『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を見たアニメ大好き芸人 ハライチ岩井。9話のホッジンズ中佐との名シーンに「もう一回記憶を消して見たい」

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 お笑いコンビ ハライチの岩井勇気氏がお届けする、本音でアニメを語る番組「ハライチ岩井勇気のアニ番」。

 第84回の放送では3月上旬時点の冬アニメランキングを発表しました。前回同様『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』と、前回2位だった『恋は雨上がりのように』が同率で1位、3位には前回4位から1ランク上げた『刻刻』がランクインしました。

岩井勇気氏。

※本記事には『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』・『恋は雨上がりのように』・『刻刻』のネタバレを一部、含みます。ご了承の上で御覧ください。

3位  『刻刻』 『刻刻』。
(画像はジェノスタジオ公式Twitterより)

岩井:
 3位いきましょう。3位は『刻刻』。面白くなってきた。原作は完結してるのか。佐河が化物みたいになった。佐河との対決も生身でどうするんだ、主人公だけでは無理だぞとなった時に、お父さんの能力が開花したと思いきや、弟の能力が開花していて。

『刻刻』の登場人物である佐河順治。
(画像はジェノスタジオ公式Twitterより)

 甥っ子の能力で、カヌリニをコントロールする能力というのが出てきまして、「こいつを最後に佐川にぶつけてみるか」みたいな。結局、石も破壊しちゃって、止界に入るためのものみたいなのを踏み潰しちゃったんですよ。

 主人公以外はみんな手を出せば出れるけど、主人公はどうやって帰るんだっていうことなんだけど、一応それを樹里ちゃんはわかった上でやってると思うんですけどね。

 あの覚悟はすごかったですね。これあと3話くらいだけど、面白くなってきた。『刻刻』がふわふわっと終わらないことを祈ります。

──期待値を煽って煽って、ラスト2話で「ん?」ってなるような詰めが甘い作品、結構ありますからね。

岩井:
 最後まで見させちゃえば勝ちっていう考え方もありますからね。

──『正解するカド』のことですか?

岩井:
 そういうわけじゃないですよ(笑)。逆に『正解するカド』は気持ちよかったけどね。

──あそこまでいっちゃったから。

岩井:
 そうそう。

──『十二対戦』とかも。

岩井:
 あの『十二対戦』の最終話はなんだったんでしょうか(笑)。

同率1位 『恋は雨上がりのように』 『恋は雨上がりのように』。
(画像はTVアニメ『恋は雨上がりのように』公式Twitterより)

岩井:
 第1位は『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』と『恋は雨上がりのように』。同率!

──本来は駄目ですよ、これは。ランキングとして成立してないですからね。

岩井:
 これはもう申し訳ないですけど、これはちょっと決められなかった。今週はどっちも良すぎて。これは良すぎる。『恋は雨上がりのように』からいこう。

 最新話(第9話)がすごく良かった。俺たち、前回と前々回の話にすごい騙されてたんだよ。店長の図書館で借りた小説が、元嫁が書いたものだみたいに匂わせていた。

 作者の名前に「ちひろ」って書いてあったから、俺は「ちひろ」が店長の元嫁だったのか? って思ってたんだけど。実はその「ちひろ」っていう人は店長と大学かなにかの同級生で男だったんだよ。嫁と思わせてたその人は「ちひろ」っていう名前だっただけで店長とは居酒屋で飲む友人みたいな感じだったんだよ。

 「騙されたー!」ってなっちゃって。元嫁が売れた作家で、自分も書いてるんだったら酷すぎるなこの話ってなったんだけど、でもちょっと違ったんだよね。やっぱりあれが騙されちゃって。

 「そういうことだったんだ!」って、ちょっとホッとした部分もあったんだけど。店長は小説を書き続けていて、ちひろという友達は、自分の小説が面白かったかどうかの店長の評価を気にしているところを見ると、店長も意外と才能があるんじゃなかろうかって。

