病院側の過失で我が子を亡くした母親(画像は『Metro 2020年10月25日付「Baby died after feeding tube pierced his heart when it was inserted incorrectly」(Pictures: MEN Media)』のスクリーンショット)

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イギリスで昨年1月、生後5か月の乳児が医療ミスにより死亡するという事故が起きた。その死因について今月に行われた審問で、病院側が栄養を補給するためのカテーテルを誤って乳児の心臓に突き刺していたことが明らかになった。『Metro』『Manchester Evening News』などが伝えている。

昨年1月、英マンチェスターにあるロイヤル・マンチェスター・チルドレンズ病院で生後5か月のノア・ジェシー・マクグラス君(Noah Jesse McGrath)が心停止に陥った後、脳に損傷を受けて亡くなった。

今月19日に同病院に対する審問が行われ、ノア君が死亡した原因について病院側が「末梢穿刺中心静脈カテーテル(PICC)」をノア君に挿入した際、心臓にカテーテルを突き刺してしまったことにあると決定づけられた。

ノア君は2018年7月25日、腹部に穴が空いた胃壁破裂の状態で生まれた。しかし出生後、すぐに手術を行ったことから順調に回復していった。身体が弱かったノア君は度々病院に通っていたが、このまま何事もなく成長していくかと思われた。

しかしノア君が生後5か月を迎えた2018年12月のこと、体調がすぐれないノア君を心配した母親ヴィクトリア・ジョンストン・ミリンさん(Victoria Johnston-Millin)が息子を連れてロイヤル・マンチェスター・チルドレンズ病院を訪れた。

医師は、ノア君に脱水症状による体重減少が見られたため末梢穿刺中心静脈カテーテル(PICC)で胸部にある上大静脈に栄養を直接投与することにした。PICCを挿入してから5日後の2019年1月2日午前1時45分頃、病院で付き添っていたヴィクトリアさんはノア君の異変に気づいて目を覚ました。この時ヴィクトリアさんは、心配のあまり泣きながら病院のスタッフへ助けを求めた。

しかしヴィクトリアさんが何度もノア君の異変を訴えたにもかかわらず、医師が病室にやってきたのは2時間後の午前3時頃だった。ノア君はこの時目を閉じたまま反応が無かったというが、対応した医師からは「特に問題はない」と言われそうだ。

午前8時頃、ノア君は心停止となり集中治療室に移され一命を取りとめたようだが、その時対応した医師がノア君の心臓にPICCの先端が刺さっていたことに初めて気づいたとのことだ。その後も治療は続けられたが、約1週間後にノア君は息を引き取ってしまった。

ヴィクトリアさんは「心停止はノアに深刻な脳損傷を残し、あの子は昨年の1月9日に私達の腕の中で亡くなりました」と当時を振り返った。

今月行われた審問の結果を受けて、同病院を運営する「英セントラル・マンチェスター大学病院NHSファンデーション・トラスト」では次のように声明を出した。

「ノア君のご家族に改めて心からお悔やみ申し上げます。またこの件に関して我々の基準を大幅に下回る対応だったことを認め、率直に謝罪申し上げます。」

「我々は2019年のノア君の死を取り巻く状況を確認するために詳しく調査を行ってきました。そして全ての患者のケアと安全性を向上させるための改善対策を実施してきました。」

「我々は今回の検視の結果、そして検視官の結論を全面的に受け入れ、これを教訓として肝に命じていくことを約束します。」

一方でヴィクトリアさんは、ノア君を失った悲しみがまだ癒えないようだが「私は医学の専門家ではありませんが、ノアに大変なことが起きていることに気付いていました。私は他の人達に自分のような状況になってしまうことだけは避けて欲しいと思っています」と語っている。

画像は『Metro 2020年10月25日付「Baby died after feeding tube pierced his heart when it was inserted incorrectly」(Pictures: MEN Media)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)