いざ独立「親からの資金援助」は要注意…税務署のチェックが

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「毎年確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年1月頃になるとこのような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

事業資金を借りるなら、親族、銀行、どっち?

正解:親族間の貸し借りは税務署のチェックが厳しくなる

これまで、「家族に給料を支払う場合」や「家族に報酬を支払う場合」の注意点を説明しました。家族と取引をするときには、第三者との取引とは違う注意点があることをご理解いただけたのではないでしょうか。

この設問で取り上げるのは、親族間で「金銭の貸し借り」をするケースです。たとえば事業をはじめる際などに創業資金を身内から借りるといった場面が考えられますが、やはり税金の取り扱いに注意が必要です。

事業資金を借りる場合、銀行から借りたほうが、いろいろな面で安心ですという。(※写真はイメージです/PIXTA)

結論としては、銀行から借りたほうが、いろいろな面で安心です。最大のポイントは、銀行から借りた場合は必要経費にできる借入金の利息が、生計を一にする親族から借りると必要経費にならないという点でしょう。たとえ銀行と同じ利率に設定して、じっさいに支払っていたとしても、まったく税金上は考慮されないというわけです。

では、利息を取らなければいいかというと、そういうわけではありません。ここにも気をつけたいトラップがあります。

たとえば事業資金を親から借りたとします。このときに利息のやり取りがなかったとしたら、「それは贈与ではないですか?」と税務署から指摘を受ける可能性があるのです。

もし贈与という判断になると、所得税とは別に、受け取った人に対して贈与税が課せられます。贈与税は、最大で55%もの税率になるもので、最低税率も10%ですから所得税よりも重い税負担になりかねません。

こうした事態を避けるには、やはりきちんと金銭消費貸借契約を結び、返済期日や返済方法、利率などを定めて、じっさいに利息のやり取りもおこなうべきです。また、契約書には貸主と借主が双方に署名押印し、収入印紙を貼るといったことも求められます。

契約書をつくったとしても、無利息に設定すると問題になる可能性があります。この場合、利息相当額の贈与があったと判断され、やはり贈与税の対象となるかもしれませんが、その金額が少額であれば問題ないというケースが大半です。

昨今は、国や地方自治体による創業支援制度も充実していますし、無担保でも事業資金を確保できる時代になっています。安易に身内から借りる前に、まずはそうした制度を活用してみてはいかがでしょうか。

本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2021年2月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。

小林 義崇
フリーライター 元国税専門官