こちら[日本語版記事])。アーマードバトルの話を耳にしたときも、もちろん彼はそれを写真に撮りたいと思った。PHOTOGRAPH BY ALESSANDRO D'ANGELO "> 1/152019年5月、セルビアにある中世の砦、スメデレヴォ要塞でアーマードバトルの国際大会「バトル・オブ・ザ・ネイションズ2019」が開催された。写真家のアレッサンドロ・ディアンジェロはその模様を撮影した。PHOTOGRAPH BY ALESSANDRO D'ANGELO 2/15アーマードバトルに、フルコンタクトの戦いはつきものだ。それはまるで、鎧と武器を使った総合格闘技のようだ。PHOTOGRAPH BY ALESSANDRO D'ANGELO 3/15参加者たちは全員、鎧兜と盾を身につける。それらはどれも、13〜17世紀につくられた本物を忠実に模している。PHOTOGRAPH BY ALESSANDRO D'ANGELO 4/15戦士たちは剣や斧、スレッジハンマーなどの武器を使って戦うが、刃先などは丸くなっている。PHOTOGRAPH BY ALESSANDRO D'ANGELO 5/15一対一の決闘や、小部隊同士の戦い「ブフルト」など、バトルのカテゴリーはさまざま。敵を地面に倒すとポイントが得られる。PHOTOGRAPH BY ALESSANDRO D'ANGELO 6/152019年の大会には、40カ国から600人の戦士たちが参加。そのなかには、ブラジルやイスラエル、中国など遠方から参戦する者たちもいた。彼らのモットーは「旅と戦い」だ。PHOTOGRAPH BY ALESSANDRO D'ANGELO 7/15ディアンジェロは写真家として、奇妙で、時に困難な行動に向かう人間の情熱をとらえるのが好きだ(彼が以前にロシアで撮った、異形のバイク「ユニモト」レースの写真はこちら[日本語版記事])。アーマードバトルの話を耳にしたときも、もちろん彼はそれを写真に撮りたいと思った。PHOTOGRAPH BY ALESSANDRO D'ANGELO 8/15主催者側がディアンジェロに要求したことはただひとつ。アリーナ内では、場に溶け込む中世風の衣装を着用することだ。PHOTOGRAPH BY ALESSANDRO D'ANGELO 9/15ディアンジェロは、中世風のチュニックと帽子を着用して撮影に臨んだが、鎖帷子と兜のほうがよかったかもしれない。「カメラのレンズをのぞき込んでいると、宙を舞ってくる斧や、激しい音を立てる剣に注意が行かなくなるんです」と彼は話す。PHOTOGRAPH BY ALESSANDRO D'ANGELO 10/15アリーナ奥のテントの様子。クールダウンに努める者もいれば、鎧を修理する者、戦略を練る者もいる。PHOTOGRAPH BY ALESSANDRO D'ANGELO 11/15会場には、医療スタッフと救急車も待機している。PHOTOGRAPH BY ALESSANDRO D'ANGELO 12/15草むらでうたた寝する、疲労困憊した戦士。PHOTOGRAPH BY ALESSANDRO D'ANGELO 13/15大会のフィナーレは、300人の戦士たちが繰り広げる壮大な戦いだ。PHOTOGRAPH BY ALESSANDRO D'ANGELO 14/15鎧や武器が中世の本物にいかに忠実と言えども、手持ち扇風機のような文明の利器は手放せない。PHOTOGRAPH BY ALESSANDRO D'ANGELO 15/15スメデレヴォ要塞の敷地内を行進する戦士たち。PHOTOGRAPH BY ALESSANDRO D'ANGELO

戦場カメラマンは普通、戦闘地帯では防弾チョッキを着用する。写真家のアレッサンドロ・ディアンジェロが着用したのは中世風のチュニックと帽子だったが、鎖帷子と兜のほうがよかったかもしれない。

「中世の鎧と武器で戦士たちがバトル! 白熱の国際大会「バトル・オブ・ザ・ネイションズ」の世界」の写真・リンク付きの記事はこちら

ディアンジェロは、2019年5月にセルビアで開催されたアーマードバトルの国際大会「バトル・オブ・ザ・ネイションズ2019」を撮影するため、現地を訪れていた。「カメラのレンズをのぞき込んでいると、宙を舞ってくる斧や、激しい音を立てる剣に注意が行かなくなるんです」とディアンジェロは話す。

戦いの舞台は、15世紀にドナウ川の岸に建てられた石の砦、スメデレヴォ要塞。ディアンジェロの話では、40カ国から600人を超す勇敢な戦士たちが、4日間にわたるフルコンタクトの戦いに身を投じたという。それはまるで、鎧と武器を使った総合格闘技のようだったと、彼は語る。

大会は5月2日、さまざまな国旗と紋章に彩られた厳粛かつ華やかなパレードで幕を開けた。騎士たちは正々堂々と戦うことを誓い、自身の本気度を示すためにパン1斤をむさぼり食った(そんなことをしなくても、疑う者は誰もいなかっただろうが)。なかには、ブラジルやメキシコ、中国など、遠方からの参加者たちもいた。彼らの手荷物は、13〜17世紀の本物を忠実に模した鋼鉄の兜や板金鎧、重い盾で、ずっしりとしていた。

砂だらけのアリーナを囲むスタンドには観客が詰めかけ、一対一の決闘や、「ブフルト」と呼ばれる小部隊同士の戦いなど、さまざまなバトルを目の当たりにした。戦士たちは敵を、剣やメイス(棍棒)、スレッジハンマーなどの武器で殴り倒した(大会のルールブックに従って、刃先などは丸くしてある)。

勢いを増す戦い

騎士道に反する行為に及んだ者(例えば、敵の股間や首などの急所を攻撃した者)には、レフェリーがペナルティカードを提示した。会場には、救急車と医療スタッフが待機。撮影クルーは戦いの様子を、自宅観戦するファンに向けて、カメラとドローンを駆使してライヴ配信した。

次第に勢いを増す、300人の戦士たちによる壮大な戦いのフィナーレ。ディアンジェロの写真は、その激しさを見事にとらえている。誰が味方で誰が敵なのかを見分けるのに四苦八苦する戦士たち。金属と金属のぶつかる音が、歓喜する大勢の観客の叫び声と混ざり合った。「このような戦いでは、自分の味方を攻撃しないようにするのは、とても難しいのです」とディアンジェロは語る。

いちばんの戦果を挙げたのはロシアで、24個のメダルを獲得した。それに続いたのは、ウクライナとモルドヴァだった。

授章式の直後、不吉な雷雲が現れて、激しい祝いの雨を戦士たちにプレゼントした。全員がずぶ濡れになった。

「空港で、靴と下着を乾かしました」とディアンジェロは語る。「でも戦士たちのように、武器や鎧がサビてきしむことがないよう何とかしなくてもよかったのが、せめてもの救いでした」