もはや安倍政権と自民党は、隠すこともなく「外国移民」を推進し始めた。

 現在の日本は少子高齢化が原因で、生産年齢人口(15歳-64歳)の総人口に占める割合が下がってきている。バブル期に70%だった生産年齢人口比率は、今や60%だ。すなわち、今後のわが国では、人手不足が深刻化していくことが確実なのである。
 素晴らしい話だ。経済成長とは、人手不足環境下における生産性向上(生産者一人当たりの生産量を増やすこと)以外では起きない。高度成長期の日本も、超人手不足であった。当時の日本の政治家や経営者は、外国移民の受け入れではなく、生産性向上のための設備投資、公共投資、人材投資、技術開発投資により人手不足を解消した。
 投資拡大で生産性が向上すると、GDP三面等価の原則により「生産者一人当たりの所得」も増える。実体経済は「生産=需要=所得」なのだ。生産性向上こそが、国民を実質的に豊かにする。
 豊かになった高度成長期の国民は、消費や投資を増やした。結果、企業や生産者の仕事が激増し、またもや人手不足。さあ、どうするか。もちろん、生産性向上あるのみだ。

 と、高度成長期に「人手不足+生産性向上」という資本主義の王道を突き進み、わが国は世界第2位の経済大国に上り詰めた。そして今、生産年齢人口比率の低下により、日本国は再び経済成長率を高める“絶好のチャンス”を迎えようとしている。
 そのチャンスを、安倍政権や自民党は外国移民受け入れでつぶそうとしている。

 安倍総理は、4月19日の産業競争力会議において、
 「第4次産業革命を担う優秀な人材を海外から呼び込みたいと思います。このため、永住権取得までの在留期間を世界最短とします。『日本版高度外国人材グリーンカード』を導入します」
 と、語った。
 第4次産業革命とは、まさに人手不足を生産性向上で補うための技術開発投資になる。日本が第4次産業革命を推進するべきという主張は正しいのだが、なぜそこで「永住権取得」の話が出てくるのだろうか。

 断っておくが、筆者は別に第4次産業革命をすべて日本独自の技術で成し遂げるべきなどと言いたいわけではない。優秀な人材や技術を外国から招くのも大いに結構だ。
 ただ、それと「永住権取得」は全く結び付かない。そもそも永住権取得が外国人の来日の条件だとするならば、現時点で90万人も外国人労働者がわが国で働いていることについて説明がつかない。
 永住権取得までの在留期間が長かろうが、現実に外国人労働者の数は増え続けている。安倍総理の言からは、「わが国が永住権取得までの在留期間が長いため、外国人労働者が働けない」という印象を受けてしまうが、現実を無視している。
 要するに、安倍政権は端から「外国移民を推進したい」という目標を持っているのである。とはいえ、外国移民受け入れ政策は、国民の反発を買う。だからこそ、第4次産業革命にかこつけ、永住権の話を持ち出しているにすぎない。

 そもそも意味不明なのは、第4次産業革命はサービス産業の生産性を高め、わが国が、
 「外国移民に頼らずとも、国内のサービス業の需要を満たすことができるようにする」
 ことを目的に推進されるべきなのだ。外国移民の受け入れを回避するための第4次産業革命までもが、移民推進に活用されている。
 姑息である。

 姑息といえば、筆者が「亡国の特命委員会」と呼ぶ自民党の労働力確保に関する特命委員会は、人手不足のため労働力が必要な分野に外国人労働者を受け入れるべきとの提言を、政府に提出しようとしている。提言では、わざわざ「移民政策ではない」とデマゴギーが明記され、さらに木村義雄委員長が「移民」について、