広島・劇的優勝の歓喜をもっと噛み締めよう!

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 9月10日、ついにその日が訪れた。優勝へマジックを1としていた広島は敵地・東京ドームで巨人と対戦。先発・黒田博樹が6回3失点と試合を作ると、打っては5番・鈴木誠也が2打席連続弾で打線を引っ張る。結局、6対4で広島が勝ち、1991年以来25年ぶりのリーグ優勝を成し遂げた。

 黒田と新井貴浩の両ベテランが抱き合う姿は、広島ファンでなくとも熱い思いがこみ上げたことだろう。昨年は、「カープ女子」に代表される一連のカープムーブメント、そして黒田復帰と優勝への機運が高まっていたが、あと一歩のところでCS進出を逃し、悔しさを味わった。

 しかし、今年は開幕から勝利を重ね、シーズン途中から独走態勢に入り優勝を成し遂げた。そんな今シーズンの広島の主要なトピックスを振り返りたい。

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■野村祐輔が先発の柱に成長

 今季の広島の前評判は高いものではなかった。その要因がチームを支えてきたエース・前田健太のドジャースへの移籍だった。前田の抜けた穴は埋まるのか……。そんな広島ファンの不安を覆したのは野村祐輔の活躍だった。

 昨年はわずか5勝と悔しい結果に終わった野村。だが今季は、3月29日のシーズン初先発こそ黒星に終わるも、4月は3勝0敗と勝ち星を積み上げる。6月には4勝0敗、防御率1.44で月間MVPを獲得。チームの首位独走に大きく貢献した。

 ここまで14勝3敗(9月12日時点)。同僚のジョンソンとともにハーラーダービーのトップに立ち、マエケンの穴を埋める頼もしい存在に成長した。

■黒田博樹、新井貴浩がともに節目の記録を達成

 チームを支えた投打のベテラン・黒田と新井はともに節目の記録を達成した。

 開幕前、2000安打まであと29本としていた新井は4月26日、神宮球場でのヤクルト戦の第2打席でタイムリー二塁打を放ち2000安打を達成。ここまでリーグトップの98打点(9月12日時点)とその存在感を発揮している。

 2000安打達成が近づいた時には、チームメイトが背中に「まさかあのアライさんが…」とプリントされたTシャツ着て励ますなど、「いじられキャラ」も健在だ。

 一方、開幕前に日米通算200勝まであと7勝としていた黒田。6月29日のヤクルト戦で199勝目を挙げ、あと1勝とするもそこから連敗。足踏みが続く。しかし7月23日、本拠地・マツダスタジアムでの阪神戦で7回無失点で勝利投手に。野茂英雄以来2人目となる日米通算200勝を成し遂げた。

■「神ってる」鈴木誠也がブレイク

 今季の広島で一気に飛躍を遂げたのがプロ4年目の鈴木誠也だ。プロ2年目の2014年には36試合の出場で打率.344と結果を出し「将来の主力候補」として頭角を現す。昨季はレギュラー獲得が大いに期待されたが、レギュラー定着には至らなかった。

 今季は春季キャンプ中に右足太ももを痛め開幕1軍を逃すも、4月上旬に合流。4月下旬からは「6番・ライト」でスタメン出場が続く。なかでも6月17日からのオリックス3連戦では17日、18日と2試合連続サヨナラ本塁打。さらに19日には4対4で迎えた8回に勝ち越しのソロ本塁打。チームでは20年ぶりの3試合連続決勝弾を放った。

 この活躍に緒方孝市監督は「神ってる」とコメント。そのフレーズとともに鈴木は一躍、知名度を上げた。さらにはオールスターゲームにも初出場、現在も打撃3部門の上位につけるなど、チームには欠かせない打者へと進化した。

文=武山智史(たけやま・さとし)

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