「倍返し」「今でしょ」、松下幸之助の金言も... パワハラ自殺報道のパナ子会社、「伝説の人事」メッセージの中身
パナソニックの子会社「パナソニック産機システムズ」に内定した男子学生(22)がパワハラを受けて自殺したと報じられ、その報道内容にネット上で驚きの声が上がっている。
さらに、注目を集めているのが、同社サイトの新卒採用ページ(現在は削除済み)だ。そこでは、お馴染みの流行語を使って、学生に向けた特異なメッセージが発信されていた。
学生への刺激的なメッセージが、過去に掲載された文書に
今回のことは、学生の遺族の代理人弁護士らが2020年4月9日に厚労省で会見して、各メディアが報じた。
それによると、学生は、18年春に同社に内定し、業者が内定者専用に運営するSNSで、夏ごろから50代の人事課長に自己啓発本の感想文などの投稿を毎日求められるようになった。
課長は、配属先の決定権をちらつかせながら、内定者20人に投稿を強要するような書き込みをし、投稿が少ないと、内定について「無理なら辞退してください、邪魔です」などと迫った。
「丸坊主にでもして、反省示すか?」「決して人格者ではないよ」「露骨にエコ贔屓するからね」とも書き込み、「4月は毎晩終電までほぼ全員が話し込む文化がある」と長時間労働をほのめかすようなのもあった。
学生は、「死にたい」などと周囲に漏らすようになり、19年2月に自ら命を絶ったという。
こうした内容が報じられると、同社サイトの新卒採用ページに注目が集まった。次に示すように、かなり刺激的とも言えるメッセージが過去に掲載された文書につづられていたからだ。
「一人前になってから倍返ししなければならない」
「会社に安定性をもとめるな」。新卒採用コンセプトでは、「伝説の人事」からのメッセージとして、まずこんなタイトルが掲げられた。
そこでは、学生が会社に求める1位が安定性だとされることについて、「大企業病」であり社員は成果を目指すべきだとして、以前流行った人気ドラマの主人公のフレーズも使ってこう訴えた。
「新卒から数年間は半人前の稼ぎしかないのだから、一人前になってから倍返ししなければならない」
一方、安定性について、「会社にではなく、自分自身に求めるべきだ。自分の商品価値を高めれば、万が一会社に何かあっても生き残っていける」とも述べた。
また、「やりがいを文字化しろ」のタイトルでは、「給料を払う以上、一番『やりがい』を感じてくれて、伸びる場所に配属するに決まっているのだから、職種や勤務地を決めるのは任せてほしい」とし、「頑張れる理由は何だ?」では、予備校講師の有名なCMフレーズを使って、「いつが『やる時』なのか。それは今でしょ。今できてない者が決意表明しても説得力はない」と書いた。
最後に、パナソニック創業者の松下幸之助さんの「やりがい」についての言葉を引用しながら、「道は険しいけれど、そこにあなたの足跡が残る。30年も経てば、遥かな頂に立てている。下から見上げればそこは雲の上。その時、あなたは伝説となる」として、「さあ、あとは、やるか、やらないか。覚悟を決めるのはあなただ。バトンを受け取り、伝説になれ」と呼びかけていた。
人事課長らの処分は「結論づけしてから」
今回のことについて、遺族側は、謝罪や損害賠償のほか、人事課長らの処分や再発防止策などを求めている。
パナソニック産機システムズは4月9日、「当社入社内定者が亡くなられたことについて」と題して、お知らせの文書を公式サイトに掲載した。
内定者が入社前に亡くなったことは事実だとして、「会社として誠に申し訳なく、謹んでお詫び申し上げます」などとした。そして、「入社前の研修中に亡くなられた事実を厳粛に受け止め、このような事態を二度と繰り返さないよう、再発防止に取り組んでまいります」と結んでいる。
同社の人事部長は10日、J-CASTニュースの取材に対し、「指導が行き過ぎたと認識しています」と非を認めた。行き過ぎた理由については、「遺族の方にはお話ししていますが、誤解を招きますので、差し控えさせていただきます」と話した。
人事課長らを処分するかについては、「ご遺族との話し合いが続いており、原因を結論づけしてからになります」とまだ保留の状態であると説明した。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)