どうやって開けるの? 一風変わった独創的なドアを持つクルマ5選
一風変わったドアでスペシャルな雰囲気を演出
普段あまり気にしていないけれど、クルマのキャラクター付けに大きな影響力をもたらすのがドアです。一般的なヒンジ式のドアはもちろん、最近では、使い勝手に優れたスライド式を採用するミニバンもあります。
しかし、なかには一風変わったドアを採用する車種が存在。1970年代のスーパーカーブームで絶大な人気を誇ったランボルギーニ「カウンタック」も、あのガルウイングがあってこそ注目されたといえます。
【画像】独創的すぎる! 不思議なドアを持つクルマをチェック(25枚)
そこで今回は、そんな独創的なドアを採用したクルマを5車種ピックアップして紹介します。
●トヨタ「セラ」
1980年代後半から1991年あたりまでのバブル期は、日本車が大きく進化。スタイルを優先させてライバル車との差別化を図るモデルが数多く登場しました。
そのなかでも、性能的には何の変哲もない小型クーペに、当時は現在以上に珍しかったガルウイング式ドアを採用して注目を集めたのがトヨタ「セラ」です。
セラは、1984年から1989年まで販売されていたコンパクトハッチバック「スターレット」(3代目)のNAモデルをベースとしており、性能的にはそれほど特徴はありません。
全長3860mm×全幅1650mm×全高1265mmのボディは上半分が「グラスキャノピー」と呼ばれる全方位のウインドウで、現在でも通じる近未来的なデザインを採用しました。
搭載されるエンジンは、スターレットから流用された、扱いやすい110馬力の1.5リッターエンジンのみ。5速MTも設定されましたが、圧倒的にATモデルが流通していました。
このガルウイング式ドアは当時としては非常に高いレベルの技術が用いられており、通常のハッチバックなどに採用されるガスストラット(ダンパー)は季節によって作動が鈍くなることもありました。
そこで、セラには通常のドアダンパーに加え、温度保障されたダンパーをもうひとつドア内部に組み込み、季節に関係なくガルウイング式ドアを作動させることに成功しています。
そのため、中古車市場ではこのドアダンパーのヘタリで、ドアが自動で閉まってしまう症状が出ることでも有名になりました。
一応4人乗りですが、リアのウインドウの傾斜がきつく、ほぼ2シーター状態。良くも悪くも「見た目がすべて」のクルマでした。
最近のマツダは、SKYACTIV技術と魂動デザインを前面に押し出したラインナップですが、マツダファンにとってのアイデンティティはロータリーエンジンです。
マツダは世界で初めてロータリーエンジンを搭載した量産車として、1967年に「コスモスポーツ」を発売。さらに、「ファミリア」や「RX-7」などさまざまなモデルに搭載し、世界で199万台以上のロータリーエンジン車を販売しました。
そして、最後のロータリーエンジンを搭載した量販モデルが「RX-8」です。
ロータリーエンジンの弱点である燃費を少しでも改善させるべく、RX-8にはNAのロータリーエンジンを搭載。当初は最高出力が210馬力でしたが、6速MTを採用した「タイプS」では250PSまでパワーが引き上げられましたが、比較的ジェントルな走りを身上としていました。
全長4435mm×全幅1770mm×全高1340mmのボディで、一見すると2ドアに見えますが、「フリースタイルドア」と呼ばれる観音開きのドアを採用しています。
このフリースタイルドアは、Bピラーがなく、前後に開くのですが、フロントドアを開けないとリアドアが開かない構造になっており、また前席のシートベルトがリアドアから出てくるという設計になっていました。
スポーティな4ドアクーペともいえるフォルムに観音開きドアの組み合わせという、変わり種ドアを採用したモデルとして、RX-8は今後も語り継がれるであろう1台です。
独特なドアの採用で語り継がれる珍車も
●ホンダ「エレメント」
現在の新車市場では、SUVや軽ハイトワゴン、ミニバンが根強い人気を得ています。そんな現在の人気ジャンルをミックスして1台に仕立て上げた、時代を先取りし過ぎたクルマがホンダ「エレメント」です。
1990年代に大ヒットした「CR-V」をベースに北米で開発・生産されたエレメントは、SUVのような地上高とスクエアなボックスのようなデザインで、ミニバン並みの広い車内空間を実現させたクロスオーバーとなっています。なお、日本へは2003年に導入されました。
