プロが教える!明日からウサギと暮らすため講座 「ウサギはお風呂に入れないですよね?」「入れられるわよ。○○ができれば」/武田 真優子
■ある日、あるウサギカフェでの話
ボク 「この子ウサギ、毛が長くて白いですよね。イヌのようにお風呂にいれる必要はありますか?でも、ウサギはお風呂に入れちゃいけないと、どこかで聞いたことがあるんですが、そうなんですか??」
武田さん 「基本的にはウサギにはお風呂は必要ないけれど、入れることはできるわ。もちろん、ウサギの性格によるけれど、たいていは少しずつ順に慣らしていけばできる。」
ボク 「え、そうなんですか」
武田さん 「そうよ。ただし、皮膚と毛をしっかり乾かすことが大切。なんにせよ、この講座を聞いたからといって、いきなり一緒にお風呂に入っちゃダメよ!」
■ウサギの皮膚や毛ってどうなってるの?
ふわふわの毛に覆われているウサギたち。毛をかき分けると、薄いピンク色の皮膚が見える。皮膚は薄くて、耳の後ろあたりは、ネコのようにつかめるわ。走り出しそうなウサギを止めるときは、がっちりつかんでも大丈夫。ここは痛くないのよ。
犬もそうだけど、短い下毛(アンダーコート)の上に、下毛や皮膚を守るための長い上毛(オーバーコート)が覆っている。
毛の短いウサギでも、定期的な毛の手入れは必要。手入れといっても、難しく考えなくていいの。手で体をなでてあげるだけでも、抜け毛はとれるし、体の変化がわかるから、是非やってあげてね。体の変化というのは、例えば、できものがあったり、ケガを見つけたり、そういうことね。
ただし、毛の長いウサギは、手で撫でるだけではだめ。フェルトのように絡まって、ひどい毛玉になる。だから、毛の長いウサギは小さな頃から道具を使ってのブラッシングに慣れておいてもらう必要があるのよ。ブラッシングの時間が楽しくなるように工夫ができるといいわね。
ウサギには人間にはある”体熱発生装置”である褐色脂肪細胞がないので、寒がりで、寒くて震えるわ。暑いのも苦手だけど、あまり寒いのも苦手だから、室温には気をつけてあげてね。
■ウサギに服を着せるって、どういうこと!?
ウサギには、立派な毛があるので基本的には服を着せる必要はない。ただし、外にお散歩に行く場合は、何もつけていないとどこかへ行ってしまうから、ハーネスをつけることをお勧めする。
うさぎのお散歩のことを”うさんぽ”というのよ。ハーネスは、もともとは馬具の一種のこと。馬をしっかりとらえたり、コントロールするための道具なのだけど、ウサギのハーネスもそれに近い。ウサギに首輪をつけている方も見たことがあるけれど、お外の場合なにがあるかわからないので、しっかりとしたハーネスをつけてほしい。
お洋服は、お散歩の目的ではなく、イヌやネコと同じように、ファッションとして着せる場合もあるけれど、手術跡をなめないように隠したり、癖でなめたりかじることを防いだり、することもできる。
ウサギにオムツをつけるのは難しいけれど、体になにかつけていることに、小さなころから慣らしておくことをお勧めするわ。のちのち必要なときに、ウサギも飼主さんもストレス少なく楽になるからね。大きくなってからだと、受け入れられなくて食欲がなくなってしまうこともあるのよ。
■「うさんぽ」と「うさぶろ」をしてみる
「うさぶろ」は、わたしが作った言葉なんだけど、ウサギをお風呂にいれることね。もう一度言うけれど、ウサギは基本的にはお風呂に入れる必要はないわ。そして、人間が入るように熱くてたっぷりのお湯にざぶんと入るのではなく、3cmくらいの深さで35℃くらいのぬるま湯に浸かるって感じね。またドライヤーを使って乾かす場合は、熱風でやけどしないように気をつけないとね。
もし「うさんぽ」と「うさぶろ」をするとき、大切なことは、「すこしずつ、すこしずつ」すること。
動物全般に言えることだけど、なにか新しいことを覚えてもらいたいときは、わたしたちが考えるよりもずっとずっと、すこしずつすこしずつしないと、「怖い」と思ってしまう。そう思ってしまうと、受け入れてもらうことが大変になるの。
