世紀を越えて受け継がれる「澤柳教育」 成城学園創立100周年でシンポジウム
成城大学(東京都世田谷区)などを擁する学校法人「成城学園」が、2017年に創立100周年を迎えた。それを記念して11月19日、成城大学でシンポジウム「成城小学校と大正新教育〜その理念の継承・発展と実践〜」が開かれた。
成城小学校(成城学園)を源流として、この100年間で明星学園、玉川学園、清明学園、和光学園が派生した。シンポジウムには、これらの4学園も集まり、創立者・澤柳政太郎の掲げた教育理念が、いかに受け継がれているのかがテーマとなった。
4つの「希望理念」を掲げた教育
シンポジウムの冒頭では、教育学者の北村和夫氏(聖心女子大学副学長)による、基調講演が行われた。北村氏によると、澤柳は4つの「希望理念」のもとに、秋と春に入学する「二重学年制」や、飛び級制、男女共学、少人数制などの枠組みを作ったという。その結果、澤柳式の教育は全国で支持され、成城小学校(当時)に意欲ある教育者が集まったそうだ。
「澤柳の教育理念と実践は、1世紀を経ても全く古びておらず、むしろ今日においてこそ再評価されるべき示唆に富んでいます。多様な形での教育改革が模索される今日、原点に立ち返りながら、それぞれ各校の歩みを知ることは、極めて意義のあることと言えるでしょう」(北村氏)
基調講演する北村和夫氏
4学園に受け継がれる澤柳精神
続くパネル・ディスカッションでは、成城小学校から派生した4学園が、これまでの成り立ちと、現在の取り組みについて発表した。「新しい時代に合った新しい教育」を目指す実験校として生まれた明星学園は、いまも教育を実践、研究する場として、毎年「公開研究会」を行っている。また、「成城教育」を充実、発展、完成、延長するコンセプトで生まれた玉川学園では、澤柳が理想とした「真善美」の精神に、独自に「聖健富」の価値を加えた、バランスある教育を実践しているという。
「子どもとともに生き、子どもを生かし、子どもを通して生きる」を教育目標に掲げる清明学園では、義務教育の改善を重視しつつ、実践を積み重ねている。「澤柳精神」と、玉川学園創立者・小原國芳氏の「教育力」を引き継ぐべく生まれた和光学園は、戦後の混乱期を乗り越え、いまは児童の自主精神を養い平和教育を充実しているそうだ。
成城学園もまた、情操教育や個性尊重を実践し、「希望理念」をより深化させていると語る。澤柳は100年前、初等教育に英語を取り入れた。彼の教育理念は、大正から昭和、平成へと受け継がれ、いまも実践されているようだ。