「上の子かわいくない症候群」の対処法。自分や子のせいだと悩まないで
かわいい盛りの下の子に比べて、上の子がかわいく思えない…。そんな気持ちをもつ親は、じつは少なくないといいます。
でもなかなか他人に相談しづらく、悩んでしまうことも。
「4歳の娘をかわいいと思えない」という読者の悩みについて、漫画家、エッセイストの瀧波ユカリさんに答えてもらいました。
子どもがかわいいと思えない…
4歳の娘をかわいいと思えません。口が達者で、弟にちょっかいを出して泣かせることもしばしば。「ダメだよ」と注意しても言いわけしたり、「なにもしていない」とうそをついたりするのでイライラして、つい大声で叱ってしまいます。自粛が続いていた時期は、私もストレスがたまり、思わず頬をたたいてしまいそうになったことも…。
下の子はよちよち歩きでかわいい盛りなので、つい比較してしまうこともあり、どのように接したらよいのか教えてください(Tさん・愛知県・31歳、夫35歳、長女4歳、長男1歳)
「上の子かわいくない症候群」という言葉を知っていますか? 読んで字のごとく、2人目や3人目を産んだあとに上の子をかわいく思えなくなる現象のことです。ネットを中心に、子育て中の人たちの間でよく使われています。
私は、この言葉が早く正式な診断名になればいいのにと思います。昔からたくさんの親たちが同じ症状に悩まされていて、ホルモンやストレスの影響があるのではという声もあるのに、医学的な研究や社会の理解が進んでいない。とても残念だし、もどかしいです。
上の子をかわいく思えない…と思った人がすぐに相談できる場所があって、ホルモンバランスやストレスレベルを調べてもらえて、アドバイスや処方薬をもらえる。そういう仕組みがあってほしい!
世の中はそこまで進んでいませんが、とりあえず今すぐできることは「私は上の子かわいくない症候群だ」と認識すること。そうすれば「なんで上の子をかわいく思えないんだろう?」と悩む必要がなくなります。Tさんが娘さんをかわいいと思えないのは「上の子が下の子をいじめるから」ではなく、「上の子かわいくない症候群だから」なのです。
もしかしたら「上の子が下の子をいじめる」という認識自体にも「上の子かわいくない症候群」が大きく関わっているかもしれません。かわいいと感じる下の子が泣いていて、その横にかわいくないと感じる上の子がいれば、上の子が悪くみえてしまう。上の子がどう弁解しても、かわいくないから信じられない。そしていつも悪者にされる上の子は鬱屈してしまい、下の子に優しくできなくなってしまう。下の子は、泣けば守ってもらえると学習して、泣きやすくなってしまう。
もしそうだとすれば、娘さんは悪くないです。そして、Tさんも悪くないです。悪いのは「上の子かわいくない症候群」と、それに無関心な社会の方です。
このように認識をあらためたうえで、乗り越えるための知識探しを始めましょう。「上の子かわいくない症候群」で検索して、同じ悩みを抱える人たちの言葉に触れるのです。「常に上の子を優先する」「上の子と2人で遊ぶ時間をつくる」など、数々の対策法が見つかるはず。そのなかから、できそうなものを試してみてください。
また、育児中は心身ともに余裕がないためにイライラしやすくなってしまうことも。「かわいくない」の気持ちが強くなってきたな…と感じたら、パートナーに相談して自分ひとりの時間や睡眠時間をどうにか確保してみてほしいです。自分でも気づかないうちに疲れきっているというのは、育児中には本当によくあること。息抜きと睡眠でリフレッシュするだけで、いつもはイラッとくることにも対応できたりします。ついついがんばりすぎてしまう自分を、なんとか休ませてあげてくださいね。
そうしていつか今の問題を乗り越えることができたときには、ぜひ体験談を記してどこかに公開していただけないでしょうか。その言葉はきっと、同じ悩みを抱えただれかを救うことになるでしょう。私も、折にふれて「上の子かわいくない症候群」のことを語っていきたいと思います。このことがもっと広く認識されて、悩んでいるだれもが解決のための場所にアクセスできるようになる日が来ますように。そしてTさんのことも心より、応援しています!
