経営戦略構文100選(仮)/構文9:プロダクトポートフォリオマネジメント/伊藤 達夫
オリジナルのPPMでは、資金需要の代理変数としての市場成長率、資金創出の代理変数としての市場シェアによって事業を分類し、資金を事業間で回しつつ、平均成長率は所属する市場の平均以上を目標としつつ、資金を生み出す見込みのない事業への資金配分を避ける考え方であるが、全社戦略としては事業間の関連性の記述の問題、資本市場の発達した現在における自社内資金の還流の必要性の低さから、活用していくには限界があるフレームワークである
おはようございます。伊藤です。もはや秋ですね。秋風が心に染みわたります・・・。ええ、私は今日も元気です。更新がだいぶ遅れまして申し訳ありません。意外なことに仕事が忙しいんです。人間は腐っていますが、クライアントからは仕事がいただけるんですね。仕事の評価が人物本位の評価でなくて良かったです。
さて、今日はオリジナルのPPMです。戦略に詳しいと自称する人がいろいろ言いがちな枠組みなので、ぼろくそに書こうと思います。写真のモデルはそんな書きぶりにぴったりなシマヅさんがフロッピーディスクに顔面蒼白な図ですね。
ぼろくそに書くだけだと趣がないですが、ポートフォリオの元ネタはノーベル賞クラスの知見ですからね。いわゆるノーベル経済学賞をもらった現代ポートフォリオ理論です。はっきり言うと、PPMにはほとんど関係がないと思います。
ノーベル賞をとった現代ポートフォリオ理論の極論としては、卵を運ぶときに、1つの籠に入れて運ぶより、2つの籠に分けて運んだ方がいいよね?というお話ではあるわけですが、当たり前すぎるわけです。リスク回避的投資家とか、中立的投資家とか、その辺から解説していると日が暮れるので割愛します。
まあ、好きな人が1人よりも、2人いて、2人と付き合っていた方が、1人に振られても大丈夫!と言い換えるともっとわかりやすいでしょうか?途端にゲスなにおいがしてきましたね。
ええ、私はゲスになりたくてもなれない非モテですけどね・・・。
さて、ここからまじめに書きますので、箸休めの方はご退場を。
PPMは、根本的には資金をどのように社内で還流させるべきなのか?という資金創出と配分の意思決定の考え方です。
つまり、潜在的資金需要を表現する軸として、業界の成長率を取り、潜在的資金創出能力を表現する軸として、相対的市場シェアを取るわけです。
率で両軸を取ると、大きさの概念が抜け落ちるので、通常は規模感を円の大きさで表現します。資産や収入の大きさを取れば、規模を表現できますね。
通り一遍のマトリクスの説明をしてみます。
市場シェアは低いけれど、急成長市場にいる企業は、成長のために多くの資金を必要とします。将来の業績には不確実性があるため、この部分を「問題児」と呼びます。
反対に、市場シェアが高く、低成長市場にいる事業は、収益性が高く投資はそれほど必要としません。
新規客が要らないので、広告宣伝費も抑えられます。従って多くの資金を獲得できるため「カネのなる木」やら「キャッシュカウ」というわけです。
「負け犬」は低成長率で低シェアの部分で、他の部分に移動する見込みはほぼありません。原則として売却対象となりますね。
高成長率、高シェアの事業は「花形」で多くの資金が必要ですが、将来は「カネのなる木」になってくれる可能性が高いですので、投資対象となるわけです。
ただ、事業の資金を社内で還流させる考え方は資本市場が発達した現代にはやや不自然ですし、事業関連性の記述ができません。従って、現在ではあまり使われなくなってきています。
ここでいう事業関連性とは何か?と言えば、通常はケイパビリティ関連性です。事業を拡大する際に、現状の組織のケイパビリティを無視する考え方は非常に厳しいものがあります。
ただ、この考え方が主張された1970年代は、無秩序に多角化を行った米国企業が事業の再編成の考え方を欲していた時期ですからね。このマトリクスにあてはめて機械的に事業を整理するという意味ではとても便利だったと思います。