 たぶん店長は小説を書く夢があったんですけど、たぶん子供ができちゃったかなんかで諦めちゃったんだよね。

 それともうひとつ、同時進行であきらちゃんの部活の同級生のはるかちゃんだっけ。その子がいて、部活で離れ離れになったんだけど、あるひょんなところから二人で「浴衣で夏祭りに行こう」みたいな。

夏祭りに出かけるあきら(奥)とはるか(手前)。
(画像はTVアニメ『恋は雨上がりのように』公式Twitterより)

 「良かった〜」みたいにはるかちゃんのほうは思っていたのですが、あきらちゃんが店長を見つけちゃうんですよ。あきらちゃんがすごく嬉しそうな顔で挨拶をしているのを見て、はるかちゃんは「あの人のこと好きなの?」って。「オッサンじゃん」みたいな感じになって。いつのまにか知らないあきらちゃんがいるっていうところに、はるかちゃんは動揺を覚えるみたいな。

 「何も言ってくれないじゃん!」みたいな喧嘩になって。そしたら「昔みたいになれないよ」ってあきらちゃんが言ったところで、はるかちゃんはぼろぼろに泣いちゃうっていう。

 二人の仲が悪化したあとに、店長とちひろさんの飲みがあって、10何年かぶりに合ってみれば、意外と昔の友達同士だったなって店長は思ったのを、あきらちゃんの悩みを聞いたんですよ。友達とギスギスしちゃっているっていう。

 そうしたら「友達はずっと友達のままなんだよ」って最後に言って、自分とちひろの確執が解消された気持ちを、ちゃんとあきらちゃんに伝えてあげて。なんだか大人だなって。

──自分の人生を振り返っても、そんな瞬間がちょっとありますよね。そういうところが共感を得るんでしょうね。

岩井:
 なんだろうね。昔の友達って今会ってもなんとも思わないんだよな、ゴメン(笑)。

──(笑)。

岩井:
 そういう人がいるっていいね。一番仲良かったやつと遊ばなくなって、再会した時に、「ああやっぱ、こいつといるのすげーいいわ」っていうことじゃないですか。そう考えると、そういうやつと俺一緒に仕事をしてるからね(笑)。

──そっか、澤部くんがそんな感じか。もし澤部くんとコンビを組んでなくて、1年か2年離れていてまた会った時の感覚に近いかもね。

岩井:
 どうなんだろうな、その感覚がもうわかんない。ずっとだから。

──ちなみに九条ちひろさんの声は宮本充さんでございます。いい声してるんだよ。

岩井:
 平田広明さんとの掛け合いがいいんだよね。

──あのレベルのベテランの方は何人かいらっしゃいますけど、ぶっちぎりいい人です。むちゃくちゃ裏でも腰低いし。俺より若い役者やスタッフに対しても全員に敬語。「よろしくお願いします」って言われるんだよ? 「こちらこそ!」って思っちゃう。

岩井:
 それを忘れちゃいけないですよ(笑)。

──本当ですよ。ちなみに誰とは言わないですが、同じぐらいのキャリアのとある有名な方は、とある番組にゲストで来ていただいたんですけども、そのMCがちょっと風邪を引いていてコホコホしてたんですよ。でも特番ですよ。「大丈夫、風邪はうつらない」と思って来てるんですよ。「それだったら風邪がうつるから俺は出ない」って帰ったんですよ。

岩井:
 結構だね。

──僕は現場にいて、ションベンちびりそうになったんですけれどね。

岩井:
それもプロっちゃプロなんだけどね。

──プロなんですけれども、言われたことを腰を低くしてやるっていう宮本充さんの仕事のスタイルが、僕は大変好きで勉強になっています。

岩井:
 そうありたいものです。でもあの時分の人って、みんな自分のプロ感があるから納得はできる。

同率1位 『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』 『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』
(画像は『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』公式Twitterより)

岩井:
 『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の今週はすごかった。ずっとヴァイオレットの過去の話をやってたんです。今週の最後は泣いたな。ヴァイオレットがどういう経緯で軍人になったかとか、「これは戦争するための道具なんだ」みたいな感じで引き渡されたヴァイオレットに少佐が名前をつけてあげて。

