山本幸三・地方創生相が滋賀県主催の地方創生セミナーで、「学芸員はがん。一掃しないと」と発言したことが2017年4月、問題になった。これは主に、インバウンド観光、つまり外国人観光客に対して、学芸員による文化財観光の案内や説明が不十分であることを指摘したものである。

翌日、都内で謝罪はしたものの、「観光マインドを持ってもらう必要があるという主旨」の旨を述べた。

そもそも、文化財にかかわる学芸員は普段、どのような仕事をしているのか、我々、一般人はよく知らない。そこで博物館に、その仕事内容を聞いてみた。

学芸員の基本的な仕事内容


今回話を聞いたのは、東京国立博物館の学芸企画部広報室の武田さんである。まずは学芸員の基本的な仕事について教えてもらった。

「学芸員の仕事は、博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究です。その他、これらと関連する事業についての専門的事項をつかさどることも仕事に含まれます。
具体的には、文化財の収集・保管、調査・研究、保存・修復、展示・公開、教育普及、情報・文化財アーカイブ、広報・出版および国際交流・地域交流に関わる仕事をしています」

学芸員の仕事は、思った以上に幅広い。収集から保管、そして研究、教育普及、国際交流に至るまで、何でも屋さんのような印象だ。

「東京国立博物館では、学芸員資格保持者を含む研究員が業務についています。それぞれの業務は細分化されており、個々の業務についての専門性をもった研究員が業務にあたっています」

外国人観光客への取り組み


ところで、今回の問題の中でも挙がっていた、外国人観光客への取り組みについては気になるところである。実際、どのようなことが行われているのだろうか。

「東京国立博物館では、館内の案内と地図のリーフレットを7か国語8言語で用意しています。また、アプリ『トーハクなび』(無料)によって、各展示館の案内コース、おすすめ作品ガイドや、位置測位による自動ガイド再生システムなどを英語で用意しています。あわせて、タブレットの貸出サービスも実施しています。
また、館内の展示室や案内サインは、日英中韓の4か国語表示を基本とし、内容はより外国人に理解し易いものを目指しています」

この「トーハクなび」というアプリを実際にダウンロードしてみると、館内のフリーWi-Fiを利用して通信をしながら案内をしてもらえるしくみのようだ。




建物めぐりコース(30分)、日本美術ジャンル別コース(30分)、日本の考古コース(30分)などの全6コースが用意されていて、すべて英語での説明を聞きながらめぐることができる。端末の言語環境を英語に変えると、説明が英語で流れるしくみだ。試しにiPhoneを英語環境に変えてみると、説明の文字と音声が英語に切り替わった。外国人観光客は、画面の説明を見ながら、もしくは館内でイヤホンをつけながら説明を聞き、めぐることができる。





また、館内の展示室や案内サイン、解説文なども、英語や中国語の説明にもボリュームが持たせられており、それほど「サブ」という位置づけにならず、日本語と並列されているように見える。「トーハクなび」の存在も合わせて考えると、外国人観光客も十分歓迎されていると受け取ってもらえるしくみづくりは十分されているようだ。




今後、博物館や美術館に訪れる際には、外国人観光客目線で見てみるというのも、学芸員の人たちの仕事ぶりの一部を知る意味で必要かもしれない。

(取材協力)
東京国立博物館
http://www.tnm.jp/