もともとは北米で、海岸でライフセーバーがいるライフガード・ステーションをコンセプトに、多少の悪路も気にせずサーフボードの積み下ろしもしやすいクルマとして若年層向けに開発。
サーフボード(目安は10フィート=約3m)の積み下ろしのしやすさを実現するために、Bピラーレスの左右観音開きのという斬新なドアを採用しています。
ボディサイズは全長4300mm×全幅1815mm×全高1790mm。当時としては非常に幅広くさらに直線基調なボディラインをあえて無塗装の樹脂パーツを装着するという、レジャー向けの出で立ちでした。
なお、搭載されるパワートレインは最高出力160馬力を発揮する2.4リッター直列4気筒エンジンのみですが、駆動方式はFFと4WDが選べました。
観音開きドア自体は目新しいものではありませんが、左右両側でBピラーを撤廃して大開口の左右観音開きドアが最大の特徴になっています。
ドアを全開にすると室内はシンプルな作りになっていますが、実際はドアの内部が補強されていたり、ドアのキャッチがふたつになっているなど対策が施されています。
ただし、フロントドア、リアドアの順番でしか開けることができず、後部座席に乗り込むためには結果的に前後のドアを両方開けないとアプローチできないという難点があります。
しかし、無塗装の樹脂性パーツを装着することで悪路などもでもキズを気にせず走れますし、趣味の道具を頻繁に乗せるユーザーには魅力的なモデルだといえます。
●トヨタ「ポルテ」
もともと変わり種ドアといえば、カモメが翼を広げたような形のガルウイングや、斜め前方に跳ね上げる「バタフライ」、ハサミのように縦方向に開く「シザーズ」など、超高級なスーパースポーツに採用されるケースが多いといえます。
そんななか、トヨタはコンパクトカーの「ポルテ」に変わり種ドア採用。なお、ポルテは、フランス語で「扉・ドア」を意味しています。
初代ポルテは、トヨタ・ユニバーサルデザイン第2弾として2004年に誕生したコンパクトモデルで、トールワゴンスタイルを採用。
運転席側は前後のドアがヒンジ式なのに対し、助手席側は大型の電動スライドドアを装備。車名の通り、この大型電動スライドドアが、ポルテ最大の特徴になっています。
助手席側は1ドアですが大きな開口部で乗降性も抜群。子どもや高齢者でも乗り降りしやすく、さらに長尺物が積み降ろしやすかったり、狭い駐車場でも左側に寄せて駐車可能など、実用性が高い仕様といえます
現行型となる2代目もすでに8年以上も販売されるロングセラーモデルですが、初代で話題になった左右非対称の3ドアは継続して採用されています。なおこの2代目では、姉妹車として「スペイド」が登場しました。
変わり種ドアではありますが、実用を突き詰めた結果であり、現在でも人気の高いプチミニバン、またはトールワゴンとして、ファミリー層を中心に根強い人気を誇っています。
●BMW「Z1」
BMWと聞けば、セダンを中心としたラインナップを思い浮かべる人も多いと思いますが、2シーターオープンの「Z」シリーズがあります。
その初代モデルとも呼べるのが、1986年に発表され1991年まで生産された「Z1」です。
このZ1は、マツダ初代「ロードスター」とほぼ同等の全長3921mm×全幅1690mm×全高1227mmというボディに、2.5リッター直列6気筒エンジンを搭載。
最大の特徴は、ドアシルにドアが入り込むという、世にも奇妙な「昇降式」電動ドアです。
さらにボディパネルが複数種のプラスチック製となっているのも特徴のひとつ。ボディパネルを外してシャシだけでも走行が可能になっています。
この昇降式電動ドアは、往年のオープンカーでドアがなかったり、布製の簡易ドアを採用していたことをモチーフに開発されたものです。
しかし、Z1はドアを収納するドアシルの位置が高すぎたことで乗降性が非常に悪く、全世界でわずか8000台程度しか販売されませんでした。
その珍車ぶりは現在でも際立ち、注目度はいまでも絶大です。現在でもごく少数ながら中古車で流通していることもあり、マニアにはたまらない変わり種ドア採用車といえます。
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ドアだけでも十分個性的なクルマは、現在でも色あせることがない魅力があります。
左右のドア以外でも、「ミニ クラブマン」もラゲッジスペースのドアに観音開きを採用したり、ホンダ「ステップワゴン」は「わくわくゲート」と呼ばれる、テールゲートに横開きのサブドアを搭載するなど、各車がさまざまな工夫を凝らしているようです。