ASKA

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ASKAがニューシングル「笑って歩こうよ」を7月14日にリリースする。このシングルをフックにASKAサウンドの魅力について聞き始めると、CHAGE and ASKAの楽曲の思わぬエピソードが飛び出した。更に、初の配信ライブのことも話してくれた。

―先ずは近況から教えてください。

シングルが完成して、今はアルバムを出すため、日々歌詞を書いては歌って、歌って完成しては気になるとこをまたやり直すという、いつものスタイルです。

―そうやって今まで一体何曲作ってきたんですか?

1000曲近く作ってますね。

―それだけ作ってきてもいい音楽を生み出すためには地道な作業を繰り返しやっていくしかないんですね。

数曲なんですけど、歌詞に関してものすごく後悔している楽曲があるんです。楽曲って世の中に発表したら、それが最終形なので。だから自分の中の後悔を経験しないためには、やっぱり徹底的に満足するものを出していくということしかないんです。

―ちなみに、その後悔した曲ってなんですか?

まず「男と女」です。この曲は当時プロデューサー判断で歌詞の書き直しをしました。
これはいま僕がそのプロデューサーの年齢を超えたから言えることです。あの時、プロデューサーには受け入れられない、もしくは「別の何か」への期待があったのでしょう。書き直して歌ってはみたものの、今ここに来ると、やっぱり書き直す前の歌詞の方がしっくりくる。出しちゃったものはしょうがないですよね。でもライブで一度だけ自分が書いた歌詞で歌ったことがあるんです。”この楽曲は、実はこういう歌詞が最初はついてて。不意に思い出してしまうってことは、いまだにその歌詞の方が自分の中では響くということなんでしょう。今日はその時の歌詞を歌わせてください”と言って歌ったことがありましたね。

―それはいつやったんですか?

2002年の『STAMP』というCHAGE and ASKA初のセルフカバーアルバムを出した後の武道館でしたね。

―修正前と後、歌詞はどこがどう違ってたんですか?

”ふるえる肩越しに あなたのさよなら 背中で涙をかくす 私”っていうのが世に出た歌詞なんですけど、僕が書きたかったのは、”気づいていました あなたのさよなら あなたが無口になった時に”でした。あなたが無口になった時に気づいてたっていうことを僕は書きたかった。”背中で涙をかくす私”という表現は、僕に見えていた女性像とは少し違っていた。あなたが無口になった時に実はもう分かってたんだっていうね。僕の中ではその方がいまだに良かったと思ってます。

―本人から聞いちゃうから余計そうなんですけど、ASKAさんが書いた詞の方がスッと入ってくるし、詩的です。

歌詞とメロディが相まった楽曲なので、プロデューサー判断としては”背中で涙をかくす私”で情景を描写したかったのでしょう。対して、ボツになった方は心理描写ですね。最終的に書き直したのも自分です。どうしてあの時もっと粘らなかったんだろうっていう後悔があって、でも一回世の中にそれを伝えて発表した時点で浄化されたので。でも、その後にも「砂時計のくびれた場所」っていう曲があって。

―この曲も?

はい。どうしても楽曲の最後の締めのコード一歩手前が、思いつかなかった。これじゃないか?っていうものにしたんです。すごく近いところまできてるんだけど別のコードがあるはず、でもその時にはどうしても思いつかなかった。で、出してはみたものの、毎回ライブで歌う時に、そこに来ると、”うーん、別のコードなんだよな……”って思いながら歌ってました。苦しみですよ。それを『STAMP』でやり直したんです。遂に見つかって。それは、作品としては本当はやっちゃいけないですよ。他の人が、この楽曲を”こういう風にカバーしました”、それはOK。だから、この時もやり直しという言葉は使いましたけど、リメイク、セルフカバーとして出しました。そういうことで自分を納得させて、やり直したんです。