【MLB】大谷翔平は“クリーン”な「スターだ」 ステロイド時代を払拭させると球界OBが絶賛
ステロイド使用によって失われた選手への“畏敬”を、大谷の活躍が取り戻させた
エンゼルスの大谷翔平投手は大リーグの魅力を伝える最高の“広報大使”だという指摘が上がっている。大谷は22日(日本時間23日)、ペンシルベニア州ウィリアムズポートで行われたインディアンス戦「リトルリーグ・クラシック」に出場、少年少女の大歓声を浴びてプレーした。米スポーツ専門局「ESPN」は「MLBはこれ以上のアンバサダーを見つけることができない」と題し、その影響力について伝えている。
この記事を書いたのは、1996年から2004年にかけてフィリーズなどでプレーし、通算1100安打を記録したダグ・グランビル氏。現在は「ESPN」で解説者を務めている。
グランビル氏の現役時代は、大リーグが筋肉増強剤を始めとした薬物使用に汚染されていたいわゆる「ステロイド時代」と重なっている。1998年にシーズン62本塁打を記録したマーク・マグワイア氏(元カージナルス)や、史上最多の通算762本塁打を放ったバリー・ボンズ氏(元ジャイアンツ)はその代表格とみなされ、いまだに野球殿堂入りを果たしていない。
記事は「ステロイド時代によって最も失われたものは、ファンと選手が“畏敬の念”を感じる能力だったのかもしれない」と指摘している。ニュージャージーで育ったグランビル氏は、自身がリトルリーグでプレーしていたころを振り返っている。隣町のニューヨークにヤンキースやメッツの試合を見に行っては、活躍する選手に畏敬の念を抱いていたという。ところがステロイドなど、違反行為の存在を知ると同時に、信じられないような打球にさえ驚く気持ちが失われた。その理由を「マジックの種を明かされるようなものだった」と説明している。
素晴らしい数字の裏にあった“秘密”が知れ渡ると同時に、少年少女を始めとした世間は選手に“畏れ”を抱かなくなった。グランビル氏はそれを取り戻させてくれたのが大谷だと指摘している。
野球の進歩には“驚き”が必要、大谷に憧れる少年少女が次の主役
大谷は今季、両リーグ最速で40本塁打を記録した強打と、直球が時速100マイルを叩き出すような圧倒的投球で球界を沸かせている。しかも、ステロイド使用とは無縁の、クリーンでタフな体だ。グランビル氏は「ステロイド時代が、私から奪ったものを取り戻してくれたオオタニに感謝している」とし、あまりに破天荒な活躍を「想像のラインを書き換えている」と表現した。そして、大谷が球界に与えたインパクトをこうつづっている。
「私は、最高の選手たちを相手にプレーしてきた。最高の選手たちと共にプレーしてきた。リプレーでもう一度確かめたくなるような選手たちがいた。スターとして尊敬したくなるような選手たちがいた。オオタニはそんなスターだ。彼がフィールド上で見せる素晴らしさは、私たちのベースボールを再び活気づけている。彼はどんな瞬間でも魔法を起こせる全ての要素を持っている」
日本人初の大リーガー、村上雅則氏はかつてグランビル氏の「最も楽しみにしている日本人選手は誰か」という取材に、当時まだ10代だった大谷の名を挙げたという。日本で育まれた才能は、本場のベースボールを救おうとしている。
記事はこう結ばれている。「どんな道を選ぶのかは大切だ。そしてショウヘイ・オオタニは、進歩のためには“驚き”が必要な要素だと思い出させてくれた」。大谷の突き抜けた活躍に驚いた少年少女が、次の野球の進歩を生み出す。大谷翔平は野球の健全な進化の一翼までも、担っているようだ。(Full-Count編集部)