これは、例えば、イヌの歯磨きと同じね。彼らには「歯を磨く」という習慣はない。だから、歯を磨くことが大事だとは理解できない。それなのに、飼主さんがいきなり口の中に歯ブラシを突っ込んだから、多くのイヌはショックだし、怖いから、歯ブラシを見た瞬間に逃げ出したり、噛みついてくる子もいるのよ。
大事なことは、「すこしずつ、すこしずつ」すること。これはほんとうに大事なことだから、覚えておいてね。
さて、話を戻すわ。
「うさんぽ」も「うさぶろ」も、しよう!と思ったときに最初にすることは、その子の性格を見極めること。
「明るくて、人なつっこい子」もいれば、「内気で、飼主さんにしか懐いていない子」もいる。ヒトと同じで、それぞれ性格が違うからね。内気で、飼主さんにしかなついてない子は、とくに、「すこしずつすこしずつ」してあげてね。3ヶ月くらいかかるような気持ちで。
ハーネスをつけたことがないどれくらい少しずつかというと、例えばだけど、
1日目:外に連れて行こうと飼主さんが思う→すかさずほめて、おやつ2日目:ハーネスを見せる→すかさずほめて、おやつ
3日目:ハーネスをつけてみる→すかさずほめて、おやつ
嫌がったらそこで、やめること。次の日はまた同じことを繰り返してみて。嫌がらなかったとした4日目は、
4日目:ハーネスをつける時間を長くする→すかさずほめて、おやつ
ほんとうに「すこしずつ、すこしずつ」よね。
ちなみにこの「すかさずほめて、おやつ」は、イヌのデータだけど、飼主さんが望む行動をした0.5秒後〜1秒後あたり。イヌ短期記憶能力は最大で2〜3秒だと言われているのよ。飼主さんはおやつを手に持っている準備をしておいてね(笑)
次に大事なことは、”ウサギにとっていいこと”とセットにで覚えてもらうこと。
「ハーネスをつけたら、おやつがもらえる」「キャリーバッグに入ったら、ほめてもらえる」など、ウサギは自分にとって都合のいいことは、ほんとうによく覚えているので、この方法はお勧めよ。
「うさぶろ」については、ほんとうに「すこしずつ、すこしずつ」の段階を踏んで、お風呂に入れるのよ。もちろん初めから大丈夫で、お風呂が大好きな子もいるけれど、基本的にウサギは濡れることが苦手だから段階をつけて、慣れていってもらうの。
例えば、わたしのウサギに「うさぶろ」に慣れてもらった段階を書き出すわね。
1)ヒトにふれられる
2)普段からのグルーミングをする
3)あおむけにされる
4)狭い場所でじっとしている
5)お風呂場にいることになれる
6)ドライヤーの音をなれる
7)下半身だけ洗う
8)全身を洗う
この8つの段階を経ながら、3ヶ月くらいかけて慣れてもらうつもりやったのよ。長時間かかる時には休憩を入れながら、ウサギの様子をみることも大切よ。無理せず、気長にやりましょうね。
■ある日、あるウサギカフェでの続きの話
ボク 「ウサギの皮膚が濡れたままだとどうなるんですか?」
武田さん 「毛が抜けてしまって、赤くなってくる。わたしの経験だけど、およそ6時間、あるウサギの目尻が涙で濡れたままだったことがあったのね。それで目尻の毛が抜けてきてしまったの。もちろん、これは水ではないけれど、ウサギは濡れた状態に弱いことはたしかね。もともとが乾燥地帯の動物だということも、関係があるかもしれない」
ボク 「そうなんですね。今日のお話伺って思ったのは、この子ウサギくらいのときに、体中触れるようにしておくことが大事なんですね」
武田さん 「そうね、そうすると、獣医師や動物看護師さんも、怖がらずにさわってくださるようになると思うわ。ウサギは学習能力が高いから、何度もしていると覚えるし慣れる。そのときにはすかさずほめてあげてね」
※2016年9月20日に初稿を公開しましたところ、さまざまなご意見を頂戴し、見直しを行いました。基本的に健康なウサギにはお風呂は必要ありません。しかし、高齢や病気によりお尻まわりや全身が汚れてしまった、またダニなどの寄生虫が付着した場合に身体等を洗ってケアすることが想定されます。もちろん、そうならない環境を整えてあげるのは飼い主さんの役割かと思いますが、何が何でも水で洗ってはいけないとなると、かえってウサギの衛生環境が悪化する場合もあり、そのような事態に備えて飼い主さんに考えておいてもらいたいと思い、本稿を執筆しました。