ニューバランスが、3Dプリントでやろうとしていること

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体重やランニングスタイルに関わらず、ランニングシューズのミッドソールはどれも同じだった。だが3Dプリンターの登場によって、それぞれのランナーに合わせたソールをカスタマイズすることができるようになるかもしれない。ニューバランスはすでに、そんな「未来のシューズ」の開発に成功している。

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2/5足のどこに最も力がかかっているか、に基いてデザインされている。

3/5ソールをつくるために、ニューバランスは多くのランナーのデータを集めた。

4/5右のソールは、ヒール・ストライク(踵から着地する走法)の人向けのものだ。

5/52016年4月から販売開始だ。

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ミッドソールを3Dプリンターでつくる、ニューバランスの新しいシューズ。

足のどこに最も力がかかっているか、に基いてデザインされている。

ソールをつくるために、ニューバランスは多くのランナーのデータを集めた。

右のソールは、ヒール・ストライク(踵から着地する走法)の人向けのものだ。

2016年4月から販売開始だ。

一般的なランニングシューズのミッドソールは、弾力性はあるがスマートとは言いがたい。もちろん、衝撃を緩衝する効果はある。だが多くのミッドソールは概して同じ形状でゴム製で、人によって足にかかる衝撃が異なることを考慮してはくれない。あなたがミッドフット・ストライク(足裏全体を着地させる走法)であろうがヒール・ストライク(かかとから着地する走法)であろうが、シューズにはそんなことはお構いなしなのだ。

ニューバランスの研究グループは、弾力性があり、かつスマートなミッドソールをつくろうとしている。ニューバランスはボストンのデザインスタジオ・Nervous System(ナーヴァスシステム)とともに、個人の歩幅に基づいてカスタマイズされたミッドソールを3Dプリンターで製作しているのだ。その目的は、見た目の美しさではなくカスタマイゼーションにある。生体力学データに基づいてデザインされたシューズは、履く人に最適化されたランニング体験をもたらすことができるのだ。

ニューバランスは、3Dプリントシューズ競争に加わろうとしている唯一の企業ではない。ナイキからジミー・チュウに至るまで、各企業はデザインプロセスにおける新たなアプリケーションを探しているところだ。その結果、3Dプリントのフットボールシューズから3Dプリントのオートクチュールシューズまでが登場している。

ニューバランスには、3Dプリントの陸上競技用シューズをつくってきた経験がある。2013年、ニューバランスは「いつかランナーの体重や走行スタイルに合わせてカスタマイズされたミッドソールをプリントできる日が来るかもしれない」と予測していた。2年経ったいま、そのアイデアは現実に近づいているようだ。

穴の空いたスイスチーズ

ナーヴァスシステムのクリエイティヴディレクター、ジェシカ・ローゼンクランツは、3Dプリントのミッドソールも通常のミッドソールと同様に機能しなければいけないと説明する。柔らかくて軽く、同時に強くなくてはいけないのだと。ソールは3D Systemsが特許をもつ「DuraForm Flex TPU」という高密度のゴム素材でつくられる。「もしこの素材がなかったら、もっと重いソールしかできなかったでしょう」とローゼンクランツは言う。

ローゼンクランツは同じくナーヴァスシステムのジェシー・ルイス・ローゼンバーグとともに、ニューバランスのスポーツ研究所に集められたランニングデータに基づいて幾何学的な構造をつくるソフトウェアを開発した。研究グループは圧力センサーをシューズの中に入れ、いつ、どれくらいの圧力が足にかかるかを測定したデータを収集。データを反映し、部分ごとに密度の異なるミッドソールをつくることに成功したのだ。

完成したソールは、穴の空いたスイスチーズのように見える。そしてその穴のサイズと位置は、ランナーの歩幅に応じてデザインされている。大きな圧力がかかるところの穴は小さく、ソールの密度は大きくなっている。圧力が少ないところでは、穴はより大きくなっているのだ。

ニューバランスのイノヴェイションスタジオのマネージャー、キャサリン・プレトレッカは、ミッドソールに使用される多くの素材は、ことデザイン面を考えたとき多様性がないと言う。「52kgの女性用シューズと90kgの男性用シューズでも、同じ素材が使われてきました」

ミッドソールをカスタマイズするには、ひとつのソールをつくるのに形とサイズの2つの鋳型が必要になるため、時間とコストがかかっていた。だが3Dプリンターを使えば、より安く、より速いカスタマイゼーションが可能になる。「3Dプリンターでミッドソールをつくるためのシステムができれば、いくつもの製造工程を削減することができるでしょう」

カスタマイズされたソールが、ランニング体験をいかに向上させるのかはまだわからない。怪我を減らしてくれるのか、疲れが早く取れるのか、あるいは持久力を上げてくれるのか? ニューバランスによれば、そういったことは目標ではあるが、その成果を裏付けるのデータはまだないという。いまのところは、3Dプリントシューズのことを信じすぎないほうがいいのかもしれない。誇大広告を行って集団訴訟を起こされた、Vibramの5本指シューズの前例もあるのだから。

2015年上旬にアディダスは、リサイクルされたポリエステルと海に捨てられたプラスティックを使って3Dプリンターでミッドソールをつくる、というコンセプトシューズを発表した。ニューバランスと同じように、アディダスも生体力学データを使ってカスタマイズ可能なミッドソールをつくろうとしており、シューズメーカーたちの技術競争はますます激しくなっている。

ニューバランスは2016年4月に、同社初となる3Dプリントシューズを発売する予定だ。最初のシリーズではソールに空いた穴のサイズはすべて同じものになるが、それは3Dプリントと素材の研究がまだまだ必要だからだ、とプレトレッカは説明する。

しかしあくまで、彼らの目標は店頭に各ランナーの歩幅を測れるようなシステムを用意し、個人のニーズに応えるカスタマイズシューズをつくることだという。そんなシューズがつくれるようになれば、ランニングをしたいと思わせてくれることは間違いないだろう。

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