常葉橘vs津田学園
サヨナラホームインの常葉橘・内村選手
前日の試合は、4番の同点本塁打、再びリードされて3番の逆転本塁打で勝ち上がった津田学園と、ミス絡みで1点を許しながらも、相手のミスから見て背負いつき、さらに長打が立て続けに出て逆転して勝ち上がった常葉橘。ともに勢いはある。常葉橘は試験期間中だということもあって、宿舎でも勉強時間を設けながらの大会参加でもある。
そんな両チームの試合は、お互いに細かく得点を取り合いながら、あるいは堪えながらという展開になったが、同点で迎えた9回。常葉橘は最後に、ここまで当たっていなかった4番の高沢君がサヨナラ打を放って決勝進出を果たした。常葉橘の小林正具監督は、「あくまでも、夏を見据えてという意識での戦いなのですが。この週末にこうした素晴らしい球場で、公式戦という形で、県外の強いところといい緊張感で試合を経験出来るということは大きいと思います」と、決勝進出を喜んでいた。
9回の常葉橘は、この回から登板した津田学園の4人目となった北川君に対して、9番内村君が左前打で出塁する。1番に戻って長倉君はしっかりと送り一死二塁。小林君は左飛で二死となったが3番山野君は四球。
この日も2安打している山野君を、津田学園バッテリーも若干勝負を避けたかのようなところもあったのかもしれない。そして、ここまで併殺打など内野ゴロ3本と三振の高沢君で勝負という形になった。ここで高沢君が、4番打者としての意地を示す一打で、サヨナラを決めた。
この試合、常葉橘は小林監督が、「想定外なことがいくつかありましたね」と言うが、その要素の一つが先発した望月 健人君の好投だったという。このところ調子はあまりよくなかったのだが、ここでは投げさせたいと思っていたというのだが、立ち上がりを見て、「これならば、引っ張れるだけ引っ張っていこう」と思ったと言う。そして、望月君がいいリズムで投げている間に、常葉橘は初回に山野君の二塁打で先制し、2回にも9番内村君の左中間二塁打などで2点を追加して3対0とした。
津田学園・北川投手
ところが、3回までを小林監督の予想以上にいいリズムで投げていた望月君だったが、4回に津田学園の広君の投手返しの一打を右太ももに直撃されて降板せざるを得なくなった。これも、小林監督の新たな想定外だった。
津田学園は佐川竜朗監督が、「5回までに1対3で負けていたら十分、理想は最後には取られても取っていくという形で、最終的には7対5くらいの試合でいい」ということを選手たちにも伝えているというが、4回の段階で、そのイメージ通りの1対3になった。さらに、4回に相手投手の暴投で1点差として、その裏、山野君のタイムリー打で2対4とされても、6回には左中間二塁打と失策で三塁まで進んだ河會君を9番久保田君が還して3対4。8回にも久保田君のタイムリー打で同点と、津田学園は佐川監督のイメージにほぼ近い形で試合が進行していた。それだけに、同点となった段階では、むしろ津田学園ペースとなっていくのかなと思われたくらいだった。
結果論ではあるが、津田学園としては8回にさらに一、三塁と好機が続いていただけに、そこで一気に逆転しておきたいところであったであろう。
それでも、佐川監督は、「しぶとく食らいついていこうという姿勢は十分に表すことはできたと思います。投手陣も、当たられた位置でよく投げてくれたと思います」と、この県大会から続いて大会での成果は十分にあったという手ごたえを感じていたようだった。
常葉橘の小林監督は、「(高沢君は)4番として打てなくても、守りでは気持ちを切らさないでいいプレーをしていたので、交代させないでそのまま使っていたのですけれども、いいところで打ってくれました」と、延長戦も意識しながらも、気持ちを途切らせないという姿勢で、プレーしていったことで、最終的にいい結果が出たという想定外のことを評価していた。
(文=手束 仁)