佐野正弘のモバイル情報局 第6回 なぜ「○○ペイ」が短期間で爆発的に増えたのか
ここ最近、大きな話題となっているQRコード決済。金融業界や携帯電話業界、流通業界、インターネット業界など、あらゆる業界から参入が相次いでいます。大規模な還元キャンペーンを繰り返すなどポジティブな面だけでなく、不正利用も相次ぐなど、ネガティブな面でも大きな話題をふりまいています。このQRコード決済、これだけ多数の企業がこぞって参入するのはなぜなのでしょうか。
○お得なキャンペーンやトラブルなどで大きな話題に
2018年から2019年にかけて、スマートフォンとQRコードを活用して決済できる「○○ペイ」とも呼ばれるサービスが続々登場し、大きな注目を集めています。その理由の1つは、多くの会社が高額還元キャンペーンを毎月のように実施しているからでしょう。
特に2018年末、ソフトバンク系の「PayPay」が、利用者に100億円を還元するという大規模なキャンペーンを実施。還元額に制限がなかったこともあって、PayPayで高額商品を購入する人が家電量販店に殺到する騒ぎとなり、わずか10日でキャンペーンが終了するなどして大きな話題となりました。
このPayPayの大規模キャンペーン以降、LINEの「LINE Pay」やメルカリの「メルペイ」などが相次いで大規模な還元キャンペーンを実施。それに対抗する形で、PayPayも100億円還元キャンペーンの第2弾を実施するなど、激しいキャンペーン合戦が繰り広げられています。
ですが一方で、短期間のうちにQRコード決済への参入が相次いだことで、消費者を混乱させる状況にもなっています。実際、2019年に入ってから開始したサービスを見ても、メルペイのほかにKDDIの「au PAY」やゆうちょ銀行の「ゆうちょPay」、ファミリーマートの「ファミペイ」、セブン&アイホールディングスの「7pay」など、大手企業が相次いでQRコード決済に参入。混戦模様の様相を呈しています。
そして、もう1つ問題となっているのがセキュリティです。PayPayは当初、クレジットカードの登録に、クレジットカード会社に本人確認をする「3Dセキュア」を導入していなかったことなど、セキュリティ上でいくつかの問題を抱えていたため、先のキャンペーンを機に不正利用が多数発生。その対策に追われることとなりました。
さらに、2019年7月1日にサービスを開始した7payでは、2段階認証の仕組みを設けていない、パスワードの再登録に登録した以外のメールアドレスが利用できる、などセキュリティに多くの問題があり、約900名、5500万円という大規模な不正利用が発覚。記者会見では、経営トップがセキュリティに対して知識のない様子を見せるなど認識の甘さも浮き彫りとなり、連日メディアで取りざたされる大きな問題となっています。
○乱立の背景に見え隠れする“キャッシュレス”と“データ”
一連の動向を見ると、QRコード決済に参入する多くの企業は、短期間のうちにサービスを開始し、自社サービスに多くの顧客を取り込むことに躍起になっているように見えます。しかし、なぜこれほど多くの企業がQRコード決済に参入し、その利用拡大を急ごうとしているのでしょうか。
その理由は、やはり日本政府が推進するキャッシュレス決済に大きな商機を見出したためといえます。政府が打ち出している「未来投資戦略2018」では、2016年時点で2割程度とされているキャッシュレス決済の比率を、2025年までに4割程度にまで引き上げることを目標にするとしています。国を挙げてキャッシュレス化を推進していることから、それに乗じる形で各社がQRコード決済に参入するに至ったといえるでしょう。
そしてもう1つ、QRコード決済に参入する企業の大きな目的となっているのが“データ”です。QRコード決済のサービスに登録された個人の情報を活用することで、どんな人がいつ、どこで、何を購入したかという購買データを取得。それをプライバシーに配慮した形で分析することで、企業のマーケティングに活用したり、他の自社サービスのデータと関連付けるなどして、ローンなどの審査に用いる信用情報として活用しようとしているのです。
こうしたビジネスは、現金など既存の決済手段では難しかっただけに、データを活用した新しいビジネスを開拓するため、QRコード決済に参入する企業も多いのです。データをビジネスに活用するには“規模”、つまり膨大なデータの蓄積が必要になることから、いち早く自社のQRコード決済を拡大させることでデータを収集したい狙いがあるわけです。
そうしたことから競争過熱が続いているQRコード決済ですが、一方でQRコード決済を提供する本来の目的となるキャッシュレス決済の推進という視点で見ると、現在のような混戦状況が続くと普及の妨げになる可能性も考えられます。
そもそも、クレジットカードや電子マネーなど多くのキャッシュレス決済手段があるにもかかわらず、日本では多くの人が決済に現金を使っているという現実があります。その理由は、お得さよりも何よりも、現金が最も分かりやすくて信頼のおける決済手段と認識している人が多いがゆえといえるでしょう。