 言葉を教えてあげたりとか、感情を教えたりする中で、やっぱりどんどん軍人になっていく。戦争が終わったら子安武人さんが声優をやってるクラウディア・ホッジンズが「会社をやろうと思うんだよ」って。「じゃ、ヴァイレットを雇ってあげてくれ」って感じになるんですよね。

 これがもう完全に死亡フラグなんですけども。少佐が過去に奥さんがいたかどうか……そんな話をしてたんだよね。ヴァイオレットを引き取る時に、家のメイドが「奥様がどうとか」言うんだよね。

 それが少佐の奥さんなのか、少佐のお母さんのことなのか、どっちなんだろうなっていうことになってたんですけど。少佐がヴァイオレットに言った「愛してる」は家族に対する言葉なんじゃないかと俺は解釈しようとしてるけどね。

ギルベルト・ブーゲンビリア少佐(左)。
(画像は『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』公式ホームページより)

 最後の戦争に出て、少佐が肩とかに銃撃を受けちゃうわけ。歩けなくなちゃって血だらけで少佐も死ぬと。ヴァイオレットは「少佐を連れて逃げます」とか言って、血だらけの少佐を肩に担いで逃げようとしてるんだけど、そこでヴァイオレットは撃たれて右腕がもげてて……。それでも左腕で……。

 そこで爆弾で吹き飛ばされて、ヴァイオレットは左腕が落ちて両腕がなくなっちゃう。それを見て、少佐が「なんてことだ」みたいになって、「俺のことは置いて逃げてくれ」って言うんだけど、ヴァイオレットは逃げられませんって。

 最後に「君は生きて自由になりなさい」「愛してる」っていう言葉が、そこで初めてだったっていう経緯が、この3話くらいで説明されてたんだけど。

 それで話は現代に戻って、少佐が死んだことを知らされてなかったヴァイオレットが、悲しみに打ちひしがれている中、ドールのみんながヴァイオレットに手紙をくれるんですよね。あれはちょっと泣けましたね。

 ヴァイオレットは手紙をちゃんと貰ったことがなくて、それで自分に宛てられた手紙を読んで。「辛かったら今から復帰できないかもしれないけど、私たちにいつでも相談して」みたいな手紙を貰って、手紙を貰う喜びを知る。

手紙を受け取ったヴァイオレット。
(画像は『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』公式ホームページより)

 手紙を貰うことで自分が手紙を書くことの大切さを知って、最後ですよね。ホッジンズ中佐がヴァイオレットのことをずっと見てきたわけで、ヴァイオレットがどれだけ戦場で人を殺しているかも見てきた。

 「その過去は拭えない」ってずっと言ってるんだけど、ヴァイオレットが仕事に戻ってきた時に、「君のその過去は拭えないんだでも、君がドールの仕事をやってきて喜んでもらったことも拭えないんだよ」って言った時、めちゃくちゃ良かったですよ。

 あの一言でヴァイオレットは救われましたね。この名前に恥じないような生き方をしなければいけないって。最後に、タイトルですけど、この3話ずっと出てなかったのに、この3話の最後で『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』っていうタイトルが出た時に、うわぁ〜やられた! お手上げです って。

──これ、最終回じゃね? って。

岩井:
 良かったんだよ。京都アニメーション万歳。で、千原実さんの声が。なんであんな演出がいいんだろうね、全部。この2話でめっちゃ振ってたから。この2話がずっと辛かったから。この2話は最後に出るタイトルは「」だけだったんだよね。

──全部前振りだった。

岩井:
 参りました。素晴らしい。

──今期は『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』も『恋は雨上がりのように』もそうですけど、しんみりくるというか、作画と内容がバチっとあっている作品が多いですね。

岩井:
 その2作はすごい。あの作画もいいんだよね。『恋は雨上がりのように』のちょっとレトロなキャラデザね。

 もう一回記憶を消して『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の近々の3話を見たい。今回、1位は決められませんでした。2つです。