新型コロナウイルスの感染拡大と向き合いながら、世界のスポーツ界が少しずつ動き出している。

 韓国のKリーグは、5月8日に開幕した。ドイツのブンデスリーガは、5月16日にも再開される。スペインからはクラブごとに練習が開始された、とのニュースが届いている。北欧のデンマークも、5月28日からリーグ戦を再開する。

 Jリーグは11日に新型コロナウイルス対策連絡会議を開いた。日本プロ野球機構(NPB)と共同で話し合う会合も、今回で7回目となった。

 会議後のウェブ会見で、村井満チェアマンは「今日の段階では再開日程を具体的に議論することは行なっていません」と話した。韓国やドイツでは、外出自粛要請の解除や緩和後に感染者数が増えている。それだけに、「再開後もどうやって安定的にスポーツ運営ができるか。長期の視点で準備をしていかなければいけないという思いを新たにしています」と説明した。

 5月31日まで延長された緊急事態宣言は、段階的な解除も想定されている。とはいえ、J1とJ2は2月末から2か月以上も中断している。試合のできる身体を作り直すには、急ピッチで仕上げても4週間は、普通に考えれば6週間は必要だ。通常のオフ明けと異なり、感染リスクを軽減しながらの準備になることを考えて、もっと時間が欲しいという現場の声もある。

 一方で、緊急事態宣言の一部解除がなされた後も、しばらくは都道府県を超える移動の自粛を国民に呼びかけるという動きがある。Jリーグの各クラブは、アウェイゲームへの移動ができない。リーグ戦が成り立たない。

 そう考えると、6月中の再開は難しい。7月初旬からできるかどうか、というのが現実的な議論になりそうだ。

 村井チェアマンが言う「長期の視点」については、第二波、第三波が訪れた際のシナリオを用意しておく、ということだろう。

 各チームの選手と関係者は、「自分が感染せず、他人にうつさない」ための予防をしていくが、試合に臨むためには移動を伴う。つまり、罹患のリスクを背負う。

 Jリーグからは新規の感染者を出さなくても、自粛解除によって韓国やドイツのように再び感染者が増えるかもしれない。そうなったときに、Jリーグはどうすればいいのか。「長期の視点」に関する論点はここにある。

 プロ野球ではチームの移動を少なくするために、同一カード3試合ごとではなく、6試合にまとめることも議論されている。Jリーグも水曜、土曜の過密日程になることが予想されるが、そのたびに移動をするのはチームの安全確保と社会の要請のいずれにも当てはまらない。

 移動を減らす手段して、水曜日と土曜日に同じスタジアムで同一カードを開催する。あるいは、4チームが同じ場所に集まり、水曜、土曜、水曜、土曜…と消化していけば、3週間移動をせずに6試合を消化できる。

 無観客試合を前提に考えるなら、スタジアムで試合をしなくてもいい。クラブの練習場でも、親会社が保有する体育施設でもいい。あらゆる手段を講じて、人の移動を減らしていくのだ。

 ホーム&アウェイによる開催でなくなれば、公平性は損なわれる。ただ、今シーズンは下位リーグへの降格なしが決まっている。リーグ戦の開催と安全性の担保を可能なかぎり両立するためには、移動の回数を減らすのが最善の一手だ。

 Jリーグに先駆けて動き出した各国リーグも参考にしながら、様々な角度から想像力を働かせて、再開のタイミングを見定める。そのうえで、立ち止まる勇気も忘れないでもらいたい。

 リーグ戦の再開はゴールなどではなく、新型コロナウイルスと共存する生活への第一歩である。出口戦略という言葉が使われるが、再自粛への入口も準備しておくべきだ。