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『ぐるなび』と聞いて一番に思い出すのは、飲食店を検索するサイトであろう。しかし、それ以外にもさまざまなサービスを扱っている。では、多様なサービスに関わる社員同士が、同じベクトルで物事を進めるために意識すべきコミュニケーションとは何か。今回は、ぐるなびレストラン事業の開発マネージャとして約250名のエンジニアを統率している、佐藤 勝路(さとう・かつじ)氏に話を伺った。

- まず、御社のサービスの概要と特徴を教えてください。


◇株式会社ぐるなび 開発部門レストランサービス開発・運用セクション長 佐藤 勝路(さとう・かつじ)氏

佐藤氏:ぐるなびは、一般的には「飲食店を検索するサイト」とご理解いただいていると思うのですが、じつはそれ以外にも非常に手広くやっていて、そこが特徴といえるかと思います。たとえば、国内の食と観光に焦点をあてたサイト『ぐるたび』や東京のお出かけサイトNo.1の『レッツエンジョイ東京』、訪日外国人の旅行客に必要な情報を発信するガイドサービス『LIVE JAPAN PERFECT GUIDE TOKYO』など、「食」を通じた地域活性化に向けて、非常に手広く取り組んでいます。

- そのなかで、佐藤さんが取り組まれていることは具体的にどういったものでしょうか?

佐藤氏:私自身はマネージャとして仕事をしているので直接ではないのですが、特に取り組みの中で力を入れているのは『ぐるなび』のサイト改良ですね。エンドユーザだけでなく“お店側の使い勝手”という部分にも課題があったので、それを念頭において日々改善しています。

具体的にいうと、あらゆるユーザの要望に応えようと機能をあれこれ搭載しすぎたせいで、パッと見使いづらいサイトになってしまっていたのです。そこを改善するために、細かく設定したい加盟店向けと、簡単な設定を求める加盟店向けのどちらにも対応できる管理画面に改修しようとしています。ぐるなびのサービスは、加盟店が情報を更新してくださるからこそ成立するので、そこをより協力してもらえるような形にすることが趣旨ですね。

また、エンドユーザに対しても時間帯別で予約ができるように日々改善しています。加盟店にはそれぞれ希望に沿うレベルの設定環境を提供することで登録しやすく、ユーザはもっと予約しやすく、という2軸でリニューアルをかけているところです。

 

何ごとにおいても、「目的志向」が大切

- 佐藤さんは約7年ぐるなびに務めていらっしゃるということですが、昔と今とを比べて変化したなと感じることはありますか? 社員数が以前と比べて大所帯になったそうですが、働くうえでかなり大きな変化かと思います。

佐藤:そうですね。昔を悪く言うわけではないですが、時代が進むにつれ、企画部門と開発部門ともに互いに歩み寄れるような人材がだいぶ増えたなと思っています。お願いされたものをただ作るわけではなく、なんのために作るのか、といった根本的な部分を深堀りする人が多くなりましたね。昔から残っている人も「サービス視点」というか「目的志向」みたいなものを強く持っているメンバーが、今も活躍しているように思います。

人が増えることによる変化はいいことだけではないと思いますが、ずっと中にいると気づけないことなどに気づかせてもらえることも多くあるので、「多様性」はかなり増したのではないかと思います。

- 大人数を統率されるなかで、特に昔からいらっしゃる方と新しく入られた方とのギャップをなくす、調和を生む、といったところで苦労することもあるかと思うのですが。

佐藤氏:たしかにそうですね。そういうところの対策も含めて、採用面接のときには「一緒に働くイメージがわくか」、「楽しそうだなと思えるか」といった部分を見ていますね。これは私だけじゃなくて、採用を担当しているメンバーみんなが大切にしている観点です。同じような人を求めているわけではないですが、目的志向といいますか、そういうところはかなり見るようにしています。

中途で入られる方がみんなwebサイトを作ってきたわけではなくて、元はSIerだという方も多いんです。だからこそ、「なぜサイト作りに携わりたいのか」とか「SIerとして仕事をする際、どこに気を付けているか」といった目的意識が非常に強い方は実際に現場でもすぐに活躍できる人が多いなと思います。

- ちなみに、中途の方がとけ込めるように取り組まれていることなどはありますか?

佐藤氏:当たり前すぎるとは思うのですが、チーム内のface to faceのコミュニケーションなどを大切にしたいなと思っています。歓迎会をしたり、新入社員のプロフィールを作成したりするなど、人が増え続けるなかでも顔と名前を覚えられるような工夫はしています。

あと、入社前後のギャップをなるべく少なくするために、入社後は1ヶ月、3ヶ月といったなるべく短いスパンで直属のリーダーではない、たとえば私などが“相談にのれるおじさん”として1on1でざっくばらんに話す機会を設けていますね。

- フォローもしっかりされているのですね。もう一方で、技術的なフォローや育成については何か取り組まれていますか?

