大学研究室がフリーアドレス化、「まるでカフェ状態」教員が怒りの法廷闘争へ
大学の研究室が「フリーアドレス」となり、研究に支障が出ているとして、梅光学院大学(山口県下関市)の専任教員や元専任教員ら9人が大学側を相手に、計1265万円の損害賠償を求める訴訟を山口地裁下関支部に起こした。提訴は8月27日付。
専任教員らは「研究室は、大学教員、学生の学問の在り方にとどまらず、日本の学術の将来にかかわるものであると思っています。裁判を通して、あるべき研究室のかたちを多くの人に考えてもらいたい」と訴えている。
●大学HPでは「日本初!フリーアドレスオフィス」と紹介
訴状などによると、2019年4月以降、同大学では新しい校舎が利用されるようになったが、個人研究室はなくなり、教職員は校舎1階のフリーアドレスオフィス(固定席がないオフィス)を共用することになった。書架は1つ与えられ、一部について鍵をかけることができる。
大学HPでは「日本初!教職協働のフリーアドレスオフィス」と紹介され、「『教職協働(教員と職員が一体となって学生を育てる)』の観点から、全く新しいスタイルを導入!本校舎1階のフリーアドレスオフィスで、教職員がともに学生を育てます」としている。
こうした状況について、原告の教員らは、学生などが行き交っており研究に集中できないだけでなく、試験問題の作成や成績をつけることも困難であると指摘。研究成果が盗用される可能性もあることなどから、「研究執務に専念できず学生教育上の観点からも問題がある」と主張している。
また、文部科学省の大学設置基準(36条2項)は「研究室は、専任の教員に対しては必ず備えるものとする」と規定しており、「過去の裁判例からも、研究室を利用することは、専任の教員の権利であるといえる」としている。
研究室を利用できないことによる研究・教育上の不利益による損害として、1カ月あたり5万円を請求している。
教員らの代理人を務める西野裕貴弁護士は「映像を見ていただくと、共同研究室と呼ばれるフリーアドレスの席は見知らぬ人が行きかい、おしゃべりもしているような場所であることが分かると思います。大学の専任教員が、まるでカフェで研究を余儀なくされているような状況であると思います」と話す。
大学側は弁護士ドットコムニュースの取材に「訴状を見ていないので、現段階でコメントを控えさせていただきます」と話した。
教員らはHPで実態について詳しく報告している。