明徳義塾vs高知
決勝戦で高知を2安打完封した明徳義塾・金津 知泰(3年)
「長い夜 越えても越えても 峠かな」。朝方、高知県立春野運動公園野球場の一塁側ベンチ裏のホワイトボードには達筆でこのような俳句が書かれていた。
しみじみ見ると高知県高校野球の現状を「夜」にたとえた秀逸な句に感じられた。課題への修正をかけても新たな課題が生まれ、全国はその間に同速度・いやそれ以上のスピードで前に進んでいる。全国の壁を「峠」とすればさらに深みがある。
そんな視点でこの大会を考えると、優勝した明徳義塾、準優勝の高知ともに1つの山は越えたといえるだろう。
明徳義塾はこの高知戦でも金津 知泰(3年・177センチ72キロ・右投右打・守口リトルシニア<大阪>出身)がランナー三塁を3回表に一度踏ませたのみの打者94球2安打4奪三振2死球完封。「テンポがいいから野手も守りやすい」(馬淵 史郎監督)。2失点完投勝利の春季四国大会1回戦・鳴門戦に続く強豪相手の勝利は夏の高知大会・中野 恭聖(3年・投手・右投右打・172センチ68キロ・えひめ西リトルシニア<愛媛>出身)との2本柱をほぼ確定的にさせるものとなった。
あとはこれらの投手陣を全国モードに熟成させつつ、けがから近日実践復帰予定の大砲・平石 好伸(3年・一塁手・187センチ71キロ・左投左打・浜寺ボーイズ<大阪>出身)と守備の要・高村 和志(3年・遊撃手・171センチ61キロ・右投右打・東大阪リトルシニア<大阪>出身)を入れて、いかに打線・伝統の守備を構築できるかが夏の高知大会7連覇。その先にある甲子園3季ぶりの勝利・上位進出のかぎとなるだろう。
高知も決勝戦こそ先発の赤間 寛太郎(3年・右投右打・174センチ63キロ・飯塚ボーイズ<福岡>出身)が先頭から5連打、さらに2四死球で4点を失ったことで主導権を明け渡したまま終わったが、2番手の廣田 剛巳(3年・171センチ69キロ・右投左打・大月町立大月中出身)は最速133キロのストレートと変化球を慎重に低めへと集め8回120球1失点。吉村 大輝(3年・172センチ72キロ・右投右打・高知中出身)、谷脇 瑞基(3年・投手・右投右打・186センチ78キロ・土佐清水市立清水中出身)に続く「3番手」の模索を大会テーマとしてあげていた高知首脳陣の合格基準を満たす奮闘を見せた。
「形は見えてきた」と試合後の高知・島田 達二監督。あと2か月、今大会でも春季四国大会とは選手を入れ替えながら臨んだ打線を完成させることができれば、6年ぶりの夏の甲子園出場はさらに手の届く場所になってくるだろう。
ところで、冒頭の俳句はいったい誰が詠んだのだろうか?文体は2011年5月5日・明徳義塾と香川西との間で行われた春季四国大会決勝戦(試合レポート)。試合前に坊っちゃんスタジアム一塁側ベンチに書かれたものと極似している。
ただ、それをいまさら解き明かすのも野暮な話。今は「詠み人知らず」としておこう。
(文=寺下 友徳)
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