佐藤氏:中途の方に対しては、技術に関して個別で指導をすることはあまりないですが、代わりに志向性をそろえたり業務理解を促したりしています。先ほど言ったような「目的意識」が大事だよというところは伝えています。

- お話を聞いていると、そういった目的意識の強さや仕事への一体感みたいなものが御社の「強み」と言えそうですね。あらためて、佐藤さんがエンジニアを目指した理由と、入社された理由をお伺いしたいです。

佐藤:じつは、学生のころ私はいわゆる情報系ではなく、応用化学をやっていたんです。その研究データをアウトプットするときに分析が必要になるのでエクセルを使ったりしていたのですが、“プログラムでやった方が楽”なんじゃないかと思ったことがキッカケですね。実際にやってみたら、楽なだけじゃなく、かなり自分の性質とあっていることに気づいたんです。「こんなにトライアンドエラーがたくさんできてすぐに結果が出る世界って最高だ」と思いました(笑)

そこから就職活動の方向性も変えて、まずはSIer系企業に入りました。そこでサバイバル精神を鍛えられて、出会った気の合う仲間と起業しまして。ぐるなびに入った理由も、以前の仕事を通じて知り合った開発部門の人たちと引きつづき仕事がしたいなと思ったことがきっかけです。魅力的な人が多いなと感じましたね。

 

プロジェクト最後の一体感に見る‘ぐるなびらしさ‘

- 入社してからいろいろと体験されてきているかと思いますが、一番記憶に残っていることや最大の危機などはありますか?

佐藤:危機的状況というか、かなり神経を使った状況がありましたね。2013年にサイトを全面リニューアルしたのですが、すべての部分を順々に新しくしていく必要があったので、そのリスクヘッジのために既存の仕組みでも動かせるようにしつつ、新しい仕組みを動かしていくという進め方をしていました。絶対に転ばないような設計ポリシーでやっていたので、非常に頭を使うところがあったなと思います。

とても記憶に残っているのは、そのプロジェクトの最後ですね。システム上ちゃんと動いていることを確認したうえで、最後は営業や他の非技術職が全員総出で加盟されているお店の個別ページを分担して1つずつ目で確認したんです。こういった「最後は全員で完成させるぞ!」という思いはかなり「ぐるなびらしい」なと思いますね。

- とても熱気を感じますね。最後は与えられている仕事の役割関係なく、みんなで確認しようという。

佐藤氏:当時それを「漢気」ってみんなで呼んでいたのですが、そういった漢気対応が大量にあって。もう1回やりたいかというとそうでもないのですが、お祭り感があって非常に楽しかったことを覚えています(笑)。ただ、「私たちに全部任せていただいて大丈夫ですよ」と言いたい気持ちもあるので、今回は比較的堅いプロセスを踏んで、安心感を持ってもらえるように案件に取り組んでいます。

- なるほど。先ほどの経験などが「やりがい」につながるのかなと思うのですが、他にもやりがいを感じる場面はありますか?

佐藤氏:火事場に燃える、というのは基本的にありますね。それ以外だと、かつて自分が作った仕組みなどがそのままの形で使われるのではなく、若手社員の手でブラッシュアップされるのを見ると非常に嬉しいものがあります。自分がいなくても回るようになって、昔の仕組みは時代に合わせて日々改善されていく。メンバーが優秀だということもありますが、組織が順調に育っていることを実感するとやりがいを感じますね。

- さいごに、今後の展望について事業観点と個人観点でお伺いできればと思います。今後こうしていきたい、こうなりたいという構想はありますか?

佐藤氏:まず事業観点でいうと、より横断的なつながりを強化していきたいなと思っています。先ほど言ったように目的意識強くやっているのは事実ですが、ある程度の縦のつながりを評価したうえで、それぞれが持ついいものを共有したりナレッジをシェアしたりすることで組織をより活性化していきたいなと思っています。

私個人としては、先ほどのナレッジシェアにつながるのですが、さまざまな経験や知恵などを共有できる環境にすることで「自由な働き方」を実現できたらいいなと思いますね。テキストベース、エビデンスベースで仕事が進められるようになれば結果として拠点が分かれていても仕事ができたり、極論家にいても仕事ができたりという世界になるのではないかなと。

私は子どもがいるのでやはり一緒にいる時間を増やしたいと思うところがあります。だからといって、リモートワークがすでに定着している会社に入りたいというよりは、ぐるなびをそういう会社にすることで自分の働き方を結果的に変えていきたいなと思います。
※ぐるなびでは現在、在宅ワークの取り組みを試験的に導入開始しています。

- ありがとうございました。

目下、エンドユーザだけでなく“お店側の使い勝手”という視点を念頭において日々サイトを改善しているという株式会社ぐるなび。そのなかでも佐藤氏はメンバーとのコミュニケーションを大切にしつつ、目的志向を持つようメンバーにも教育しているとのこと。多様な人材が集まっており、それらの経験や知恵を共有できる環境にすることによって、自由な働き方を実現できる未来もそう遠くはないのだろう。

 


今回取材した方

株式会社ぐるなび 開発部門レストランサービス開発・運用セクション長
佐藤 勝路(さとう・かつじ)氏

2007年4月にぐるなびの品質管理部署のパートナーとしてサービスに参画。
品質管理部署での経験を活かして開発部署に活動領域を広げ、さまざまなサービスに関わる中で「この仲間たちと一緒にサービスを成長させたい」という想いから2009年に社員としてぐるなびに入社する。入社後は、スマートフォン向けサービス全般の開発チームリーダーを経て、現在はぐるなびレストラン事業の開発マネージャとして約250名のエンジニアを統率している。

ReadWrite[日本版] 編集部
[原文4]