車両の下に記載されている謎の記号の意味は?(撮影:風間仁一郎)

毎日何気なく利用するJRの通勤電車。車両の外側の表面に謎のカタカナが書かれているのを目にしたことはないだろうか。モハ、クハ、クモハ……。これらの謎のカタカナはいったい何を意味しているのだろうか。

1文字目のカタカナは「車種」を表す

車体に書かれているカタカナ。これらは、1文字目で車種、2文字目で用途を表している。たとえば、「モハ」は「モ+ハ」に分解でき、「モ」が車種、「ハ」が用途を表すことになる。さっそく1文字目から解説していこう。


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・ク〇……運転台付きの車両

「ク」は運転台付きの車両ということを表している。車両の前側または後ろ側に運転席が設置されている。ガラスで仕切られた運転台を覗くと、ハンドル、速度計、モニタ、スイッチが並び、フロントガラスの向こうには線路が広がっている。ちなみに運転台でスペースを取られる分、他の車両よりも座席が少ない傾向がある。

・モ〇……モーター付きの車両

「モ」はモーター付きの車両ということを表している。車体の床下部分にあるモーターは電車を走行させる力の源で、電力を得て車輪を回転させている。ラッシュ時には千人以上の人を運ぶ原動力はここにあり。その力強さを体感し、惚れ惚れするに違いない。

・クモ〇……運転台、モーター付きの車両

「クモ」は、クとモが合わさった、運転台とモーターが付いた車両である。機能的な車両であり、一度に二度おいしいと、鉄道ファンにも愛好者は多い。

・サ〇……運転台もモーターも付いていない車両

「サ」は、運転台もモーターも付いていない車両を表している。ただ引っ張られるだけの車両であり、メカ好きの方は、さっぱりした印象を持たれるかもしれない。モーターが付いていない分、比較的静かに乗車することができ、筆者はお気に入りである。

通勤電車でよく使われるのは「ハ」と「ロ」の2種類である。

・〇ハ……普通車

「ハ」は普通車であることを表している。スタンダードな客車。ごく一般的な車両である。

・〇ロ……グリーン車

「ロ」はグリーン車であることを表している。普通車よりグレードの高い車両で、追加料金を払う必要がある。座席が広く座り心地がいい、コンセントなど特別な設備があるなど、快適に過ごすことができる。

・これらは等級を「イロハ」で分けた名残

なぜこの「ハ」「ロ」の2文字が使われるようになったのか。

かつて日本の列車は3つの等級に分けられており、優等な順から「イロハ」で数えられていた。つまり、イは一等車、ロは二等車、ハは三等車である。それから1960年代に、2等級制が採用されることとなり一等である「イ」が消滅。「ロ」「ハ」のみが残った。

ただ、旧一等車である「イ」が近年復活したとのニュースが駆けめぐった。高級寝台列車「ななつ星in九州」(JR九州)や、「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」(JR西日本)の客車には「イ」が含まれているそうだ。グリーン車の上を行くラグジュアリー空間。さぞかし贅沢な仕様なのだろうと、想像が膨らむばかりである。

まとめ:2種類のカタカナを組み合わせてみよう

以上、カタカナは1文字目では車種、2文字目では用途であると説明をしてきた。首都圏のJRでよく見るのはこの5種類のカタカナである。

クハ……運転台付きの普通車
モハ……モーター付きの普通車
クモハ……運転台とモーター付きの普通車
サハ……運転台もモーターも付いていない普通車
サロ……運転台もモーターも付いていないグリーン車

あなたはもう、自分が乗っている通勤電車がいかなる車両なのか、一目で判別ができるだろう。ちなみにローカル線では、「キハ」という記号を目にすることも多いだろう。「キ」とは気動車(ディーゼルエンジンの付いた車両)を意味する。つまり、キハとはディーゼルエンジンの普通車。主に非電化区間で走っている。

これらの車両は、雰囲気や気分によって乗り分けるのもおすすめである。それぞれの特徴やおすすめポイントを紹介しよう。

・「クハ・クモハ」でかぶりつきを楽しむ

運転台の付いている列車では「かぶりつき」が楽しい。かぶりつきとは、電車の最前部、運転手の後ろ側に立ち、景色を見ることである。前面に広がる車窓や、レールの上をキレイになぞる様子、複雑な線路の分岐が楽しめる。大人だけでなく鉄道好きのキッズたちにも人気で、隠れた激戦区でもある。

・「モハ」で力強い音を楽しもう

モーターが付いており、走るたびにその音を聞くことができる「モハ」。鉄道ファンの中には「音鉄」といい、モーター音や走行音を愛でたり、録音したりする人もいる。どれも同じだろうと思いきや、実は車両ごとに違った音を奏でるのが癖になる。聞き分けられたら、あなたは鉄道マニアの仲間入りだ。

・「サハ」ちょっと静かに過ごす

「サハ」は運転台もモーターも付いておらず、ただ引っ張られるだけの車両である。他の「クハ」「モハ」「クモハ」に比べると、比較的静かな乗車ができるといえる。モーターがないため、車輪と線路が直接こすれ合う音を楽しめる。

・「サロ」グリーン車でゆったり通勤を

首都圏では、通勤電車に2階建てグリーン車を搭載している路線がある。東海道線、湘南新宿ライン、上野東京ライン、常磐線である。有料だが、広々としたリクライニングシートでゆったりと通勤ができる。2023年度末からは、中央線にもグリーン車が導入される見通しである。

カタカナ横の数字は何を表している?

以上、車体に表記されているカタカナについて解説をしてきた。その横に書かれている数字についても軽く解説をしておこう。「クハE231-501」のように、2種類の数字が-(ハイフン)でつながれている。

・ハイフンより左側の数字は「〜系」

左側3ケタの数字は、電車の系列を表す。鉄道ファンがよく口にする「〜系」はこの部分のことである。「クハE231-501」の場合、「E231系」と読めばいい(ちなみにEはJR東日本の車両であることを表している)。路線ごとに使用される系列は違い、たとえば山手線にはE231系とE235系、京浜東北線にはE233系が使用されている。

・ハイフンより右側の数字は「〜番台」


車内にも謎の記号の表示がある。記号下の「SUSTINA」は車両メーカーの製品ブランド名(撮影:風間仁一郎)

右側3〜4ケタの数字は、製造番号を表している。これは車両1つごとに異なる、いわばシリアルナンバーのようなものだ。「クハE231-501」は「クハ E231系 500番台」と読めばいい。

・ちょっと珍しい!? 山手線の4600番台車両

最後に、筆者お気に入りの山手線車両「4600番台」について紹介しておこう。

11両編成の山手線の10両目には、たいてい4600番台車両が割り当てられている。これは、他とチョット違う特徴がある。山手線の場合、車両の端の部分の座席は3人掛けシートであるが、4600番台の11両目側だけは4人掛けである。さらに、そこだけは窓が2枚付いているから、珍しい。まるで北欧のようなデザイン性を感じるのは筆者だけであろうか! ぜひ一度その目で確かめてみてほしい。

通勤電車の車両にこだわりを!

今回は、電車の車体に記載されているカタカナや数字について解説をしてきた。毎日乗っている電車一つとっても、設備や用途が異なり、その奥深さに感動のため息を漏らした方もいるであろう。あなたのお気に入りの車両は? 今日から乗車する車両にもこだわりを取り入れてみてはいかがだろうか。