50歳の漫画家・古泉智浩さん。古泉さん夫婦と母(おばあちゃん)、里子から養子縁組した5歳の長男・うーちゃん、里子の2歳の長女・ぽんこちゃんという家族5人で暮らしています。
今回は、ぽんこちゃんの新語「だーじょーぶ?」についてのお話です。

2歳児のぽんこちゃんが絶対に言いたい言葉とは…?



2才の里子の女の子、ぽんこちゃんが「だいじょうぶ?」という言葉を覚えました。保育園で先生に言われて覚えたのでしょうか、人が困っているときにかける言葉であるとわかっているようです。


「だーじょーぶ?」「でーじゃーぶ?」「じゃーでーぶ?」
言うたびにちょっとずつ変化して不安定ですが、とにかく言いたくてしかたがないようです。

●「だーじょーぶ?」と言いたいぽんこちゃんはここぞとばかりに連発!

5歳の養子のうーちゃんとママと僕、ぽんこちゃんの4人で車に乗っていました。ママがペットボトルのカフェオレを飲んでいるとき、車が揺れて口からペットボトルが外れてこぼしてしまいました。

「わっ!」

コートの胸にカフェオレが染みています。助手席のチャイルドシートに座っていたぽんこちゃんが、斜め後ろのママにくるっと振り向いて言いました。

「だーじょーぶ?」
「うん、大丈夫だよ」
「だーじょーぶ?」
「大丈夫、大丈夫。ありがとう」
「だーじょーぶ?」
「心配してくれてありがとう。大丈夫だよ」
「だーじょーぶ?」


このようなやり取りが延々続きます。「大丈夫?」と言いたいぽんこちゃんはここぞとばかりに言います。それほど大した染みではなく、過度な心配と気遣いです。

●少しのミスや痛みもぽんこちゃんは見逃さない!

親戚のおばさんが93歳で亡くなり、告別式が午前中にあったので、保育園に礼服で行きました。靴を脱ごうとして靴のかかとをこすり合わせると、革靴だったので滑ってうまくこすれず、片足立ちになって手で脱ぎました。
その際バランスをくずして尻もちをついてしまいました。

「おっとっと、あいた!」


どこも大して痛くなかったのですが、恥ずかしくていたたまれない気持ちになって、

「ほら、ぽんこちゃんいくよ」

とぽんこちゃんより先に教室に向かって歩き始めました。

「だーじょーぶ? だーじょーぶ?」

大きな声で言いながらぽんこちゃんが後から追いかけて来ます。見逃してはくれません。僕が逃げるように立ち去ったのでよく聞こえるように大きな声で連発します。


「だーじょーぶ? だーじょーぶ?」
「大丈夫だよ」
「だーじょーぶ? だーじょーぶ?」

余計に目立ってしまい、先生には「お葬式ですか」と言われて恥ずかしかったです。

ぽんこちゃんの前では何か失敗しても、どこかぶつけて痛くても平静を装わなければなりません。

【古泉智浩さん】

漫画家。1969年、新潟県生まれ。93年にヤングマガジンちばてつや賞大賞を受賞してデビュー。里子を受け入れて生活する日々をつづったエッセイ『うちの子になりなよ ある漫画家の里親入門』
、その里子と特別養子縁組制度をめぐるエピソードをまとめたコミックエッセイ『うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました』
など著書多数。古泉さんの最新情報はツイッター(@koizumi69
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