未来感あふれるハイパーカー「FZero」ニュージーランドで開発中。300km/h到達は10秒足らず
ニュージーランドの自動車ベンチャーRodinが、まるでゲーム『グランツーリスモ』に登場するRedbull Xシリーズのような未来的ハイパーカー「FZero」を開発中です。

Autoblogに掲載されているFZeroの画像はそのコンセプトを表すもので、灯火類がなくフロントサスペンションもむき出しでかなり細く頼りないなど、実物とは違う部分があるかもしれません。しかしRodinはこれを「F1よりも速い公道走行可能なマシン」に仕立てて販売する計画です。RodinはオーストラリアのIT企業Dicker Data創設者のDavid Dicker氏が設立した自動車ベンチャー企業。アマチュアレーサーでもあるDicker氏は、かつてフェラーリなど高級スポーツカーを乗り回していたものの、次第にオリジナルカーの開発を夢見るようになりました。そして1999年、本人曰く自動車規制が厳しくなりつつあるオーストラリアではなく、比較的自由さの残るニュージーランドにハイパーカーを作る会社を設立しました。

Dicker氏は手始めに、1990年代にルマン24時間レース向けに開発されたローラ製GT1カーの公道仕様車を購入、それを研究し始めました。そしてオリジナルハイパーカーを開発するにあたりオーソドックスな2人乗りのスポーツカーにしたのでは、ただでさえ狭い市場にひしめく同じような形のクルマの中に自分のマシンが埋もれてしまうと考え、あえて1人乗りのシングルシーターにすることを決断。まるで戦闘機に車輪を付け足したかのような、独創的なFZeroのコンセプトが固まってゆきました。ちなみにRodinという社名は、Dicker氏がFZeroの設計過程で多くの思考が必要になったところから、「考える人」で知られる彫刻家ロダンの名前を用いたとのことです。

いまはまだFzeroに関する全貌が明らかになっているわけではありませんが、その心臓部には排気量4000cc、72度V型10気筒エンジンを採用するとされ、そのままでも700psを発生するこのエンジンに強力なツインターボを装着、最大1600psを出力できるところを1000ps程度に抑えるとのこと。ただ、1000psでも充分にバケモノであり、静止状態から時速300km/hに到達するのには10秒しかかからないとも。

車体は自社設計のカーボンファイバー製モノコックを採用、F1カーのコクピットにキャノピーをかぶせ、さらに4つのタイヤはホイールカバーで覆われた形状は、現在のフォーミュラEをさらに進化させたかのようにも思えます。

FZeroのエアロダイナミクスは、300km/h走行時で4000kgものダウンフォースを発生するとDicker氏は豪語します。ダウンフォースと言えば、空力を得意とする鬼才デザイナー、エイドリアン・ニューウェイ氏が手がけたアストンマーティンValkyrieでも、その発生ダウンフォースは約1800kgと言われており、それに比べるとFZeroのそれは2倍以上。...にわかには信じがたい値です。

一方、近年のハイパーカーにあるような高度な可動式エアロパーツやアクティブサスペンションといった機能はなく、電子制御部分に関しても主にドライバーの運転を手助けするものとなり、それも個別にオンオフが可能になる予定とのこと。

2010年にロータスが25台限定で発売したF1マシンそのものなサーキット専用市販車「Lotus T125」を取得、それをベースとしたオリジナルフォーミュラカーFZEDを、FZeroの足がかりのために開発したRodinだけに、FZeroの設計思想も、やはりレーシングカーの方向にかなり振れていそうです。

Dicker氏は、FZeroの価格は100万ユーロ(約1億2000万円)を目標としていると述べています。これはアストンマーティンValkyrieの1/3。...にわかには信じがたい価格です。

率直に言えば、FZeroプロジェクトにはかなり大風呂敷感があり、本当にそんなクルマが開発できるのか?販売できるのか?と思わずにはいられません。ただ、それはアストンマーティンValkyrieのときもおそらく多くの人が感じたこと。テスラのイーロン・マスク氏も、ジャンルは違えどSpaceX事業では時間はかかりながらも絵空ごとと思われたヴィジョンを少しずつ実現しています。

なにより、われわれ日本人(のゲーム好き)からいえば、ハイフンがないものの「FZero」という車名に"ピクッ"と来てしまうことは否定できません。決して浮上して走るクルマではないものの、その未来感あるデザインも、この名称なら抵抗を感じることはないでしょう。

FZeroのサーキットバージョンは2019年末に発表予定、そしてその公道仕様は2020年前半にその姿をわれわれの前に表す予定です。Dicker氏の情熱が形になって現れるのをわれわれも夢を持って待ちたいところです。