ダボス会議の今年の主題はAIによる「デジタル専制政治」だった
トランプ米大統領の初参加で、例年以上に注目された今年の「世界経済フォーラム」、通称「ダボス会議」。世界の首脳や経済人らの間で何が話し合われたのか。この10年あまり参加し続けてきた小林喜光・経済同友会代表幹事(三菱ケミカルホールディングス会長)は、「大きな変化を感じた」と言う。ここ2、3年の流れではあったが、“主役”は、AI(人工知能)。民主主義に代わって、ネット上の情報を独占した、ごく一部の「エリート」がAIとともに社会を支配する「デジタル専制主義」をめぐる議論だった。(ダイヤモンド・オンライン特任編集委員 西井泰之)
今年のダボス会議で注目されたのは
イスラエル人学者のユバル・ノア・ハラリ
──今年のダボス会議での議論はどうでしたか。
このところの「ダボス会議」の討議は、グローバリゼーションを進める中で、「国民国家や民主主義はどうあるべきか」や地球環境のサステナビリティの問題が主要テーマでした。
最近は、反グローバリゼーション、つまり「反ダボス」の流れが強まり、トランプ政権の誕生や英国の「ブレグジット」(EU離脱)があり、ロシアのプーチン大統領や中国の習近平主席のように独裁的な指導者による政治、あるいは逆にポピュリズム政党の台頭といった、懐旧的な逆行の動きが強まっていました。
しかし今年、多くの人が注目し、私にとっても最も興味深かったのは、ユバル・ノア・ハラリという41歳のイスラエル人の学者の講演でした。