DICは6月18日、CO2長期排出量の削減目標を更新した。社内カーボンプライス制度の導入や、再生エネルギーの活用、プラスチック食品包装容器素材のリサイクル推進などにより、従来の「2030年度30%削減(2013年度比)」を、「2030年度50%削減、2050年度カーボンネットゼロ」目標とする。

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 DICは1908年、川村喜十郎により「川村インキ製造所」として創業。1925年に有機顔料の自給生産を開始、化学会社としての第一歩を踏み出した。

 1937年に法人化して大日本インキ製造会社となり、1950年に東京証券取引所へ上場。海外技術を積極導入し多角化を推進した。1962年に商号を大日本インキ株式会社へ変更し、2008年の創業100周年を機に「グループ化」「グローバル化」を目指して、DIC株式会社へ変更した。

 2020年12月期の売上高は7,012億円。部門別の構成比は、印刷インキや接着剤などのパッケージング&グラフィック部門が53.2%、コーティング材料などのファンクショナルプロダクツ部門が32.3%、素材製品や化粧品顔料などを扱うカラー&ディスプレイ部門が14.5%を占めるDICの動きを見ていこう。

■前期(2020年12月期)実績と今期見通し

 前期売上高は7,012億円(前年比8.8%減)、営業利益は前年よりも17億円減の397億円(同4.0%減)であった。

 化粧品顔料の不振と海外工場の稼働率低下によりカラー&ディスプレイが23億円、自動車、エレクトロニクス関連の不振によりファンクショナルプロダクツが21億円のそれぞれ減益に。

 一方、米州、欧州での印刷インキと付加価値の高いジェットインキの好調により、パッケージング&グラフィックが26億円の増益であった。

 今期第1四半期(1-3月)実績は、売上高1,903億円(前年同期比4.7%増)、営業利益140億円(同40.7%増)の中、今期は売上高7,500億円(前年比7.0%増)、営業利益450億円(同13.5%増)を見込んでいる。

■中期経営計画(2019年12月期〜2021年12月期)による推進戦略

 事業ポートフォリオ転換により、ユニークで社会から信頼されるグローバル企業を目指して次の戦略を推進する。

●1. 差別化された高付加価値事業へのシフト

 ・パッケージング&グラフィック: 出版用インキから複合化したパッケージソリューション、専門化したスペシャリティインキへ。 ・カラー&ディスプレイ: 一般顔料からドイツBASF社のグローバル顔料事業買収、高機能製品、天然由来製品へ。 ・ファンクショナルプロダクツ: 溶剤系製品、一般加工品から環境対応製品、高付加価値製品へ。

●2. 成長実現に向けて重点領域の競争力強化

 ・エレクトロニクス領域: 次世代ディスプレイ、PCB、半導体。 ・オートモーティブ領域: 次世代電池材料、複合化技術のマルチマテリアル化。 ・次世代パッケージ領域: 安全、安心、フードロス対応のバリア材料、生分解対応サステナブルパッケージ

 印刷インキから世界有数の関連コア技術を育成し、自動車、食品などグローバルな生活関連分野へ「彩り」と「快適」を提供するDICの動きを見守りたい。