それだけに、QRコード決済に関しても、多数のサービスが乱立し、トラブルの報道が連日続くようでは、そうした“現金派”の人達の意識を大きく変えることは難しいといえます。普及のためには、便利さやお得さのアピールよりも、現金を上回る信頼を得る取り組みが、今後は強く求められるのではないでしょうか。
○お得なキャンペーンやトラブルなどで大きな話題に
特に2018年末、ソフトバンク系の「PayPay」が、利用者に100億円を還元するという大規模なキャンペーンを実施。還元額に制限がなかったこともあって、PayPayで高額商品を購入する人が家電量販店に殺到する騒ぎとなり、わずか10日でキャンペーンが終了するなどして大きな話題となりました。
このPayPayの大規模キャンペーン以降、LINEの「LINE Pay」やメルカリの「メルペイ」などが相次いで大規模な還元キャンペーンを実施。それに対抗する形で、PayPayも100億円還元キャンペーンの第2弾を実施するなど、激しいキャンペーン合戦が繰り広げられています。
ですが一方で、短期間のうちにQRコード決済への参入が相次いだことで、消費者を混乱させる状況にもなっています。実際、2019年に入ってから開始したサービスを見ても、メルペイのほかにKDDIの「au PAY」やゆうちょ銀行の「ゆうちょPay」、ファミリーマートの「ファミペイ」、セブン&アイホールディングスの「7pay」など、大手企業が相次いでQRコード決済に参入。混戦模様の様相を呈しています。
そして、もう1つ問題となっているのがセキュリティです。PayPayは当初、クレジットカードの登録に、クレジットカード会社に本人確認をする「3Dセキュア」を導入していなかったことなど、セキュリティ上でいくつかの問題を抱えていたため、先のキャンペーンを機に不正利用が多数発生。その対策に追われることとなりました。
さらに、2019年7月1日にサービスを開始した7payでは、2段階認証の仕組みを設けていない、パスワードの再登録に登録した以外のメールアドレスが利用できる、などセキュリティに多くの問題があり、約900名、5500万円という大規模な不正利用が発覚。記者会見では、経営トップがセキュリティに対して知識のない様子を見せるなど認識の甘さも浮き彫りとなり、連日メディアで取りざたされる大きな問題となっています。
○乱立の背景に見え隠れする“キャッシュレス”と“データ”
一連の動向を見ると、QRコード決済に参入する多くの企業は、短期間のうちにサービスを開始し、自社サービスに多くの顧客を取り込むことに躍起になっているように見えます。しかし、なぜこれほど多くの企業がQRコード決済に参入し、その利用拡大を急ごうとしているのでしょうか。
その理由は、やはり日本政府が推進するキャッシュレス決済に大きな商機を見出したためといえます。政府が打ち出している「未来投資戦略2018」では、2016年時点で2割程度とされているキャッシュレス決済の比率を、2025年までに4割程度にまで引き上げることを目標にするとしています。国を挙げてキャッシュレス化を推進していることから、それに乗じる形で各社がQRコード決済に参入するに至ったといえるでしょう。
そしてもう1つ、QRコード決済に参入する企業の大きな目的となっているのが“データ”です。QRコード決済のサービスに登録された個人の情報を活用することで、どんな人がいつ、どこで、何を購入したかという購買データを取得。それをプライバシーに配慮した形で分析することで、企業のマーケティングに活用したり、他の自社サービスのデータと関連付けるなどして、ローンなどの審査に用いる信用情報として活用しようとしているのです。
こうしたビジネスは、現金など既存の決済手段では難しかっただけに、データを活用した新しいビジネスを開拓するため、QRコード決済に参入する企業も多いのです。データをビジネスに活用するには“規模”、つまり膨大なデータの蓄積が必要になることから、いち早く自社のQRコード決済を拡大させることでデータを収集したい狙いがあるわけです。
そうしたことから競争過熱が続いているQRコード決済ですが、一方でQRコード決済を提供する本来の目的となるキャッシュレス決済の推進という視点で見ると、現在のような混戦状況が続くと普及の妨げになる可能性も考えられます。
そもそも、クレジットカードや電子マネーなど多くのキャッシュレス決済手段があるにもかかわらず、日本では多くの人が決済に現金を使っているという現実があります。その理由は、お得さよりも何よりも、現金が最も分かりやすくて信頼のおける決済手段と認識している人が多いがゆえといえるでしょう。
それだけに、QRコード決済に関しても、多数のサービスが乱立し、トラブルの報道が連日続くようでは、そうした“現金派”の人達の意識を大きく変えることは難しいといえます。普及のためには、便利さやお得さのアピールよりも、現金を上回る信頼を得る取り組みが、今後は強く求められるのではないでしょうか。