「自虐を言う人は、そのものさしで人のことも見てる」バービーが“イジりと自虐”に思うこと
世の中の常識が、ここ数年で大きく変わっている実感があります。
そのひとつが「笑い」。
「人の容姿をイジったり、自虐したりする笑いはNG」といった感覚が世の中に広がりつつあるのは、多くのR25世代が感じるところではないでしょうか。
今回は、“女芸人”という、ある意味もっとも時代の変化をダイレクトに感じるポジションにいるバービーさんにインタビュー。
まずは、バービーさんが「自虐表現をあまり言わないようになった理由」というお話から、話しはじめてくれました…!
【バービー】1984年生まれ、北海道出身。大学ではチベット密教を学ぶ。2008年からお笑いコンビ「フォーリンラブ」として活動。ドラマ『17.3 about a sex』(ABEMA)と連動したトーク番組『誰も教えてくれないけど本当は知りたいセックスのこと!バービーとウチらの「17.3 about a sex」〜特別版〜』では、さまざまなゲストと深掘りトークを繰り広げる
「自分が持っているものさしで、まわりを傷つけることがある」
天野:
バービーさんは、容姿イジりや自虐といった笑いに関して、いろいろ持論を発信されていますよね。
バービーさん:
そうなんですけどね! 別に「自虐ネタ警察」「容姿イジり警察」をやってるつもりもなくて…正直微妙なポジションなんですよ。
実際、「ブスであること」「デブであること」でもらってるお仕事もたくさんあるわけですから(笑)。
天野:
そんなのもあるんですね(笑)。
バービーさん:
昔でいえば「罰ゲームとして私が出てきてキスする」とか…
今もパンツ出すとかお腹出すとかして笑いを取ってるし。私はそれで面白いと思ってやってますよ。
「これが笑いになるのもギリギリかなっていう感覚もありますけどね…」
バービーさん:
ただ、ひとつ言えば自虐的な表現はあんまり言わなくなったと思います。
天野:
それはなぜですか? 自分が傷つくから?
バービーさん:
というよりはむしろ逆で、自虐ネタってまわりの人を傷つけるなと思うようになったんですね。
天野:
自分を傷つけているんじゃなく、まわりを傷つける?
バービーさん:
やたらと自虐する人っているじゃないですか。「もうこの歳だから無理よ」とか、「太って生きていけない、死にたい」みたいな。
あれは、自分にツッコんでいるように見えて、じつはそのジャッジのものさしで、人のことを見てるんだなって思うんですよね。
バービーさん:
「私なんてそばかすがあって顔が汚い」とか言ってたら、そばかすがあるだけで醜いっていうものさしを持ってますよ〜!って、ものさしをまわりに振りまいてる行為だなって。
自虐は、自分が持ってるものさしをまわりに押し付ける可能性があるから、危ない。
天野:
なるほど。
バービーさん:
ちょっとだけ太ってる人が「もうデブすぎて死にたい」とか言ってたら、「じゃあ私なんてマジで死ぬべきって思ってるの?」って話じゃないですか!(笑)
同意ともなんとも言えないリアクションをしました
バービーさん:
だから、自虐がしつこい人がいたら「そんなことないよ〜!」は言わないようにしてます。
天野:
「そんなことないよ」待ちの人は多いと思いますけど…。なんて言うんですか?
