支持率下落に「一喜一憂することなく」 安倍首相「危険水域」30%割れでも...
北海道、埼玉、千葉、東京、神奈川の5道都県に出ていた緊急事態宣言について、政府は2020年5月25日、5月末の期限を待たずに解除することを発表した。緊急事態宣言は4月7日に7都府県を対象に出され、一時は全国に拡大。約1か月半ですべて解除されることになった。
安倍政権は、新型コロナや、賭けマージャンで東京高検検事長を辞職した黒川弘務氏の定年延長問題で支持率の下落が続く。直近の複数の世論調査では、「危険水域」と呼ばれる3割を割り込んだばかりだ。そんな中で安倍晋三首相が5月25日夕に開いた会見では、低支持率に対する見解を質す質問も出たが、「日々の支持率に一喜一憂することなく、与えられた使命に全力を尽くしていきたい」と述べるにとどめた。
朝日調査、最低支持率記録を2ポイント更新
黒川氏をめぐっては、5月20日に週刊文春がウェブサイトで疑惑を報じ、22日の持ち回り閣議で辞職が決まった。処分が懲戒処分より軽い「訓告」で、退職金も「法律に従って、なされると思う」(森雅子法相)とされたことで政権への批判が加速し、週末には「#さよなら安倍総理」がツイッターで「トレンド」入りした。そんな中で行われたのが朝日新聞と毎日新聞による世論調査だ。
朝日新聞の調査は5月23、24日に行われ、内閣支持率は29%。前回5月16、17日の33%から4ポイント下落した。毎日新聞が5月23日に行った世論調査では支持率27%で、5月6日の前回調査から13ポイント下がった。
朝日の調査では、これまでの第2次安倍政権での最低支持率は、18年3月と4月に記録した31%だった。財務省による決裁文書の改ざんが問題化した頃だ。今回の調査で、2ポイント記録を更新した。毎日新聞は20年4月から自動音声応答と携帯ショートメールを組み合わせた調査形式を取り入れているため、単純な比較はできないものの、森友・加計問題で批判が高まった17年7月に26%まで下落したという経緯がある。
1時間強にわたって開かれた安倍氏の記者会見では、最後に朝日新聞の記者が指名され、支持率について
「最近の世論調査で軒並み下がっているが、それについてご自身どう分析されているか」
などと質問。安倍氏は
「我々、日々の支持率に一喜一憂することなくですね、与えられた使命に全力を尽くしていきたいと思っています」
とのみ答え、次の日程の新型コロナウイルス対策本部に向かった。
なお、この日の午前の菅義偉官房長官の記者会見では、菅氏は
「個々の世論調査の結果についてコメントは差し控えたい。まずは引き続き、新型コロナウイルスの流行を収束させて、その中で国民の命と健康、そして生活・雇用を守っていくことが最優先であり、引き続き国民の声に謙虚に耳を傾けながら、あらゆる対策を講じてまいりたい」
と答えている。
菅直人首相の会見では「総理の存在自体が国民にとっての不安材料」
支持率が「危険水域」の政権では、記者会見の場で公然と辞任を求める質問が出ることもある。その一例が、東日本大震災発災から1か月ほど経った、11年4月12日に開かれた記者会見だ。当時の首相は民主党政権の菅直人氏。会見では、産経新聞の阿比留瑠比記者(現・論説委員兼政治部編集委員)が、
「現実問題として、与野党協議にしても最大の障害になっているのが総理の存在であり、後手後手に回った震災対応でも総理の存在自体が国民にとっての不安材料になっていると思う。一体、何のためにその地位にしがみ付いていらっしゃるのか」
などと質し、菅氏が
「阿比留さんのものの考え方がそうだということと、私が客観的にそうだということは、必ずしも一致しないと思っている」
「私とあなたのものの見方は、かなり違っているとしか申し上げようがない」
と不快感をあらわにした。
当時の政権支持率は、震災が起こる前から3割を大きく割り込んでいた。朝日新聞の調査では、震災前の11年2月の調査で20%、震災後の4月16、17日に21%と低迷。毎日新聞の調査でも、11年2月に19%、4月に22%と低水準だ。
菅氏が退陣を表明したのは、この記者会見から4か月以上が経った8月26日のことだった。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)