「感動ポルノ」という言葉に踊らされる日本人よ、パラリンピックの未来は「サイバスロン」にある
2016年パラリンピックがついに明日、開催される。障がいを抱えるアスリートらは車椅子バスケや盲目ラグビー、カヌーなどを含む528種目に向けて最後の準備を進めているところだろう。
さて、トレーニング手法や装備がより技術的に進むなか、パラリンピックにおけるテクノロジーの立ち位置に疑問を投げかける人もいる。
VISTA 2013で「パラリンピックにおける設備とテクノロジー」というテーマが取り上げられて以来、人々はパラリンピックにおける高額な装備のコストについて問いを投げかけてきた。「パフォーマンスを向上するためのテクノロジー」を開発する資金に恵まれている人がメダルを独占し、また、「その科学技術はアスリートの素のアビリティを凌駕するものではないのか」などという疑問である。
かつてパラリンピックの水泳で活躍し、現在はサンシャイン・コースト大学の生体工学教授を務めるブレンダン・バーケット氏は次のようにコメントする。「技術の進歩により機能的向上が達成されるなかでも、スポーツの本質が失われてはいけない。スポーツはロボットに左右されるのではなく、常に人が主導権を握るべきことなのである。」
また、個人で活躍する選手に対するスポンサーシップやチケットの売上の少なさ、オリンピックと比べたTV露出の少なさもパラリンピックにとって逆風になっている。
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しかし、パラリンピックとは異なるアプローチをとっているイベントがある。それは、『Cybathlon(サイバスロン)』という、最先端のロボット工学や生物機械工学技術などを活かした障がい者アスリートのための国際大会である。
スイスのチューリッヒで、そのサイバスロンが10月8日に開催される。ロボティクス技術が生活にどう役立つのかを競うため、25ヵ国から74名のアスリートが参加するのだ。競技者たちは「パイロット」と呼ばれ、その抱える障害によって俊敏さや器用さ、スピードを競うさまざまなタスクに挑む。
人工装具や車椅子で挑む障害物競争
障害物競争では、4名のパイロットがそれぞれのコースで6つのタスクを早くこなすことを競う。たとえば、義足向けのコースでは階段を登ったり平均台を渡ったりといった異なるステップをこなすことが課題となる。義手の場合はモーターの器用さが求められるタスクをこなすといった具合だ。
モーター付き車椅子向けのコースでは、ジョイスティックや舌を使った操作、タッチパッドやその他の技術を使って操縦することが認められ、パイロットたちは少人数のチームを組み、敷居の段差やでこぼこ道、急な坂道といった日々のアクセス上の問題を解決する革新的なソリューションを生み出すことを求められる。参加資格者は、脊髄損傷を抱える人や両足を失った人など、歩くことができない人たちである。
外骨格スーツ向け障害コース
サイバスロンでは、階段の昇降や不安定な路面の移動などさまざまな動作を簡単に、かつ、安定的におこなえる外骨格スーツを見ることができる。脊髄損傷により足が完全に麻痺しているパイロットのみが参加可能となっている。
ブレインコントロールインターフェイス(BCI)を使ったバーチャルレース
ブレインコントロールインターフェイスは、脳の信号を読み取り、さまざまなレベルの麻痺を抱えた人が意識するだけで物を動かしたりできるものだ。バーチャルレースでは、パイロットたちは思想統制でゲーム上のキャラクター(あるいはアバター)を操作する。パイロットたちが正しいタイミングで正しい信号を送ることで、アバターは障害物を飛び越えたり加速し、逆に失敗すると減速した障害物に突っ込んだりする。ほとんどのチームは信号の検出に脳波記録を利用するが、赤外線分光法など他の方法も許可されている。
新しく実用的なアシスト技術を開発するためのプラットフォームを提供し、障がい者たちが抱える障壁を取り払うことがサイバスロンの趣旨だ。人をサイボーグにするものではないが、世界でもっとも画期的なアシスト技術に関わる機会でもある。
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つい先月、我々日本人の多くの関心を集めた障がい者の「感動ポルノ」という過激な言葉があるが、そんな言葉なんて頭からすっぽ抜けてしまうくらいにこの大会のコンセプトはかっこいい。我々も言葉に踊らされてばかりではいられないはずだ。
来る2020年に開催される東京五輪に限らず、これが未来のパラリンピックにどう影響を与えるか。また、これら技術が人々やスポンサーからどのような注目を集めるのか興味深いところである。
※すべての写真の権利はETH Zurichおよびアレッサンドロ・デラ・ベッラに帰属する。ETH Zurichはサイバトロンの設立者であり企画者である。
ReadWrite[日本版] 編集部
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