バービーさん:
「ふーーーん……?(微笑)」って言ってます。
すごいアルカイックスマイル。今度やってみます
優しい彼氏が友だちグループのなかで急変。「お前…やってんな!!」
バービーさん:
あと、私がテレビでブスとかデブみたいにイジられてるのを見て、「バービーさんはブスだと思っていなかった、自分も同じぐらいだと思っていた」と傷ついたっていう人がいて…
それを聞いてから、イジられてのリアクションは、そういう人の存在にも配慮しようと思ったんです。
バービーさん:
どう変わったっていうのは難しいんですけど…
とりあえず「そうなんです〜えへへ」って言わずに、“自分はそう思ってない”っていう姿勢は見せるようにしたぐらい。
天野:
ただ、会社にいるとイジられることは多いですし、「えへへ」で済ませるしかないことも多いですよね…
バービーさん:
男性同士だととくに、自分の意見を言いづらい部分があるんじゃないかなあ。
なんかイヤだなっていうイジりって、集団になったとたんに発生しますよね。2人だとそんなこと言わないじゃんみたいな。
天野:
たしかに。1対1でめちゃくちゃイジるとかはないですね。
バービーさん:
以前付き合ってた彼氏が、すごい優しい人だったんですけど、友だちとの集団でいるときに急にそういうまわりをイジる感じになったんですよ。
それ見て「やってるわこの感じ! お前やってんな!」って思いましたね。
めちゃくちゃリアルな「やってんな!!(怒声)」が響き渡りました
バービーさん:
後輩にオラつくじゃん、先輩にはヘコヘコするじゃん!みたいなね。
天野:
彼女と2人だと優しくするのに、友だちの前では態度変わる…
それは…あるな…
バービーさん:
なんか、そこにいた女性を“太ってる”って感じでイジったんですよ。
そこでもう「えっ?」ってなりましたよね。じゃあ私のことどう思ってんの?って。
「お前、そのイジりの感覚持ってるなら私のことも100%デブイジりするはずだろ!」みたいな。
いや、また同意しづらいですけども
バービーさん:
芸人としては、「テレビでやっているようなイジりは一般社会に落とし込んじゃいけない」「お笑いの人だけがやることだから、マネしないでください」って感じです。
あれはトスして、スパイク打って…みたいなチームワークができる力量があって、できることなんだと思うんですよ。
天野:
どれぐらいの力量があったらやっていいと思いますか?
バービーさん:
私もできないですけど…(笑)。
イジり笑いをやっていいのは、会話のラリーの“五手先”まで読めるようになったらじゃないですかね…
それはムリだわ
エビちゃんに寄せてた大学時代を経て…「まわりに合わせて“平均”にならなくていい」
バービーさん:
私自身の容姿のことで言うと、今は「外見は私が持っている要素ではあるけど本質ではない」と思ってるんですけど、以前は「平均的な髪型、体形、顔になりたい」って思ってたこともありましたね。
大学生のころはエビちゃんもえちゃん全盛期でみんな憧れてたので、そこに寄せようと努力してましたし…
トップモデルとして活躍した蛯原友里さん、押切もえさんに憧れていたバービーさん
天野:
…どんな努力を?
バービーさん:
エクステつけて、白いTシャツにジーンズみたいな服で。そのとき付き合ってた彼氏が「白いスニーカー履いてる女子が好き」って言うから、買いに行きましたもん。ホームセンターに。
天野:
リアルで胸がキュッとするエピソード…
バービーさん:
大学卒業して芸人始めてから、ようやく個性的なのが許される環境になったんですよ。
高円寺で「ご自由にお持ちください」って置いてある服を拾って着たりしてましたね。
高円寺で拾える服はかなりヤバそうです(偏見)
バービーさん:
そのときに、何事もまわりに合わせて「平均」にならなくていいんだなって思ったんです。
会社での上下関係とかのノリも同じだと思います。「先輩に呼ばれたら深夜でも必ず行かなきゃいけない」とか、“みんながまわりに合わせてる合理的じゃないもの”ってたくさんあるじゃないですか。
そういうことは世代から世代に連鎖してしまうので、自分の世代で断ち切ろうという意思表示はしたいですよね。
私も、自分一人で何かを変えるのは難しいけど、“私で止めよう”っていう気持ちを常に持つようにしてます。
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=飯本貴子(@tako_i)〉
バービーさんからのお知らせ
ドラマ『17.3 about a sex』(ABEMA)、トーク番組『誰も教えてくれないけど本当は知りたいセックスのこと!バービーとウチらの「17.3 about a sex」〜特別版〜』では、R25世代にとっても他人事ではない、さまざまなテーマが扱われています。
#6「胸のサイズってそんなに大事」では、今回のインタビューのテーマと同様に、自らの容姿(胸の大きさ)に悩む女子が登場。ビジネスパーソンも“あのころ”を思い出しながら盛り上がれる内容になっています!
バービーさん:
ドラマのテーマになっている「性」の問題は、世代によってはちゃんとした知識がない“穴”の状態になっている人たちもいますよね。
新R25の読者の人たちも「自分はもう大人だから…」と思わずに、あらためて学びなおして、価値観をアップデートする機会にしてほしいなと思います!