米国は独占禁止法が厳しいので、1つの市場で勝ちすぎると、裁判所にやられてしまいます。ですから、成長のためには他のマーケットに機会を求めるしかないのです。しかし、当時はどういった市場に進出するのがいいかといった知見はこれといってありませんでした。
私の大嫌いなレビットが、無根拠に「鉄道事業が衰退したのは、人や物を目的地に運ぶことと捉えず、車両を動かすことを自らの使命と定義したこと」とか言っちゃっていますが、こんな考え方で拡大したら、コングロマリットディスカウントが起こりまくるでしょうね。というか、実際に起こってしまったわけですけど・・・。
いまだにレビットを信じている人が本当に本当にたくさんいますが、自己啓発書と同じで元気になる文章ならなんでもいいという人がたくさんいるんでしょうね・・・。これだから「マーケティング」な方々がストラテジーを語るのが嫌なんですよ。本当に害悪でしかない。修正する私の身にもなってください。でも、それでおカネもらってるんでしょ?と言われればそれまでですが、もうちょっと前向きな仕事がしたいものです・・・。
「売上を上げることがコンサルタントの価値だ!」とか躊躇いもなく主張できる初心な方々は、売上が上がっても、組織のマネジメントがザルで拡大できない企業のコンサルでもやってみればいいんですよ・・・。その規模の企業からの依頼が来ないレベルのコンサルタントなんでしょうけどね・・・。
ストレスで脱線しました。すいません。元に戻します。PPMでしたね。
PPMが現在、使えないのはケイパビリティの連続性の記述に問題があるから、資本市場が発達した現代に社内で資金を還流させる前提だから、です。
同様の理由でアンゾフのマトリクスも使わんですわ。商品の部分を、ケイパビリティと機能に分解すれば使えなくもないですけど。嬉々としてアンゾフをそのまま紹介する人々がいる現状に辟易です。あれ、またずれました・・・。ごめんなさい。
じゃあ、使えるとしたら何なの?というお話をちょっとだけ書こうと思います。現代でも使える示唆があるとすれば、市場の状況と、自社のシェアによって、採用すべき戦略が変わってくるということに使えると思います。
成長市場で採用すべき戦略と、成熟市場で採用すべき戦略は違います。
リーダーとフォロアーで採用すべき戦略が違います。
だから、PPM的に事業のマッピングをすると、それぞれの事業群で採用すべき戦略の大枠がわかります。
え、それだけ?と思いますか?
でも、これはポーターの基本戦略、いわゆる集中と非集中、差別化とコストリーダーシップの枠組みに似てますよね?リーダーは非集中でよさそうですし、フォロアーは集中の方がなんとなく良さそうです。成長市場では、ひたすらに業務規模、業務効率拡大に邁進すればいいし、成熟市場では差別化が必要そうな気がしますよね?
ぐらいに乱暴な議論が許されるならば、PPMは基本戦略への道筋を示しているともいえるわけです。伝わりますか?
そこからさらに踏み込んだ、ポーターの全社戦略の4つの区分けとか誰も知らないだろうし、興味もないでしょうから、そういうことは書きませんが、機会があれば書こうと思います。
長く書きすぎましたね。ごめんなさい。今日はこれぐらいにしておきましょう。
体脂肪率が6%代に突入して、いよいよ病気を疑ったほうがいい気がしてきた今日この頃です。人間ドックの結果はそろそろ届くころなんですけどね。ええ、クライアントのプレッシャーが私の脂肪を減少させるのです。
次回も健康ならば書けると思いますので、期待せずに待っていてください。2月あたりに、経営戦略勉強会の第7回を無料でやります。1人か2人追加で入れると思います。希望者がいるかはわかりませんが。メルマガやらTwitterで告知しますので、ひっそりチェックしてみてください。それでは今日はこのあたりで。次回をお楽しみに。