オヤジを舐めんなよ!『ベター・コール・ソウル』ボブ・オデンカークが"最弱"から"最強"に豹変する最新主演映画に釘付け
地味で目立たない中年男が、ある日突然、ブチ切れた!『ベター・コール・ソウル』『ブレイキング・バッド』のジミー・マッギル/ソウル・グッドマン役でおなじみのボブ・オデンカークが、『ジョン・ウィック』シリーズのデレク・コルスタッド(脚本)&デヴィッド・リーチ(製作)とタッグを組んだ最新主演映画『Mr.ノーバディ』がいよいよ本日より公開される。その急転直下の豹変ぶりが試写の段階から話題となっていたが、「人を見かけで判断してはいけない」という警告が血飛沫を上げながら鳴り響く!
火曜日はゴミ当番、通勤は路線バス、郊外にある自宅と職場の金型工場を往復するだけの単調な毎日を送っているハッチ(ボブ)。地味で特徴もなく、仕事は過小評価され、妻や息子からも敬遠される冴えない中年男だ。そんなある日、よりによってハッチの家に強盗が押し入り、案の定、暴力を嫌った彼は反撃することもできず、家族の信頼はほぼゼロに。「みんなのことを思って暴力を避けたのに...」この理不尽さに怒りが沸々と込み上げてきたハッチは、ある出来事をきっかけについに堪忍袋の緒が切れる。
強盗事件での対応をバカにされ、さすがのハッチも爆発寸前。そこへ今度は素行の悪いチンピラ集団が現れて、ハッチにイチャモンをつけだすという格好の舞台が整う。「おお!やんのか?暴れんのか?」という空気が充満し、ついにハッチは逆上、血まみれの乱闘をおっぱじめる。この辺りの「もう我慢できねぇ!」という突破描写は、ある種のカタルシスを感じるが、それが火種となり、とんでもないマフィア抗争に巻き込まれていくところは、ダイナミックなドミノ倒しアクションを得意とする『ジョン・ウィック』チームお得意のエンターテインメントだ。
ボブが製作にも携わったこの企画は、彼の実体験が基になっているそうだが、そこに秘められたテーマが実に面白い。『ジョン・ウィック』や『96時間』『デス・ウィッシュ』『ランボー』シリーズなど、我慢を爆発させる傑作はたくさんあるが、大概、「実は凄いオヤジだった」とか、「手を出だしてはいけない男に手を出してしまった」という"隠れヒーロー"前提で作られている。
そこを「反撃しそうにない普通の男」に設定したら、全く先の読めない新しいアクションが生まれるのではないか。自身のイメージを逆に利用し、「このオヤジ、マフィアに喧嘩を売って、この先、どうなっていくのか」というスリルを、ボブは観客と一緒に共有するという巧みな仕掛けで、強烈な磁力をこの作品に与えている。とは言っても、『ジョン・ウィック』ばりの連続アクションをこなさなければいけないボブは、な、な、なんと、この映画の製作にGOがかかる前からトレーニングを開始、約2年間、努力を積み重ねた。ジャッキー・チェンの大ファンを公言するボブにとってボディダブルなど問題外。クライマックス、ボブの執念が実った壮大な乱闘シーンを、ぜひスクリーンの大画面で目に焼き付けてほしい。
『Mr.ノーバディ』は、本日6月11日(金)より全国公開。
(文/坂田正樹)
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『Mr.ノーバディ』© 2021 Universal Pictures/配給:東宝東和