1980年、北海道生まれ。漫画家、エッセイスト。アニメ化もされた『臨死!! 江古田ちゃん』(講談社刊)でデビュー。著書に『30と40のあいだ
』(幻冬舎刊)『ありがとうって言えたなら
』(文藝春秋刊)など。
でもなかなか他人に相談しづらく、悩んでしまうことも。
口が達者な長女をかわいいと思えないことで悩んでいます
「4歳の娘をかわいいと思えない」という読者の悩みについて、漫画家、エッセイストの瀧波ユカリさんに答えてもらいました。
【お悩み】口が達者で、弟をいじめる長女をかわいいと思えません
子どもがかわいいと思えない…
4歳の娘をかわいいと思えません。口が達者で、弟にちょっかいを出して泣かせることもしばしば。「ダメだよ」と注意しても言いわけしたり、「なにもしていない」とうそをついたりするのでイライラして、つい大声で叱ってしまいます。自粛が続いていた時期は、私もストレスがたまり、思わず頬をたたいてしまいそうになったことも…。
下の子はよちよち歩きでかわいい盛りなので、つい比較してしまうこともあり、どのように接したらよいのか教えてください(Tさん・愛知県・31歳、夫35歳、長女4歳、長男1歳)
●「上の子かわいくない症候群」と認識を
「上の子かわいくない症候群」という言葉を知っていますか? 読んで字のごとく、2人目や3人目を産んだあとに上の子をかわいく思えなくなる現象のことです。ネットを中心に、子育て中の人たちの間でよく使われています。
私は、この言葉が早く正式な診断名になればいいのにと思います。昔からたくさんの親たちが同じ症状に悩まされていて、ホルモンやストレスの影響があるのではという声もあるのに、医学的な研究や社会の理解が進んでいない。とても残念だし、もどかしいです。
上の子をかわいく思えない…と思った人がすぐに相談できる場所があって、ホルモンバランスやストレスレベルを調べてもらえて、アドバイスや処方薬をもらえる。そういう仕組みがあってほしい!
世の中はそこまで進んでいませんが、とりあえず今すぐできることは「私は上の子かわいくない症候群だ」と認識すること。そうすれば「なんで上の子をかわいく思えないんだろう?」と悩む必要がなくなります。Tさんが娘さんをかわいいと思えないのは「上の子が下の子をいじめるから」ではなく、「上の子かわいくない症候群だから」なのです。
●乗り越えるための知識探しを始めよう
もしかしたら「上の子が下の子をいじめる」という認識自体にも「上の子かわいくない症候群」が大きく関わっているかもしれません。かわいいと感じる下の子が泣いていて、その横にかわいくないと感じる上の子がいれば、上の子が悪くみえてしまう。上の子がどう弁解しても、かわいくないから信じられない。そしていつも悪者にされる上の子は鬱屈してしまい、下の子に優しくできなくなってしまう。下の子は、泣けば守ってもらえると学習して、泣きやすくなってしまう。
もしそうだとすれば、娘さんは悪くないです。そして、Tさんも悪くないです。悪いのは「上の子かわいくない症候群」と、それに無関心な社会の方です。
このように認識をあらためたうえで、乗り越えるための知識探しを始めましょう。「上の子かわいくない症候群」で検索して、同じ悩みを抱える人たちの言葉に触れるのです。「常に上の子を優先する」「上の子と2人で遊ぶ時間をつくる」など、数々の対策法が見つかるはず。そのなかから、できそうなものを試してみてください。
また、育児中は心身ともに余裕がないためにイライラしやすくなってしまうことも。「かわいくない」の気持ちが強くなってきたな…と感じたら、パートナーに相談して自分ひとりの時間や睡眠時間をどうにか確保してみてほしいです。自分でも気づかないうちに疲れきっているというのは、育児中には本当によくあること。息抜きと睡眠でリフレッシュするだけで、いつもはイラッとくることにも対応できたりします。ついついがんばりすぎてしまう自分を、なんとか休ませてあげてくださいね。
そうしていつか今の問題を乗り越えることができたときには、ぜひ体験談を記してどこかに公開していただけないでしょうか。その言葉はきっと、同じ悩みを抱えただれかを救うことになるでしょう。私も、折にふれて「上の子かわいくない症候群」のことを語っていきたいと思います。このことがもっと広く認識されて、悩んでいるだれもが解決のための場所にアクセスできるようになる日が来ますように。そしてTさんのことも心より、応援しています!
【瀧波ユカリさん】
1980年、北海道生まれ。漫画家、エッセイスト。アニメ化もされた『臨死!! 江古田ちゃん』(講談社刊)でデビュー。著書に『30と40のあいだ
』(幻冬舎刊)『ありがとうって言えたなら
』(文藝春秋刊)など。