韓国仏教に朝鮮学校、謎の教会... JR三河島駅周辺は「ディープなコリアンタウン」だった
JR常磐線で、東京・上野から2駅の「三河島」をご存知だろうか。1つ手前は日暮里と、繁華街に近い駅である。
三河島周辺、住所でいうと、荒川区東日暮里には、「東京朝鮮第一初中級学校」がある。筆者にとって未踏の地であり、その周辺には何があるのか、気になっていた。
散策してみると、韓国系の教会や寺が姿を見せる。朝鮮学校があるためか、どこか韓国の文化が根付いている印象を受けたが、新大久保のような若者に人気の「コリアンタウン」という気配はしなかった。
ディープだ(画像は2019年12月22日、編集部撮影、以下同)
それでも、韓国人が生活する地域であることに、間違いはないようで...。三河島駅から朝鮮学校まで、歩いてみることにした。
学校を目指して住宅街を歩く
改札出口は1か所のみ
JR三河島駅で降車する人は少なかった。「出口は1か所のみ」という指示の元、階段を降りていく。すると「定期券を買うなら...比較的すいている三河島駅で!」という自虐的な手作りポスターが目に付いた。JRが認めている、乗り降りの少ない町なのだろうか。
駅周辺には流行りの韓流アイドルのポスターもない。ただ、異彩なオーラを放つ建物がポツンと建っているだけだった。
漢字とハングルが入り混じった看板が目を引く「東京芸能教会」という団体の施設に、荒川韓国会館。さらに同じ建物にイタリアンレストランが同居しているという、なんとも国際色豊かなビルなのだ。はっきり言って、カオスな雰囲気である。
十字架が見える。上方には、「キリスト」と韓国人風の男性が並列
こちらは、目指している学校とは反対方向の場所。長居は出来ないと判断し、引き返した。グーグルマップが示す、学校の手前には、住宅街がひしめいている。しかし韓国語の文字は見当たらない。本当に学校があるのか、疑問が生まれてきた。
すると突然、「角海老」という看板が目に飛び込んできた。
韓国ではない「角海老」だ
「角海老」といえば、ソープランドやボクシングジムなどを経営するグループ企業だ。日曜の昼下がりだというのに、人の少ない住宅地。そこから顔を覗かせる看板に、ビックリしてしまった。
右は角海老のビル。左は、その近くにある温泉と古めかしい自販機
近くには風情のある湯屋もあり、ますます、韓国感は消えていく。それでも一縷の望みで足を進めると、突然、「釜山」という文字が。韓国系の居酒屋だろうか。
カラオケ居酒屋「釜山」
そして朝鮮学校へ
「角海老」というランドマークを見かけてから、一気に韓国の色が姿を現してきた。
有馬記念が開催された22日の昼下がりは寒い
門構えが立派な銭湯の前には、韓国家庭料理「ウルオンマ」。そのまま学校を目指すことに。
韓国仏教
すると、韓国仏教「智正寺」の看板がひっそりと建っていた。「寺」感はないものの、すりガラスの奥には、白髪の女性らしき姿があった。
そしてようやく、「東京朝鮮第一初中級学校」にたどり着いた。
綺麗な学校である。韓国語を学んでいないため「1」という数字しか理解できなかった
いわゆる「朝鮮学校」だ。「初中級」ということから、小学校、中学校が合わさっているのだろうか。学校のサイトをみると、「幼稚班」とい年少・年中・年長班の3年間(日本の幼稚園に相当)に加えて、初級部、中級部があるようだ。12年間通うということだ。
各地で学生らによる美術展も開かれるという
「民族的主体性の精神を基調とし、『知・徳・体』を兼ね備え21世紀の新たな時代の要求に沿い、統一祖国の繁栄と同胞社会の発展に貢献し、日本を始め世界の国々を深く理解し、国際社会において信頼と尊敬を得られる人材の育成を目標とする」
とサイト内で教育目標を掲げている。教育の基本方針の中に、こんな記述があった。
「あらゆる差別と偏見をなくし、お互いを認め合う相互尊重の理念を重視する教育を推進します」
2003学年度より改変されたという新カリキュラムと教科書を採用し、ウリマル(母国語)を習得する「国語」や「社会」、「算数」などの他に「日本語」も学ぶという。「情報」や「保健体育、「音楽」の他には、「英語」なども学んでいる。
また、
「日本全国の朝鮮学校では6-3-3-4制の教育体系のもと、日本学校とほとんど変わりないカリキュラムで教育を行っています」
と記述している。「朝鮮学校」と聞くと、日本の学校のカリキュラムと何か違う点があるのではないか、と思っていたが、ほとんど変わらないという。
日曜日だったため、生徒はほとんどいなかったが、ヘルメットを着けた女の子が、自転車を駐輪場に停めていた。
三河島周辺は日常感あふれる、ある意味ディープなコリアンタウンだった。