作者の思いがあります。
インディゲームの魅力は、まさにそういった誰かを楽しませたいという想いが真っすぐに届いてくるところにあるように思います。

本フェスティバルもまた、これまではゲーム製作者とユーザーが直接会話を行える環境を提供することで、その溢れるゲーム愛や広がり続けるアイデアを披露し交流する場として存在していました。
しかしながら、オンライン開催となったことで多くのメリットを失ってしまったようにも感じられました。

フェスティバルの最後に安藤武博氏が「ぜひ次はみんなで集まってやりたい」と語っていた想いは、恐らく審査員もゲーム製作者も、そしてユーザーのみなさんも共通の想いだったのではないでしょうか。

今回ご紹介した作品は、いずれもGoogle Playにてダウンロードして遊ぶことができます。
ぜひみなさんも各作品を遊び、そこに込められたゲーム愛に触れてみてください。


執筆 秋吉 健