中国・武漢の長江沿いの公園で、中国国旗を掲げて歩く男性(2020年9月4日撮影)。(c)Hector RETAMAL / AFP

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【AFP=時事】中国政府は新型コロナウイルスをめぐり世界から不信の目を向けられる中、パンデミック(世界的な大流行)発祥の地として疑われている中部・武漢(Wuhan)市のイメージを英雄的な被害者としてつくり直そうとしている。

 米国が新型ウイルスの流行に苦戦しているのを横目に、中国は政府高官のコメントや国営メディアの大々的な報道を通じ、武漢の「再生」と自国の流行抑制策を喧伝(けんでん)する広報キャンペーンを毎日のように展開している。

 こうした動きは9月初旬に頂点を迎えた。武漢の小学校では鳴り物入りで児童たちの登校が再開され、また、市当局はパナソニック(Panasonic)や化学大手ダウ・ケミカル(Dow Chemical)、ノキア(Nokia)といった多国籍企業の幹部ら数十人を凝った演出の見学ツアーでもてなした。

 3日間に及ぶ武漢見学ツアーには、小学生らによる中国の伝統的な歌劇やバレエの披露、衛生対策の見本として改修済みの食品市場見学、ウイルスへの勝利を象徴しライトアップされた高層ビルを眺めながらの長江(Yangtze River)クルーズなどが含まれた。

 招待した企業幹部らに対し、中国当局の担当者である林松添(Lin Songtian)氏は「マスクを着用せずに集まることのできる場所は現在、世界にほとんど存在しない」と述べ、武漢がその数少ない場所の一つであると示唆。さらに「これは武漢がウイルスに勝利したこと、そして(武漢が)再始動したことを証明している」と語った。

 しかし、武漢の生鮮市場がパンデミックの発生地だと広く考えられていることは、こうした新たな物語から消えている。中国の王毅(Wang Yi)外相は欧州訪問中の8月28日、新型コロナウイルスの起源は中国でない可能性があるとの見解を示唆した。

 こうした動きについて専門家らは、中国は新型コロナウイルスが国家の威信に与える悪影響を認識した上で、比較的成功を収めている回復劇を利用して、国際的な批判の高まりに対抗しようとしていると指摘する。

 中国は新型ウイルスと武漢当局者らによる流行初期の隠蔽(いんぺい)工作をめぐり、外国の辛辣(しんらつ)な視線にさらされている。

 地政学的分析を専門とする米コンサルティング会社ユーラシア・グループ(Eurasia Group)のアジア担当アナリスト、ケルシー・ブロデリック(Kelsey Broderick)氏は「中国政府は『われわれは問題を克服したので、あなた方の対策を支援できる。そして有効なワクチンを持つ最初の国になる』という筋書きを望んでいる」という。「それが、武漢の生鮮市場がこの危機を引き起こしたという考えから、中国が脱出できる唯一の方法だ」

■「絶対に安全」

 オーストラリア国立大学(Australian National University)中国政策研究所(China Policy Centre)の姜雲(Yun Jiang)氏は、米国のパンデミック対応の手際の悪さは、中国に明らかに好機を提供しているとみる。「米国の対応が十分でないというだけではなく、むしろ米国民の利益に反しているという事実は、中国にとって大きな助けだ」

 人口1100万人の都市・武漢は、新型コロナウイルスによる中国全体の死者4634人の80%以上を占め、パンデミック初期の厳しい日々から長い道のりを経て来た。数週間に及ぶ息の詰まるようなロックダウン(都市封鎖)時には、無人の街へと変貌もした。

 だが、市内での新規感染者はここ数か月間は報告されておらず、交通渋滞は復活し、ショッピングモールには客が詰めかけ、屋台では武漢名物のザリガニ料理が再び提供されている。

 マスクは人々の首から垂れ下がっているか、まったく着用されていない。高まる自信を示すように、先月には市内のプールで行われた大規模イベントに数千人がマスクなしで参加した。世界からの批判に対して中国当局は、新型ウイルス抑制に成功した証しだと反論した。

 武漢の工場で働く人にAFP取材班が「どのようなリスクがあると思うか?」と尋ねると、「武漢は今、完全に安全だと思う」という答えが返ってきた。

■「冬がやって来る」

 しかし、誰もが勝利をかみしめているわけではない。多くの武漢市民は均等でない回復状況と、新たな流行の可能性を引き続き懸念している。

 武漢の生鮮市場で豆腐店を営むイ・シンホア(Yi Xinhua)さん(51)は「景気は本当に悪くなった。仕事に出るのがいいのかどうかさえ疑問に思う」と言った。豆腐は形や大きさごとに整然と並んでいるが、買いに来る客はほとんどいない。売り上げはパンデミック発生前と比べて半減したという。

 同じ不満を武漢ではよく聞く。多くの事業主に言わせると、外出への恐怖感が今も残っていることに加え、流行初期に数百万人が武漢を離れたまま、いまだ戻っていないからだという。雇用主らは、あの集団脱出で地元の労働力も減ってしまったと嘆く。

「誰もが新型コロナウイルスの再流行を恐れている。それはそうでしょう? 夏が終わって、冬がやって来るんだから」とシンホアさん。「私たちは少しは回復した。だけどもしもウイルスが戻って来たら、またひどい打撃を受けることになる」

【翻訳編集】AFPBB News

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