日本中に衝撃を与えた広島復帰から2年、黒田博樹は2016年シーズンを最後に、現役引退を決めた。この2年間、チームに多大なる影響を与えてきた黒田。そんなレジェンドから感じた"ひと言の重み"。偉大なエースは、発した言葉もまた人の心を突き動かすものばかりだった。

■「あと何年野球ができるか分からないですし、カープで野球をすることの方が 『1球の重み』を感じられるんじゃないかなと判断しました」■

(メジャーリーグ球団からの年俸20億円以上とも言われるオファーを蹴って広島復帰を決め、金屏風の前に座って笑顔で会見に臨んだ/2015年2月17日)

■「広島のマウンドは最高でした」■

(2740日ぶりの日本公式戦登板で、7回96球、5安打無失点に抑えて復帰後初勝利。地元ファンはスタンディングオベーションで凱旋をたたえた/2015年3月29日)

■「いつ腕が飛んでもいいと思って投げている」■

(復帰後の最速152キロを計測した1球を振り返って/2016年4月11日)

■「さすがに2球続いたからね。チームの士気にも関わる。自分の体は自分で守らないといけない。戦う姿勢というのも見せたかった」■

(同点の場面で迎えた打席でバントの構えをすると、阪神・藤浪晋太郎に2球続けて内角へ厳しい球を投じられ激昂/2015年4月25日)

■「誰かがやらないといけない。この時期、痛い痒(かゆ)いと言っていられない。1試合でも多く投げるために登板間隔を詰めてもらっている。全力でいきたい」■

(2試合続いた中4日の登板で8回102球、3安打1失点。クライマックスシリーズ出場に望みをつなげた/2015年9月28日)

■「必要とされている部分を見せられると、それを振り切ってまで(辞める)というのは難しいかなと」■

(現役続行か引退かで去就に迷っていた時期に、チームメイトの後輩からもらった現役続行を願う言葉やメッセージが決断の一因と明かす/2015年12月17日)

■「僕が20年やってきた中でもベストなチームだと思います。それはレギュラーだけでなく、ベンチにいる選手も含めて、その素晴らしいチームメイトと最後に一緒に優勝したいですね」■

(日米通算200勝達成後の会見で復帰2年目のチームメイトに感謝した/2016年7月23日)

■「なかなかこういう瞬間って長い野球人生でもなかった。最高のチームメイトと野球ができて、感動させてもらいました」■

(先発した試合で優勝を決めると、新井貴浩と涙の抱擁。涙を流したままチームメイトに胴上げされた/2016年9月10日)

■「今まで先発して完投するスタイルでやってきて、9回投げきれない体になったところで、他の選手に対しても示すことができない歯痒さが常にあった」■

(先発完投を貫けなくなったことで黒田は引き際を感じた/2016年10月18日)

■「最後の最後まで野球の神様はいると思って野球をやってきた」■

(最後のユニホーム姿でマウンドに感謝を告げようとひざをつけた黒田は涙を流し、その場から動けなかった/2016年11年5日)

前原淳●文 text by Maehara Jun