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静岡競輪場で20万200円の的中券に対し、200万2千円を払い戻してしまった問題で、払い戻しを受けた男性が1月9日、警察署に申し出たのち、差額の180万1800円を静岡市に返還した。市は、過払いについて1月8日に公表していた。

静岡新聞などの報道によれば、2020年12月31日、別の競輪場で開催された前日のレースの的中券について払い戻す際にミスが発生。現金を用意する人に手渡す伝票にケタを一つ間違えて手書きしたという。その結果、本来の10倍にあたる配当金を払い戻していた。

男性が差額を返還したことで、公金で穴埋めするつもりだったという市側としても事なきを得たというところだろう。しかし、仮に任意で返還されなかった場合、市側は泣き寝入りするしかなかったのだろうか。田沢剛弁護士に聞いた。

●受け取った側に差額分の返還義務がある

--差額分は法的にどのような扱いなのでしょうか。

民法は、法律上の原因なく他人の財産または労務によって利益を受けた場合などについて、「その利益の存する限度」において、返還する義務を負うことを定めています(703条)。

さらに、利益を受けた人に「悪意」があった場合は、その受けた利益に利息をつけて返還する義務を負うことも定めています(704条)。ここでいう「悪意」とは、法律上の原因がないことを知っていることです。

--今回のケースで、仮に差額が返還されなかった場合どうなるのでしょうか。

差額の「180万1800円」については、受け取る側にとって根拠のない払い戻しです。法律上の原因がない利益といえますので、市側は法的に返還を求めることができます。

ただし、法律上の原因がないことを知らずに受け取った際は、「その利益の存する限度」で返還することになります。

たとえば、遊興費として費消した場合には、その部分については返還義務を負いませんが、生活費として費消した場合には、本来の自分の財産は費消されずに残っているため、なお返還義務を負うことになります。

【取材協力弁護士】
田沢 剛(たざわ・たけし)弁護士
1967年、大阪府四条畷市生まれ。94年に裁判官任官(名古屋地方裁判所)。以降、広島地方・家庭裁判所福山支部、横浜地方裁判所勤務を経て、02年に弁護士登録。相模原で開業後、新横浜へ事務所を移転。得意案件は倒産処理、交通事故(被害者側)などの一般民事。趣味は、テニス、バレーボール。
事務所名:新横浜アーバン・クリエイト法律事務所
事務所URL:http://www.uc-law.jp